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blurring line

春は外と内の境界が滲むからこわい、きみの輪郭がぼやけるからこわい。きっと死もこんな感じなんだろうなと思う。“危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください”。イヤホン越しに微かに聞こえる機械的なアナウンス。プラットホームに引かれたオレンジの線がぐわんと歪む。春だと言ってしまえばそれは春で、好きだと言ってしまえばそれはわたしの「好き」になる。春には、私たちには、そういうやわらかさやたおやかさがあるってことを教えてくれるのはいつだって光と風とその匂い。光は季節の、私たちの奥深いところにある色を引き出してくれる、風はその色の匂いをいつも運んできてくれる。
空気の纏う匂いが変わったことを知らせたくなる人、季節を跨いだ先でもまた会いたいと思える人。春風に背中を押されて私はあなたに会いに行く、いくつもの季節を跨いで私はあなたに逢いに行く。

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