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内にこもるほど、開かれる。

Win-Win Relationship

効率化という観点では同質な人々を揃えた方がいうことになりがちだが、全くもって多様な人々が揃っているからこそ価値を発信する環境がある。私の留学先でもあるエグモントホイスコーレン(デンマーク)だ。

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およそ160名の学生の内、60名近く(2010年当時)が何かしらの障害をもち、寄宿制で共に学び暮らしている。視聴覚障害、軽度〜重度障害まで様々な特性の学生が在籍している。そしてユニークなのが、健常者である同級生が、その障害をもつ学生を介助しながら共に学生生活を営んでいるということだ。介助する学生は自治体から給与をもらい、障害のある学生に雇われる。同校の教員は「互いにとってWin-Winな関係性にある」と話す。

デンマークにはパーソナルアシスタント制度といって、重度障がい者が自立する上でのサポートを公的に受けることができる。ただ自立のためには自己の意思と行動が必須として、自らヘルパーを目的に合わせて雇用し、就業管理する。本校で学ぶ障がいのある学生は、このトレーニングを同級生を対象に行う。そもそもソーシャルワーカーを目指す学生も多く、そうした学生にとっては学びながら介助のトレーニングができ、月々6〜7万円の給与を得られる。確かに互いにとって、Win-Winである。

Living Labという環境

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同校では政府との共同事業にも積極的で、なかでもユニークなのはUser Driven Innovationという取り組みだ。障害のある学生が学校生活の中で感じた不満点や、それに対する工夫点を抽出し、それをもとに企業に提案をするという。

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学内をくまなく観察し、学生の生活の痕跡を写真に収め、そこから新たなソリューションを考える。IDEOを端に発するデザイン思考が世界中に広がる中、デンマークでも多様なセクターで取り組みが進められていたが、障がいのある人が数多くいるからこそ、その環境にヒントが埋もれている。この実際の生活空間を研究対象にした取り組みをリビングラボと称している。

内にこもって、開く。

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面白いのが、世界中から訪問希望がひっきりなしにくるのだ。寄宿制学校という暮らすと学ぶという機能が重層化している環境に、リビングラボとしての研究開発機能が加わることで、それに伴うスペシャリストが集う。世界中からデザイナー、建築家、研修者が訪れる。またデンマーク人は英語も堪能なので、外国人の受け入れも容易い。

障がい者を受け入れると、時に閉鎖的になりがちな環境が障がい者がいるからこそ、ダイバーシティになっていく。そして、それがそこにいる人間にとっての誇りになり、さらに求心力が高まっていく

内の機能を多重化させればさせるほど、魅力が増し、人が訪れ、結果的に開かれていくわけである。

ダイバーシティだからこそなせる技である。

*トップ画像に掲載しているのは 障がいのある人とデザイン学生によるプロジェクト「シブヤフォント」の「夜のまち」というパターンです。当社はその運営を担っています。











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