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医学が進歩してもケアは続くー看護師の専門性とは

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看護師は専門職と認められてないが、「傷病人の療養上の世話」が専門性であり独占業務である。
看護師の仕事にICTやモデルチェンジした医療機器が導入されても、「傷病人の療養上の世話」は普遍的である。電子カルテに入力するのは測った体温や血圧などの数値や目視や会話で観察した事項で、必要であれば日常生活の支援・援助を提供する。病気を治す治療中も苦痛を緩和する治療中も、看護師がケアを提供することは変わらない。

お風呂に入ることができない状態ならば、身体を拭きシャンプーをする。着替えや食事を介助する。痛みや辛いところがあれば、温め冷やす。道具は新しくなりやり方も変わってきているが、看護師が提供しているケアはほとんど昔から変わらない。傷病人のニーズも変わってきているが、重症であれば基本的なケアが必要なことは変わらない。

尻の青い頃は「重症患者のケアには医学的知識や医療機器を使いこなす技術が必要」「重症患者のケアができないと看護師じゃない」などとかぶれた考えをしていた。
看護師とは比べ物にならない知識を持った6年間みっちり医学を勉強してさらに技術を研鑽し続ける医師や工学を学んだ臨床工学技師から見ると、世間知らずと腹の中ではせせら笑っていただろう。読みかじり聞きかじった医療知識よりも必要なのは、「伝統的に受け継いできたケアに効果があるのかないのか」という視点とディスカッションと研究だ。「効果がないからやめよう」というケアもあったが、エビデンスに基づいてやめたのではない。改善しないからやめようと意見が出たのが理由だ。エビデンスを集め法則性を見出すことができないことは、専門職と認められない理由のひとつだろう

バーンアウトして看護師をやめて3年になり、今は老父の在宅介護で看護師の仕事をしている。
認知症で入院していた老父を在宅療養できると判断できて、他に病気が見つかり治療することがリスクになると説明された時「痛くないように苦しまないように積極的な治療はしない」と主張し続けられたのは看護師時代の経験があってこそだと働いていた頃を思い出す。
「主介護者」という役割で、文字通り主に医師・看護師・ケアマネージャーからの話を聞き、決断をし、種々の契約をする。さらに食事・清潔・排泄のケアを毎日している。(現行の介護保険制度は常時自宅にいる健康な家族がいると、ヘルパーなどの派遣ができない)
日常生活動作の援助は看護師にとって優先順位の低い仕事で、介護福祉士やヘルパーの役割と考えているのが看護界隈の人々だ。自身に傷病人の療養上の世話の知識と経験がなければ、老父の在宅療養は厳しかった。看護技術のアップデートを知るためにググった結果を読解できるのも、今までの知識の集積だ。

自分の看護技術だけでなくケアマネージャー・訪問看護師などの支援があるので、自分ひとりで老父の介護を背負う必要がないことを知っていた。入院日数が短くなり在宅療養が普及した流れで、治療は病院で行う時代よりも支援する職種が増えたのは仕事している時に問い合わせなどで関わっていた。

老母に早期がんが見つかった時動揺するどころか「早期でよかった」と胸を撫で下ろし、各種検査結果や治療の説明を興味深く聞いていたのも看護師の仕事をしていたおかげだ。それよりも抗がん剤と放射線治療で弱る老母に水分補給と食事が大切なことや食べてはいけないものの理由について説明できたのは、「傷病人の療養上の世話」の経験と知識があったからだ。治療の副反応で辛い人に必要なのは、心のケアや包括的な全人的ケアではない。少しでも心身ともに楽に生活できる配慮だ。

「人間も死に抗えない」「どうしようもないことは起こる」、この看護師を続けて気づいたふたつのことで老親の最期は緩和治療だけ受けて看取ることを決心できた。加えておひとりさまの自分が、何かあれば独居で在宅療養をして最期を迎える覚悟と準備をしている。
病を持って生活し、死にゆくたくさんの人たちと関わったおかげで不必要に慌てず老親の最後を看取るために日々ケアをしている。
バーンアウトしてしまったが、病を持ち死にゆく人々と接するのは辛かったけど楽しい日々だった。

1860年代にフローレンス・ナイチンゲールが看護師の仕事の基盤を作ったが、それ以降看護師は仕事のアイデンティティを探る他に進歩はしていない。
1987年介護福祉士が誕生し、看護職は「傷病人の療養上の世話」という独占業務を手放した。看護界隈は人手不足とケアまで看護師ができない理由で、「診療の補助」を選んだ。さらに2000年に介護保険が始まり生活支援・身体援助を業とするヘルパーの人口が増えた。
看護界隈全体が看護師の役割とは全人的に包括的に患者さんをケアするなど、あいまいで漠然とした文言で自己陶酔している。
医学の進歩で病や障害を持つ人が増え看護師だけではケアができない状況になった結果、看護界隈は他職種に独占業務を手放す選択をした。看護師は専門性をさらにあいまいにして、医者の下働きから抜け出せずにいる。
重症の傷病人のケアができるのは看護師しかいない。その最後の砦を死守できるか、老親の介護をしながら見届けていこう。

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