始まりは常に終わりに満ちている

ロサンゼルス在住。アクティングトレーナー。俳優たちの学びの場を主宰。

始まりは常に終わりに満ちている

ロサンゼルス在住。アクティングトレーナー。俳優たちの学びの場を主宰。

最近の記事

世界に入り込む

メソッドアクティングを習い始めた頃、身体運動に頼りすぎる傾向の強かった僕は、周りの俳優達と比べると集中力が欠けていることにコンプレックを感じていました。集中が上手く出来ないときに、無駄に表情や身体を動かしてごまかす演技を続けていたのです。明らかに集中が長く続かない傾向にありました。ところがある時、先生から与えられた課題を一旦無視をして、僕にしか判らない事柄(ぼくが特別に詳しいジャンル)にサブジェクトを置き換えて演じてみました。すると瞬時に集中に対する心配は消え、不思議なほど濃

    • シェルブールの雨傘

      その昔、舞台上でカルメンの唄を口ずさむ場面があった。 僕は全くカルメンを知らない無知な俳優だったので、 原曲も知らないまま歌唱指導者の言われるままに舞台上で唄って長い公演を終えた。 数年が経ち、僕の世界が拡大した頃、原曲のカルメンと出会った。素晴らしかった。 あの頃の取り組みを反省した。

      • 我々は巨人

        貴方が思っているより あなたが生きているこの世界は 際限がないほど広大です 言葉や数字の他にも収集するべきものは多くあります それらはあなたの皮膚に寄り添うように 常に空間を飛び交っていて 深い繋がりを求めています 肉体はこの世界の限界ではなく 精神は肉体を超えて巨大です 我々は精神的巨人のような存在なのです

        • 「The Wise Man」

          貴方の身体には もう一人の誰かが 貴方より前から その身体に棲みついています 今日は是非 その誰かと握手をしてください 抱擁をしてください 言葉は必要ありません 優しいとか 怖いとか そのような言葉で 表現できる存在ではありません ちなみに僕はその人の事を 「Wise Man」と呼んでいます  明日はTHANKSGIVING !

          A fundamental truth

          あなたが創った世界なのだから 滅びる時はその世界の全てが 貴方を通り過ぎていきます 当然それなりの痛みも伴います 光に似た幸福感も味わえます それが喪失というものです

          走りたくなかった日の走り

          今日は一日中寒くて空も暗く、いつ雨が降り出すかといった天気模様。気分も何故か愚図ついている。今日は走るつもりは無かった。無かったのに何故か着替えを済ませ靴ひもを縛り外に出てしまう。しかたがない、歩くか。それにしても寒いな。今年一番の冷え込みだ。いつものコースへ向かう。いつもの坂道が目の前に出現。いつものように立ち止まってアキレス腱を伸ばしながら、腕時計でタイムを確認する。走り始めた。やっぱり走るんじゃん、と呟く。10分後頂上到着。そこから三分で隣接のトラックフィ―ルドへ移動。

          走りたくなかった日の走り

          俳優が無自覚にしていること

          演じるにあたり、最近強く感じていること。 俳優は「自分の身をたたむ」ということを覚える必要があるということ。それを覚えなければ、貴方は常に、人前に出て、注目を浴びながら、何かを表現している自分が好きなだけ、ということで、俳優の本質とはあまり関係がない取り組みをしている。それはきっと、俳優について僅かな部分しか理解できていないだろうし、最も豊潤で濃厚な部分を知らないということでもある。  「自分の身をたたむ」ことは自分を前に出すことではない。綺麗にさっぱり失くすということ。

          俳優が無自覚にしていること

          米国暮らし

          お前は米国で暮らしているんだから 日本の事はもういいじゃないか そんなふうにはなれない 関わりを失くせば 次の瞬間から どうやって歩いたらいいのか 判らなくなる 米国暮らしが長くなればなるほど 日本への思いは強くなる その理由も重々承知している と言って 日本への過剰な贔屓もしない 個人的な思いと 日本の現状とは 独立した評価である すべては拘りを失くす為 拘っているのだろう

          自分と繋がる

          僕のクラスに初めて参加した俳優には まず最初に自分と繋がる体験をしてもらえるように心がけている 日常生活の中で偶然的に繋がる自分ではなく レッスンを通して意図的に自分と繋がっていく 繋がるだけではなく深い部分に参加していくことです 全ての取り組みはそこから始まります その為のスタート点を創るのです

          挫折 壮絶 

          堂々とした挫折は好まないので こっそりと挫折を楽しむタイプでもあります もしかしてこれが挫折なのか みたいな

          俳優の傍らに落ちているもの

          受け入れないとかさ 受け入れがたいとかさ 性格上の頑固な不合意にあやつられて 貴方自身が上手くいかないのかもしれないけれど 人生における大事はね それらを訳もなく吹き飛ばしてしまうんだ そうなったらもう受けれるしかないんだよ 一気に持っていかれるの 大切に守っていた家族も生活も立場も観念もさ 何もかもを根こそぎ引き抜いていくの 俳優の仕事はね いつもそんな場面から始まる 明日もないような人々から 演劇は始ったの 笑うことも 泣くことも 許されな

          俳優の傍らに落ちているもの

          ロールモデル不在

          今回の日本での滞在は、社会の中にロールモデルと呼ばれる大人が、圧倒的に足りていないことに気付く旅でもありました。愛情を受け取ることに慣れていない若者。愛情を表現できない若者。愛情を拒否すらする若者。反射的にその裏を読み取ろうとする若者。最初から愛情を信じない若者。どの場面も表面上だけで躱そうとする若者。あれは、彼らが傷ついてきた証しです。これまでにすれ違ってきた大人達の態度や言葉が、経験値として焼き付いているからです。

          台本を書き終えた瞬間にいつも思うこと

          決心や決断とは 自分自身にのみ 有益なものであって 他者の為にある訳ではない 決心をするまでの過程から それは始っていて 現実感に溢れた夢にように 眠りから醒めた時点で 既に体験を終えている 実際に何かをやり遂げなくとも 決心するまでの過程で 貴方は体験していることになる 全ては精神に対するギフトである 有るとか無いで 悩む必要はない これが僕らの 本当の世界

          台本を書き終えた瞬間にいつも思うこと

          CHARACTERIZATION 性格描写に取り組む

          7月に東京で行われるACTINGWORKSHOPの内容がCharacterization (役作り)に決まりました。通常のWORKSHOPでは時間の関係上取り組むことが出来なった主題ですが、今回は長めのクラスという事で決めました。これまで情熱と気合で仕事を乗り越えてきた俳優には、新たな道具を手にするチャンスだと思います。曖昧さがなくとても具体的なものです。日本ではまだあまり知られていない訓練法ではないかなぁ。今回のクラスを体験した俳優は、きっと次回の仕事に大きな変化をもたらす

          CHARACTERIZATION 性格描写に取り組む

          死の起源 生の起源

          Physical Worldでは 全てに意味があり 全てに価値がある しかし僕らの起源は死の世界だ そこには言葉の存在がなく 意味付けには意味がなく 目的は目的ではなく 成功はなく 失敗もなく 始まりは常に終りに満ちていて 終わりは常に始まりに満ちている しかし人間は生涯それを 理解することができないのだ

          自己肯定の為なら集団に埋もれてもという幻想

          部活の延長のような劇団の演目を見ている限り、時間が許すならいくらでも続けられるでしょう。とにかく本人たちが楽しむをモットーに集まっている集団なのだから。けれど長い時間その世界に浸かっていると、大抵の人間は黙っていても自分の足元を深く掘り起こしたくなるのです。演劇は自己矛盾に気づく場所としては適切だし、自己矛盾を受け入れる場所としても適切な場なのです。自己矛盾受け入れを拒否した場合、俳優の演技に対する取り組みの姿勢は俄かに変化します。それまでとは明らかに違ってくる。楽しさよりも

          自己肯定の為なら集団に埋もれてもという幻想