デザイナーがデザインの「方法」をアドバイスする時の「視点と観点」について
セカンドファクトリー(以下、2FC)で、UI/UXデザイナーとして活動している鈴木です。
アドバイスを求められて…
多少デザイナーとしてのキャリアが長いこともあり、2FC社内でのデザインチームメンバーもそうですし、デザイン面で支援させていただいている、お客様先のデザインメンバーとのやり取りの中で、アドバイスを求められたりすることが少なくありません。
例えば「〜できるようになるためにはどうしたら良いですか?」とか「〜を作る時どうしているんですか?」と質問されたり、相談されたりすることがありますが、実際には「これ、どうお伝えしたらいいんだろう?」と考えながら答えていることも正直あります。
前回の記事は、
こちらで「デザイナーがスキルを発揮するために大事なこと」についてまとめてみましたが、今回は「デザインスキルをインプット・伝える時に大事なこと」について、を挙げつつ、書いてみたいと思います。
〇〇の作り方
そういえば少し前に、お客様先のデザイナーの方から「アイコンを作るときに気をつけていること」について、ご相談いただきました。まぁ、時系列に整理して話すと結果「アイコンの作り方」になります。
1.作るアイコンが持つ意味合いを確認する。
例)今回は「追加」である。
2.意味合いを表現するためのモチーフを検討するために、「一般的な認識」を確認する。
例)Googleで「アイコン 追加」などのキーワードで画像検索してみて、「1番出現頻度の高い」モチーフは何か?を確認する。
これは、出現頻度が高い=一般的な認知とすることで、ユーザーが「新しい概念」に対面して「改めて理解」するプロセスをなるべく発生させないようにするため。
3.モチーフを検討する
例)「追加」であれば、基本「+」で良さそうだが…。
○の中に入れる?入れない?
今回は「ファイルの追加」までカバーする?だとしたら「ファイル」のモチーフの組み合わせもする?
プロダクト/サービスの中で考えた時に、他に「+」を追加の意味以外で使用していたりしない?
この後のデザイン落とし込み時に、利用想定で最も小さく縮小した時にも細かすぎて表現が苦しくならない?
4.テイストを検討する
例)既に構築されている自分たちの「デザインシステム」に照らし合わせてどうか?さらに、今回の目的を達成するための表現を考えたときに十分か?
面で表現する?線で表現する?
利用カラーパレットは?
角の丸みの強さをどうする?
シャドウを入れたりする?
5.まず作成するアイコンのエリアを描いて、作り始める。
例)24px四方のエリアを用意する。
まず最初にこれをきちんと「描画領域」として定義すること。当たり前ですが、これをしないままデザイン検討をし始めると、基準がないため、バランスの検証やサイズ展開した時の妥当性を確認することができないです。
6.バランスを見る
上下左右どこかに偏って見えないか?
アイコンエリアのどこかが重く/軽く見え過ぎていないか?
「他の」アイコンと比べて大きく見えすぎないか?小さく見えすぎないか?
「他の」アイコンと比べて、テイストが違って見えないか?
「拡大」「縮小」で問題が出ないか?
7.精緻化をする
一応決めたサイズでの「ピクセルファースト」になってるか?
質感を高めるための鋭角の丸め処理など
アイコンの構成要素の中に、不必要な「オブジェクト」「アンカーポイント」が残ってないか?
まだまだ、気をつけないといけない事はありそうなのですが、私はざっとこのような順番で思考して、アイコンを作っていることが多いです。
ここでいきなり不安になります
さて、このようにお伝えしたところで、いつも不安になることがあります。
これは、自分から離れて「再現性のある」ノウハウとして、相手の「中に入る」のか?
「〇〇の作り方を伝える」というアドバイスなので、それ以上は必要ないのかもしれませんが、この「作り方」は、もちろん他の方の情報も頂きつつ、自分の経験の中で都度「解釈」しながら確立させてきた「方法論」でしかないのです。
なので、「これをやったら良質な〇〇が絶対作れる!」というものでもないですし、「私のやり方」でもあります。
となると、自分から離れても効果を発揮して「再現性」を少しでも担保するためには、「解釈」が大事なのでは…と、この時に思ったりするわけです。
「観点」と「視点」
この「解釈」をどうお伝えしたら良いか、モヤモヤすることが多かったのですが、よい言葉がありました。なんとなく自分はこの「観点」と「視点」で物事を考えている様です。
この2つの言葉は非常に似た言葉で「何かを見たり考えたりする立場」という共通の意味合いを持っている様ですが、
視点
より具体的な対象を指す様です。つまり、先述のアイコンの作り方で言うと、「各手順や、その中の気をつけたいチェックリスト」そのものが近いです。
観点
とした場合に「観点」は「視点」よりももう少し大きな枠組みのことと捉えると良さそうです。
ここで、アイコンの作り方の「観点」として、私がいつもなんとなく気にしていることを考えてみると、先述した項目よりももっと大きなことのように思えます。いくつか挙げてみると…
1.アイコンが自分の責務を果たせること
そもそもアイコンを作るのは何故だったか?になります。ユーザーと対話するためです。なので、表現されたアイコンの形状を見て、意味がきちんと伝わらないといけません。
2.アイコンそのものの表現が美しく、プロダクトやサービスの世界観に美しくハマっていること
「美しい」というのは、端的に表現が「綺麗」とか「かっこいい」とかではなく、「違和感なく」「品質が高い」と感じられることです。またアイコンが適用されるサービスやプロダクトの価値につながるため、その世界観とマッチしていることが大事です。
3.アイコンの汎用性が考慮されていること
他で利用されることがわかっているのにも関わらず、その瞬間でしか使えないなど、他に使おうと思った場合に、違和感や矛盾が生まれてしまったり、サイズ変更に耐えられないと、使えなくなってしまいます。
「観点」を「自分で視点にできる」ということ
では大事な「観点」がわかったから、これで素晴らしいアウトプットまで導ける!めでたしめでたし。かと考えると、もう1クッションあるのでは?と考えています。つまり、
という展開を考えた時に…、
という、一部感覚が混ざっても良いですが「自分なりの解釈」を持っていることが一番大事なのかなと思っています。
これは逆に、観点を自分なりに「解釈しようとする」「実現するためにはどうしたら良いか思案する」になり、視点をその時点で持っていなかったとしても「探しに行くことができる」のです。
ただ「作り方/やり方」をインプットするよりも、自身での再現性に一歩近づきそうな感じがします。
「解釈」の積み重ねが「デザイナーの目」となっていく
この記事を書くにあたり「デザイナーの目」という事をふと思い出しました。
観点と視点の間の「解釈」が大事だと述べましたが、この解釈を繰り返して自分のものになっていくと、それはモノに相対した時の「違和感」として感じることができるようになる感覚をわたしは持っています。
「美しくない」「なんか変だぞ?」という感覚を「ザワザワする…」とか「ソワソワする…」とか表現したりもします。
「デザイナーの目」について探しているうちに以下のツイートに行き当たりました。
なぜ「気になる」のか、そこにはもちろん「ちゃんとした理由と理論」はありますが、それがそもそも「まず美しくない」と感じられることは、非常に重要なスキルだなと思っています。
なるべく経験やセンスの話「だけ」にはしたくない問題
センスがないから「デザインの良し悪しがわからない」や、まだ経験が浅いから「引き出しがない」という話題もよく聞きます。
でもこの理屈だと、経験を積むまでは、日々改善・成長していく、プロダクト/サービスのデザインに立ち会えないことになってしまいます。
確かに理屈で語れない感覚の要素や、経験を重ねることで構築できるなんらかの匙加減みたいなものもありますが、それよりも自分の周りの社会の移り変わりなどに対して「自分自身で適応していく」には、「なぜ、それはそうなのか?」を自分に問いかけ続けて、自分なりの解釈を獲得していくのが「効く」のではと思っています。
「自分の作ったデザインに自信が持てない」「チェックしてもらわないとデザインの良し悪しがわからない」と日々感じていらっしゃる方いましたら、ほんの少し、「ゴールへ到達する方法」から「大元の観点」に思考をずらしてみてはいかがでしょうか。(※上から目線ですが…)
最後に、2FCのデザインチームでは、ともに学び、成長しながら、クライアントの事業や組織を前進していきたい、そこに共感いただける仲間を探しています。お気軽に問い合わせください!
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