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年末企画「市民参画・協働の大切さとご提案」

この間、あるNPO法人の役員の方とお話ししました。
花巻市議会12月定例会における議案審議で議員の賛否が分かれた「花巻市市民参画条例」の話になり、私の所属する会派の方と一緒に提出した「花巻市市民参画条例修正案」が賛成7票、反対18票で否決されたことについて、その方は「どうして18人の議員の方は修正案に賛成しないんだろう?」と話されていました。

私もあらためて修正案が反対した議員の方の理由をいくつか考えてみました。
1つには、「市当局案と修正案を比較して市当局案が優れていると考えたから」
1つには、「市当局の提案に対して反対できないから」
1つには、「私の属する会派に否定的だから」
まあ、こんなものでしょう。

それぞれの議員の考え方は私も尊重しますので、否決されたことに対してとやかくいうことはありませんが、いずれにしても、今回の論戦を通じて「市民参画」の大切さを理解いただけなかったな、というのが率直な感想です。

これは私の力不足であり、大いに反省するところです。

「花巻市市民参画条例」については、花巻市議会6月定例会で一般質問させていただいたり、9月に行われた総務常任委員会の所管事務調査で当局に対し考え方を質したり、今年の政治活動の大きなテーマでした。

あまりにも私が市民参画にこだわるので、「市民参画バカ」と思っている人もいるのではないかと推察するところです。

なんでこんなに「にたないは市民参画と協働にこだわるのか?」について、ちょっと長くなりますが書いてみたいと思います。


行政と地域住民が対等関係のまちづくり

かつて、私は市の職員でした。

市役所を退職する前の年は市民参画担当課にいて、直接の市民参画担当ではありませんでしたが少しはその業務の内容を理解していました。

私は、地域づくりの担当係長でしたが、27のコミュニティ会議に交付金を出して地域づくりを任せる、悪い言い方をすれば「おカネをばらまいてあとは地域に投げてしまう」地域づくりの仕組みに疑問を抱えていて、それを何とかしたいと思っていました。

そんな時、島根県雲南市が地域活動を活発化するための自治体の研究会「小規模多機能自治推進ネットワーク」を立ち上げると聞き、このネットワークに花巻市も参加させてほしい、と当時の市長、部課長に直談判し、設立総会に参加しました。

この「小規模多機能自治推進ネットワーク」は、コミュニティ会議のような法人格を持たない地域団体に法人格に変わる権限を持たせ、例えば地域団体が運営母体となりスーパーを経営するなど地域で稼ぐ仕組みをつくったり、地域団体が運営主体となった地域交通(有償送迎サービス)を実施するなど住民福祉を向上させたりする取り組みを検討するもので、当時200近くの自治体が加盟していました。

雲南市をはじめ様々な地域の事例を聞き、そこで感じたことは「行政だけがまちづくりに取り組み、そこに住民がついていくのではなくて、行政と地域住民が対等の立場でまちづくりに取り組む仕組みを作っていかなければならない」ということでした。
まさにそれが「市民参画と協働」のあるべき姿と思っています。

私は、その仕組みをつくろうと検討を重ねていた矢先、在職1年で異動を命じられ、志なかばで地域づくり担当を離れることになるのですが、その想いや情熱が、後任の職員はじめ担当課に形として残せなかったことを今でも悔やんでいます。

このネットワークは今でも残っていて、花巻市も(形だけ)加盟しているようではありますが、幹事自治体である雲南市の取り組みは今でもメディアに取り上げられています。


「任せる政治から引き受ける政治へ」

私は、その後退職し一般社団法人を立ち上げます。
その中で、若い方から年配の方まで様々な階層の方とお話をすることができました。
また、PTAの方や地域団体の方、次世代を担う経営者の方ともお話をし、時には事業等でコラボするなど、多くの方と知り合うことができました。

私も市職員時代いろいろな計画をつくる立場にいたこともありますが、いかに自分が、民間の事情や仕組みを知らなかったことを思い知らされました。

確かに総合計画など市の目指すべき姿をつくりあげるには、俯瞰的な視点で総合的に市の現状を判断し、行動計画をつくるなどの行政的な知識、能力は必要でしょう。
一方で、私がお会いした多くの方は、直接市には声を上げられないけれども自分なりのまちづくりに対する想いを持っていて、その中には、日常生活の細かい視点での課題意識や課題を解決するための提案を持ち合わせている方もいらっしゃいます。

市民参画というと、声の大きい市民の方が行政に対していろいろと注文する、いわゆる「ノイジーマイノリティ」の方をイメージされる市職員の方も多いと思いますが(私もそうでした)、先にあげた「サイレントマジョリティ」と呼ばれる方の考え方をどうにかして、まちづくりにつなげられないか、そのことを日々考えていました。

このことが、私が市議会議員に立候補した大きな要因の一つでもあります。

そうであるならば、市議会議員の立場で市民参画と協働を推進しないことは、市民に対する約束違反になります。

結果として、今回は市民参画の推進を具体的に規定しない内容の「花巻市市民参画条例」ができてしましました。
忸怩たる思いでいっぱいです。

一方で、市職員の方には、私(たち)が修正案を出すことで、業務が増えてしまったことも事実だと思います。
それでも、市職員の方にわかっていただきたいのは、まちづくりを行政職員にのみ責任を負わせたくないという考えもあってのことです。

例えば、中心市街地が空き家が目立ち、閑散としている現状は多くの市町村でも見られる景色です。
かつての「街」は小売店が中心で、その周辺に居住地があり、狭いコミュニティを形成していました。
しかし、人口が右肩上がりに上がっていった時代に、多くの市町村が都市開発を行い居住地を市の郊外に整備し居住誘導を行った結果、郊外の居住地周辺に大規模店舗が立ち並び、結果、中心市街地は疲弊していきました。

現在、都市の空洞化に対し「あのときの市の政策は間違っていた」とか「その時の市長が悪かった」とお話しする方がいます。
でも、当時、人口減少がこんなに進むとは誰も思っていなかったし、ライフスタイルの変化も予想できなかった。
でも、当時の市長や職員の責任でまちづくりが行われたという事実は残ってしまいます。

私は、これは間違っていると思います。
まちづくりをしていくのは行政の職員だけではありません。
その責任は、その地域に住んでいる住民にもある。
だから、市民が参画しまちづくりをすることで、責任も分け合う。

住民が市長や行政に責任を丸投げする「任せる政治」ではなく、住民が市民参画し責任も負う「引き受ける政治」をすること。これは、かなり前に東京都立大学(旧首都大学東京)の宮台真司教授が唱えた「任せる政治から引き受ける政治へ」の受け売りですが、いずれ、地域資源を活用した個性のあるまちづくりのためには、国の制度の枠組みを超えた「オリジナルな住民主体なまちづくり」が必要だと思います(もちろん国の有利な財源を活用することは重要ですが)。

ちょっと、話が遠いところまで来てしまいましたが、私が市民参画と協働にこだわる理由を少しでもわかっていただけたら嬉しいです。

花巻市は、なかなか市民参画と協働が推進されていない現状であり、市も推進する仕組みをつくろうとはしない・・・じゃあどうしたらいいのか?というところを最後に提案して、今年の記事を締めたいと思います。


市民参画と協働を推進するための工夫

「市民参画」の推進方法ですが、私が6月定例会における一般質問で市民参画推進の方法について伺ったところ、市当局の答弁では「市民参画の推進については、市民参画・協働推進委員会の中では、例えば(市の計画などに対する)閲覧の件数が少なければ少ないなりに、どのようにすれば増えるかとか、配置の仕方、例えば農村部に多い計画であれば、振興センターのところに配置する際にも、まず交通手段等にももう少し配慮したような形で閲覧させるようなこともいずれ考えたほうがいいのではないかとかそういった意見があった」とのことでした。

市民参画・協働の現状を見ると、市民参画・協働推進委員会で出されたこういった小手先の改善では何ともならないのは明白です。
いったいどれほどの市民が振興センターを活用しているのか?
もちろん振興センターの利用者を増やすことも必要かもしれません。
ただそうではなくて、興味がもてない市の計画・条例を、別の観点から興味を持ってもらうよう誘導する、そういった工夫も必要だと思います。

例えば、パブリックコメントが少ないのであれば、パブコメを出していただいた方の中から抽選で記念品を差し上げるという方法もあるでしょう。

これは、ある行動をとることに対し、価格を変更したり、報酬や罰金 を与えることによって動機づけを行う「インセンティブ」とよばれるものですが、他自治体でWEBアンケートに応募していただいた方に抽選で記念品(報酬)を差し上げている例があります。(以下のリンクは千葉市の事例)


花巻市でも、先日終了した「はなまき健康ポイント事業」で一定のポイントを貯めると電子マネーが報酬として配られる「インセンティブ」の事業を実施しています。


市の計画に触れる、健康づくりのために歩く、といった市の政策目的を達成するために、今後、さらにインセンティブを活用することも必要だと思います。


また、人の行動変容のために「ナッジ」を活用することもおすすめです。
「ナッジ」は、英語で「軽くつつく、行動をそっと後押しする」という意味の言葉で、「経済的なインセンティブや行動の強制をせず、行動変容を促す戦略・手法」といえます。

「ナッジ」の詳しい説明をすると長くなるので、またの機会にお話ししたいと思いますが、「ナッジ」の手法をとりいれたチラシを配ることによって、会議への参加者が増えたとか、がん検診の受診者が増えたとか、多くの自治体で導入している事例があります。

こういった手法を取り入れることによって、市の計画や条例といったとっつきにくい政策にたいしても、より参画しやすくなるのではないでしょうか?

(と書いていたらお前の文章長すぎて読む気になれない。ナッジを活用したら?との外野の声がありました・・・)


今年も読んでいただいてありがとうございます!

ということで、今年の記事執筆は以上となります。
今年も拙文を読んでいただいてありがとうございました。

私の記事については、後援会の『中の人』にお願いして「X(旧ツイッター)」や「Facebook」にアップしていただいております。
1年間、アップしていただいてありがとうございます。
この場を借りて感謝申し上げます。

それから、記事に対する感想や意見がある方は、下記メールアドレスから直接私にメールを送っていただけるとありがたいです。(私は「市民参画バカ」かもしれませんが、公で「バカ」と名指しされても生産性は全くないです。)

公開しているメールアドレス nita@274labo.com


それでは、みなさんよいお年を!

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