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虫の目、鳥の目、魚(さかな)の目

自然の中の「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

ここ数日、秋らしい天気が続いています。
たまには自然に触れる機会も必要で、自然の中を散歩するのは、体にも頭にも良い効果があるらしく、散歩しているといいアイデアが浮かんでくるというのは昔からよく言われていることです。

先日のNHK「チコちゃんに叱られる」でも紹介していましたが、散歩すると、脳がぼんやりしたときに活性化する神経回路「DMN(デフォルト・モード・ネットワーク」が働き、いろいろな情報が整理され、物事を創造しやすい、いわゆるアイデアが生まれやすい状態になるのだそうです。

「DMN」についてはまたいつか詳しくお話ししたいのですが、かつてこの「DMN」状態を経てアイデアがでやすくなる効果を得るために「サウナ」に通ったことがありました。
でも、コロナ騒動がひと段落して「サウナ」に人が戻ると、周りが気になってリラックスできません。
そもそも、アイデアを出すためにサウナに通うようになると本末転倒で、(自分的には)効果が薄れてきたので最近はサウナもご無沙汰です。
その代わりと言っては何ですが、散歩をするのもいいかな、と思っているところです。

冒頭から話が脱線しました。
自然があふれる公園を散歩していると、草木の根本で虫がざわめき、空に鳥が舞い、池では魚がゆうゆうと泳いでいることに気づきます。

狭い範囲で暮らしている虫は、人間には見えない細かい視点を持っています。
逆に、鳥は、広い視野を持っている代わりに細部が見えないそうです。
魚は、目に見えない水の流れを感じ取って生きています。
この視点を、物事を1点から見るのではなく多角的な視点で見る例えとして「虫の目」「鳥の目」「魚の目」と言うそうです。

サッカーにおける「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

サッカーに例えてみましょう。

「虫の目」とは、サッカーグラウンド、いわゆるピッチで戦っている選手の視点です。
技術が上がれば上がるほど、味方や相手の状況を理解し、自分に有利な状況をつくることができます。
現在、イングランドプレミアリーグで大活躍しているの日本代表の三笘薫選手(ブライトン)は、得意のドリブルで何人もの相手を置き去りにするテクニックを持っています。
これは相手の体の動きや相手を抜き去るタイミングなど細部を瞬時に判断するからこそできる技で、三笘選手は、相当な「虫の目」を持っていると思います。

「鳥の目」と呼ばれるものは、サッカーのピッチを上から俯瞰して見る視点です。
みなさんもテレビ等で、ピッチが全体で見渡せるアングルでサッカーを見たことがあると思います。
これは、ピッチ上で戦っている選手の視点とは違います。
ピッチ上で戦っている選手は、自分の周り数メートルの味方、相手など数人分しか視野に入っていません。
ただゲームをコントロールする中盤の選手や指揮官(監督)などは、この「鳥の目」でピッチ全体を俯瞰して見る能力が必要である、と言われています。
実際に、元日本代表のミッドフィルダー中村憲剛選手などは、ピッチ上で戦いながら自分の味方がどこにいるか、相手がどこにいるか、俯瞰して見ることができたそうです。
この「鳥の目」を持つことによって、味方でフリーになっている(相手がいない)選手を探してパスを出したり、自分のチームのバランスの崩れなどを瞬時に判断して修正したり、試合を優位に運ぶことができるのです。

「魚の目」とは、試合の流れになります。
試合の流れは、目に見えるものではありませんが、1つの試合の中で味方が有利な時間帯、相手が有利な時間帯が必ずあります。
明らかに実力が上のチームと対戦したとして、ほとんどの時間帯で相手に攻められっぱなしだとしても、その時間帯の攻撃を耐えて点を与えず、味方のチームのワンチャンスに得点できれば勝利することができます。
弱いチームが明らかに実力が上のチームから勝利することを「ジャイアントキリング」といいますが、指揮官や選手たちが試合の流れを「魚の目」でつかんでいるからこそ「ジャイキリ」が起こるのだと思います。

市議会議員の活動における「虫の目」「鳥の目」「魚の目」

市議会議員の活動についても「虫の目」「鳥の目」「魚の目」が必要だと感じています。

「虫の目」とは、市民目線に立ち、住民の声を聞きながら、住民が困っていることや住民の提案などを市政の場に届け、問題の解決を図っていくための視点。
「鳥の目」とは、市政全般に関して、予算・決算・計画などマクロな視点から市の状況を見て行政を監視し政策提言していくための視点。
「魚の目」とは、現状の課題ばかりではなく世の中の流れや状況の変化に対応しながら、将来的な視点をもってあるべき姿の実現に向けた活動をしていくための視点。
この「虫の目」「鳥の目」「魚の目」。
それぞれの視点を持った活動が重要で、どれか一つ欠けてもバランスが崩れた議員活動になる考えています。

「虫の目」の視点で、住民の声を聞き、市政の場に住民の声を届ける

例えば「虫の目」。
行政は、住民のための政策を講じ事業を実施しています。
しかし、既得権益や慣習等により、政策そのものがアップデートされないこともしばしばあります。
また、実際の現場とは乖離した事業が実施されていることも少なくありません。
議員は、住民から様々な声を聞いて、様々な課題を解決するために市政の場で訴えていく。
昨年の12月定例会で一般質問した「公共施設の予約と抽選」の問題や、今年の9月定例会で質問した「スポーツ施設の使用料」の問題は、実際に住民の方、特に働き盛り世代の方、子育て世代の方から寄せられた多くの意見を市政の場で質したものでした。
結果、一部の公共施設では、事前に希望日時を申請することで、仕事を休んでまで当日抽選に行かなくてもよくなりましたし、一部のスポーツ施設では使用料の見直しの検討を進めることとなりました。

「鳥の目」の視点で全体のスキームをとらえ、政策提言する

一方で、住民の要望を訴えるだけではなく、「鳥の目」で全体的なスキームを見渡し市のあるべき姿を議論し実現していくことも必要です。
私は、9月定例会決算特別委員会の令和4年度の決算全般の質疑において、花巻市の財政状況について質問しました。
花巻市の令和4年度決算における一般会計の財政状況については、市の借金である市債が前年と比較して21億円ほど減少しており、合併直後の平成18年から見ると、90億円程度減少するなど安定した財政状況になっていると私は評価しています。(令和4年度決算額 542億円)
これは、令和4年度46億円の収入があった「イーハトーブ花巻応援寄付金」いわゆる「ふるさと納税」に係る寄付金収入が大きな要因であると思います。
もちろん、現状の課題解決のために寄付金を活用して実施した事業もありますが、全体的に見て寄付金収入が市債残高の減少につながったことは、将来の行政運営を考えても妥当な財政判断であったと評価するものです。

令和4年度決算では財政の健全化が進んでいる一方で、経常収支比率(「市が自由に使えるお金」の割合はどれくらいか)という指標は、90.3パーセントであり、前年度に比べて6.4パーセント上昇しています。
決算特別委員会の質疑の場で、私は経常収支比率が上がった(市が自由に使えるお金の割合が減った)要因は何かということについて質問しました。

市の答弁では、人件費や光熱水費などの義務的経費(自由に使えないお金)が上昇したこと、臨時財政対策債(実質的には地方交付税であるが、国が地方公共団体に交付する地方交付税の財源不足に対処するため、その不足する金額の一部を一旦地方公共団体で借金をしてまかなっておく市債)を義務的経費充当のための財源として計算しなければなかったことなどから、経常収支比率が上がったとのことでした。

ちょっと難しい話になってしまいましたが、いずれ、昨今の物価高騰で光熱水費は上昇しており、令和5年度以降の見通しでも、経常収支比率の大幅な低下(自由に使えるお金の大幅な増加)は見込めないとのことでした。

私がなぜこの質問をしたかというと、ふるさと納税による寄付金収入の増加で、自由に使えるお金が増えた場合、例えば今後整備が必要と思われる「子育て施設」や「スポーツ施設」等の整備の前倒しが可能ではないか、と考えたからです。
物事はそれほど単純ではありませんが、将来のための施設整備に充てる財源として、寄付金により自由に使えるお金が増え、国の有利な財源や基金などを活用すれば・・・というのはあながち筋の悪い話ではないと思います。

いずれ、「子育て施設」や「スポーツ施設」等公共施設の整備にかかる政策提言に際し、財源等の裏付けはどうするかという議論になったとき、「それは当局が考えること」という理屈では、政策提言の説得力がありません。
議員は「鳥の目」を駆使し、全体的なスキームで物事を考える能力が求められるのだと思います。

「魚の目」の視点で、時代の変化に対応した議員活動を行う

最後は「魚の目」。
今やAI(人工知能)で、文書を自動生成したり(ChatGPT)、いくつかのキーワードを入力するだけで勝手にイラストを描いてくれたり(Stable Diffusion)する時代になってきました。
これらを行政で活用するのは賛否両論あると思いますが、半導体の加速度的な技術革新を唱えた「ムーアの法則」を見るまでもなく、こういった世の中の変化は、今後も劇的に進んでいくと思います。
議員の仕事も、時代の変化に対応した「魚の目」を持って臨まなければなりません。

昨年の12月定例会の一般質問において、私は「自治体におけるDXの推進」について質問しました。
趣旨としては「花巻市におけるDXを進めるためにもまず自治体からDXを進め、職員の負担軽減を図り住民の利便性を向上させるべき」というものでしたが、その中の具体的な提案として「振興センターや地域の公民館などで独自にデジタル活用のための講習会を行ってはどうか」当局に尋ねました。

昨年12月の市当局の答弁では、「地域の要請により生涯学習講座として1回だけ開催したことがあるが、今後必要に応じて検討したい」というものでしたが、今年の10月~11月にかけて、市主催で市内4か所、計16回の初心者向けのスマホ教室が開催されるということです。

「自治体DX」も時代の流れとして必須のものであり、高齢者が使えないから、とか、ニーズがないから、とかいう理由で留まっているべきではないと思います。
「DX」は専門的なところがあり、議員にとってハードルが高い部分もありますが、そんなことは言ってられないので、更なる調査・研究をしていかなければなりません。

まとめ

長くなりました。
議員に必要な多角的な視点。
今回は、「虫の目」「鳥の目」「魚の目」という観点からお話ししましたが、いずれ、物事を偏った視点で見るのではなく、また自分の考えを絶対視することなく、他の議員や市当局の考えにも関心を向けながら政策を実現していくこと。
このスタンスを持ちながら、議員活動を続けていきたいと考えています。

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