サムネ

【第73回】「断れない日本人」にはなりたくなかったのだ(タイ王国旅行記Vol.3)

Closed(閉店).

無慈悲にも閉まっているトムヤムクンのお店を見て僕はがっくりと肩を落とした。

王宮から昼飯を食べにトゥクトゥクに乗ってカオサン通りまで来たのだけれども目当ての店の営業時間を過ぎてしまっていたのだ。

しかし完全に腹はトムヤムクンの腹になっている。

しょうがない。適当な店を見つけてトムヤムクンを食べよう。

商売根性が逞しい人達

適当にカオサン通りを歩いていると、バックパッカーの聖地と呼ばれるだけあって、かなり混沌とした空間が広がっていた。

雑多な町並み、客待ちのタクシーやトゥクトゥク、人々の多国籍な顔ぶれ、観光客相手に商売をする商人たち。

たしかに、この場所は独特の雰囲気が漂っていて、この空間にいるだけで楽しいかもしれない。

幸いなことに、お店はたくさんあったので、店の前に置かれた簡単な写真のメニューでトムヤムクンが書かれていた店に入った。

早速、席につくとトムヤムクンとコーラを注文をした。タイの飲食店は日本と違って水が無料提供じゃない所も多いので、こうやって何か飲み物を頼んでおいたほうが無難である。

僕はそんなにコーラが好きなわけじゃないけれども、タイ滞在中は日本では無料の水にお金を払うのが何だか癪だったのと、メニューをしっかり見なくても、ほとんどの場合は置いてあるという理由からコーラばかり飲んでいたと思う。

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5分も待たずして頼んでいたトムヤムクンが到着した。

酸味が利いていて美味しい。ちなみ中に入っているレモングラスなどの香草類は、香り付けなので絶対に食べてはいけない。ボリボリしていて食感が最悪のただの繊維だからだ。タイ人も食べないとか。

さて、タイの飲食店はエアコンが効いていないところが結構ある。僕が入った店もそうであった。幸い僕が入店した時間はちょうど曇っていて、そんなに暑くなかったので特に問題はない。

カオサン通りを眺め異国感を感じながら食べる飯は格別かもしれないな、とそんな事を考えながら店の外を見てスープを飲んでいると行商人らしき人が店の外側近くに座っている人の側までやってきて何やら商売を始めたのだ。

なんて商売根性がたくましいんだろう。店で飯を食っている人にまで声をかけるとは。店員も、この光景が当たり前のようで何も反応をしない。

また日本とは違う国に来たんだなということを実感した瞬間だった。

そんな光景を見ながら僕は、ちょっと奥の席に座っていてよかったと胸をなでおろした。

Grabデビュー

遅めの昼食を食べ終えた僕は、さて、どうしたものかと思い悩んでいた。

バンコク駅に到着した後に、中華街を巡り、王宮を見て、カオサン通りで昼食を取るということまでは考えていたのだけれども、それ以降はノープランだったのだ。一応、ナイトマーケット(夜市)に行き、その後に寝台列車に乗ってタイ第二の都市「チェンマイ」に訪れるつもりなのだけれども時刻は15時過ぎ、少しナイトマーケットまでには若干早い時間である。

では、これからどうしようか。

色々考えた挙句「ターミナル21」というショッピングモールに行くことを決めた。

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ターミナル21とは、空港を模して作られたバンコクの有名なショッピングセンターだ。地下1階、地上6階でフロアが構成されているのだけれども、各階がサンフランシスコ、パリ、ローマなどの都市名がつけられ、その都市のイメージに合わせたデザインが施されているらしい。

その中には日本の首都である東京のフロアもあるのだとか。

日本にいる間にネットで見かけて気になっていたのだ。

しかし、ここで問題が発生。

僕がいるカオサン通りはかなり辺鄙な場所にあって公共交通機関までのアクセスが悪い。だからこそ安宿が密集しているのもあるのだろう。

一番近い地下鉄の駅まで歩いて2キロ以上もある。普段ならば全然歩ける距離なのだけれども、このときは、これまで散々街歩きをしてきたこともあって疲れ果てていたので歩きたくない。

かといってバスを使うのは、ちょっと遠慮したいと思った。僕はバスという乗り物が苦手である。ネットで調べてもなかなか情報が出てこないことに加えて、知らない町では地名がわからないので、どこに連れて行かれるかもわからない。

特定の場所を往復するシャトルバスならまだしも、異国の地で路線バスに乗る気にはなれなかった。

先程の乗車したトゥクトゥクは窓もない開放的な乗り物なので、長距離の移動には向かない。

そうなると手段は1つ。タクシーを使うことである。

タイのタクシーの初乗り運賃は35バーツ(当時のレートで約120円)なので日本と比べて、とても安い。

ただ、ここでも問題があった。これは海外のタクシーあるあるだが、相手が外国人だとわかるとぼったくられることがあるのだ。

ぼったくりに会わないための交渉方法や回避方法はいくつかあるのだけれども、上手く行くとは限らないわけで。

不安がつきものである。

しかし、安心してほしい。今の時代は絶対にぼったくられない便利なサービスがあるのだ。

「Grab(グラブ)」と呼ばれるタクシー配車アプリである。日本人にとってタクシー配車アプリは「Uber(ウーバー)」の方が馴染み深いかもしれない。

予め乗車場所と目的地を指定できるので、言葉の通じない外国でも確実に行きたい場所に行くことができる。しかも料金は前もって決まるのでぼったくりに合わないというすぐれものだ。

乗車前にドライバーの評判も見ることができたり、警察に通報するサービスもあるので危ないと思ったら回避する手段もあるのがありがたい。

さっそく使ってみると特に問題もなくターミナル21に到着することが出来た。

10キロ程乗ったが128バーツ(当時のレートで約430円)だった。乗車アプリを通じてクレジットカード決済ができるので、面倒なお金の計算も要らずに便利なものである。

ただ日本と違って結構自由奔放なので普通にスマホで友達にメッセージをしながら運転していたりする。そういった態度に腹が立つような人は海外旅行は向いていないのかもしれない。

運転手が個人的に車内でかけているであろうタイの音楽が妙に印象的だった。

ターミナル21

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ターミナル21は、とても綺麗なショッピングセンターだった。これまでタイで観光してきたどの場所よりも清掃が行き届いている。

店の中に入ったときに警備員の人がこちらに敬礼してくれたのには驚いた。日本で言うところの百貨店に近い高級路線なのかもしれない。

そんな感じの印象を受けたけれども、このショッピングセンターにあるフードコートは100バーツ以下で食事できる店が多く、屋台並みの値段だから不思議だ。正直一日目に食べた屋台では、ハエがたかっていたりして、お世辞にも衛生的とはいえなかったので、こういった場所のほうが安心だと思う。

各階のフロアも噂通りであり、特にトイレが、その都市のイメージを色濃く再現していて面白かった。

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東京フロアのトイレ。
百人一首の和歌だが、なぜこれをチョイスしたのかは謎である。

ただ、東京フロアにも行ったが、そこのデザインが「外国人のイメージする間違った日本」のような印象を受けた。もしかしたら他のフロアも、その国の人が見たら間違っているのかもしれない。

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日本語や日本語風フォントで溢れるモール内。

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日本食レストランもいくつか見つけることが出来たので、旅行中にタイの味に飽きたら訪れてもいいだろう。


日本の満員電車は実はマシ?

「く、苦しい…」

超満員の混雑した電車の中で僕はうめき声を上げていた。

満員電車とは日本特有のものだと勝手に思っていたけれども、帰宅ラッシュとなるような夕方など時間帯によってはバンコクのMRTでも満員電車になるようだった。

これだけ混雑していると鍵をかけているとは言え、スられないか心配でもある。

ターミナル21の見学を終えた僕は少しの休憩を挟み、最寄りのスクンビット駅からMRTに乗り込んでタイ文化センター駅へと向かっていた。

ターミナル21がいくらデザインに拘っているとはいえ、本質はショッピングセンターである。当たり前のことだけれども、ショッピングセンターとは買い物をする場所だ。

昼食をを済ませ、特にショッピングするつもりもなくターミナル21にやってきた僕にとって、そこまで長居する場所ではなかったのである。

このときの時刻は17時過ぎぐらい。少し早いけれどもナイトマーケットに行くことにしたのだ。

ナイトマーケットはバンコク市内の至るところにある。しかし、僕は22時には夜行列車に乗るためにバンコク駅にいなければならない。その事を考えるとMRTを使ってアクセスの容易な「ラチャダー鉄道市場」に行くことを決めた。

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なんでも2015年にできた比較的新しいマーケットであり、カラフルなテントの屋台が連なる姿はフォトジェニックなことでも有名なのだとか。

規模も大きいらしく行く前から楽しみである。

しかし、それにしても満員電車がきつかった。日本の満員電車は人が降りる駅では扉側の人が一度ホームに降りてくれたりするのだけれども、タイではそれがない。降りる時は人をかき分けなければいけないのだ。

これがやられる側もする側も窮屈で仕方ないわけで。

ぜひとも、タイでも降車駅で扉側に陣取る人は、降りる人のために一度電車の外に出るという文化が生まれて欲しいものだ。

ラチャダー鉄道市場

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溢れかえる人、人、人。キラキラと輝く照明。溢れる人たちの熱気。立ち並ぶ屋台の数は圧巻である。

人混みは基本的に嫌いな僕だけれども雰囲気に飲まれワクワクしてきた。

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日本における縁日の屋台はお祭りのときにしか見られないものだけれども、この夜市は看板を見る限り毎日17時から午前1時まで開催しているそうだ。

どうも熱帯や亜熱帯の地域では暑い昼間ではなく比較的に活動しやすい夜に人々が外出することから夜市が発展したのだとか。

このラチャダー鉄道市場は買い物(雑貨)、食事、パブの3つに別れているらしい。

まずは買い物エリアを攻めてみる。

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夜市と聞くと伝統的なものを想像するが実際はそういった側面だけではない。

もちろんタイの伝統的な工芸品なども売られていたが流行に準じたものもたくさん売っていた。

どうも競争が激しく若者を取り入れないと生き残っていけないそうだ。

売られているものはかなり多種多様で見ているだけで面白い。

おしゃれな服やアクセサリーに加え、知的財産権を完全に無視したであろうイラストがプリントされたTシャツ、海賊版のスマホの周辺機器やゲーム機、ハンドメイドのパスポートケース、挙句の果てにはマッサージまで。

比較的新しい市場なので店構えはきれいなのだけれども中身はカオスだった。

その次は食事のエリアへ。

この食事のエリアもまたかなり混沌としている。タイ料理はもちろんことチラホラと中華料理や日本食など多国籍なメニューが見られた。

中には刺し身として生サーモンが売られていたが、衛生面が怖いのでもちろんこれはパス。

実は日本にいたときから、このナイトマーケットで食べたいと思っていたものがあったので頑張って探してみる。

この鉄道市場は約10万㎡の敷地に約1300軒の店舗、屋台が並ぶ巨大なマーケットで、東京ドーム換算で約2個分の広さがあるのだけれども、程なくして目的の屋台を見つけることが出来た。


この先閲覧注意!









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ナイトマーケットでしたかったのは昆虫食を食べることである。

タイ東北部イサーン地方では土地が豊かではなかったので虫を食べる習慣があった。その名残で、今もタイでは昆虫食を食べることができる。

ゲテモノと罵るなかれ。日本では昆虫食は日常的に食べられていないが、世界的に見ると虫を食べる国は結構ある。そんな日本でもいなごやはちのこは食べる地域もあるのだ。

繁殖も容易で場所も取らないことから貴重なタンパク源として世界の食糧危機を救うのではないかとの注目を受けている昆虫食。これは食べてみるしかないだろう!

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外観が虫っぽくなくて比較的食べやすそうなSilkworm(蚕)の蛹を選んだ。値段は40バーツ(当時のレートで約140円)。タイの物価にもそろそろ慣れてきたので、量から考えると安くはないような気がしたが経験はプライスレスなので問題なし。

おまけでGrasshopper(バッタ)をおまけしてくれたので、まずはそれをパクリと一口。醤油風味でなかなかイケる。たぶんナンプラー(タイの魚醤)で炒めてあるのだろう。食感は海老のようだった。

おまけといっても小さな一匹をくれただけなのですぐに一瞬で食べ終えてしまった。そこで本命の蚕の蛹を口に運ぶ。

「あ、うまっ…」

自然と言葉が漏れていた。にんにくの風味が効いていて、かなり美味しい。袋詰してくれたときに謎の粉をふりかけていたのだけれども、それはフライドガーリックだったのだと思う。

食感は予想に反してトロッとしていたりはせず、多少ボソッとしているが変わったスナック菓子のような感覚だ。

蛹自体が小さいこともあって本当にスナック菓子かのように食べられる。美味い。

これはビールが合いそうだと思ったので近くにあったお酒を売っている露天で購入。

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タイで一番飲まれているビールの「LEO」を選んだ。予感は的中。ビールと蚕の蛹とで最高のマリアージュが生まれていた。

日本にいるお父さん、お母さん。僕は今、日本から4000km離れたタイで虫をつまみにビールを飲んでいます。

完全に最高の気分になっていたので、そんな変なことを考えていた。


あわあわシャワータイム♥

清掃中か…。

洗剤によって泡まみれになったシャワー室の床を見て使えないことを察した僕は、近くにいたタイ人のおじさんと共に顔を見合わせて苦笑いをした。

鉄道市場でビールを飲み終えた僕は、カニカマの入った割れたたこ焼きのような食べ物で腹を満たし、寝台列車に乗るために20時半頃にバンコク駅へと戻ってきたのだ。

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スイートチリソースがうまい。
下に敷いてあるもやしが生だったのが
カルチャーショックだった。

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夜のバンコク駅。
都市と田舎で経済格差の大きいタイでは
バンコクに出稼ぎにやってきた人達がこうして
駅で一夜を過ごしたりするらしい。

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わかりづらいが写真奥に
トイレとシャワーが設置されている。

バンコク駅のトイレにはシャワー室が併設されている。

トイレは3バーツ(当時のレートで約10円)、シャワーは10バーツ(当時のレートで約35円)かかるので注意が必要だ。シャワーならまだしも、ただの生理現象である排泄行為にお金を取られるのは癪だけれども、日本以外の国では比較的普通のことみたいなのでしょうがない。

実は寝台列車の中にシャワー室があったのだけれども、それを知らなかった僕はここでシャワーを浴びていくことにしたのだった。もっとも車内のシャワーはトイレのすぐ横にあり、浴びたら最後トイレの中が水浸しになるので使わなくて正解だったと思う。

もともと今夜はシャワーを浴びられずボディペーパーで体を拭くだけになると覚悟していたので、あるだけでもありがたい。

受付の人に10バーツ払い、さっそく中へ入ったのだが、そこで清掃中にぶち当たってしまったのだ。

清掃中ならお金を払う前に言ってくれよ…と思いながら入り口で待っていると、清掃のおばさんが手招きしてシャワー室を指差してきた。

どうやら使っていいらしい。

え?まだ床は泡まみれだし清掃終わってないのに?

前にいたおじさんはにこやかな微笑みを浮かべ僕に順番を譲ってくれた。そのご厚意は嬉しいのだけれども、この状態で使うのか…。

ええい、ままよ!

意を決して中に入り、まずは床の泡を流す。

中は想像よりはキレイだった。トイレの個室をそのままシャワー室にしたようなイメージをしてもらえればいいだろう。

ただ、脱衣所なんて言う気の利いたものはないので靴やかばんに水がかかってしまうが、もうしょうがない。

ネットではかばんなどをぶら下げるフックがあると書いてあったけれども、それがなかったのもしょうがない。タオルをかける棒に無理やりくくりつける。

スマホが誤って落ちてしまったけれども、それもしょうがない。画面が割れたり壊れたりしなくてよかった…。

案の定、一日目と同じで水しか出なかったけれども、それもしょうがないのだ。

あるだけでも、ありがたい。


「断れない日本人」にはなりたくなかったのだ

シャワーを浴び終えた僕は、荷物の整理や飲水の調達をして電車に乗り込むことにした。

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電車は22時発なのだけれども21時ごろにはホームに電車があり乗り込んでいる人がいたので、僕もそれに習い乗り込んだ。

ちなみに寝台列車はタイ国鉄のWebサイトで日本から予約した。切符はスマホの画面を見せるだけではダメで印刷して必ず持参しなければならないようである。

窓口でも切符は買えるが、かなりの人気列車のようで時期によっては当日券が無いこともあるので、予約したほうが確実である。

この寝台列車は個室の一等車からただのボックス席である3等車まであるが、横になりたかったので僕は2等車の簡易ベッドで寝られる席を選んだ。

席は二段ベッドの上か下かを選べるが、上の席には窓がないのでもちろん下を選択。少し高いがせっかくの車窓が見られないのは残念なので払う。

バンコク駅からチェンマイ駅までは片道841バーツ(当時のレートで約2900円)だった。実は日によってはLCCでドンムアン空港からチェンマイ国際空港まで行ったほうが安いし早いのだけれども、せっかくならば寝台列車に乗ってみたいじゃないか。

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それから乗り込んでしばらく席に座っていると、乗務員であろう人がやってきてベッドメイキングをしてくれた。

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シーツもビニール袋に包まれたものを開封してくれているので、非常に衛生的である。

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横になってみると意外に快適だった。2等車なので、それほどでもないと思っていたけれども十分になることができる。

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不特定多数の人が電車に乗り込むため、しっかりかばんに鍵をかけワイヤーでくくりつけて防犯対策をしておいた。

寝る準備が万全になったことに満足していると、ベッドメイキングをしてくれた人と違う気弱そうな乗務員の青年が話しかけてきた。

「朝食はいかがですか?明日の10時にこの席までお持ちしますよ」

そういって僕にメニューを見せてくる。この列車は明日の12時10分に目的地であるチェンマイ駅に到着するので、こういった朝食の販売をしているのだろう。

ありがたい話である。けれども実はこの寝台列車には食堂車がついており、日本ではほとんど見られなくなった食堂車で朝食を食べたい気持ちが強かったので断る。

「いいえ、結構です」

「でもお腹が空くよ?」

「いやいや、大丈夫」

「じゃあコーヒーだけでも」

しつこい。食堂車が併設されているのになぜこんなにしつこく売ってくるのか。もしかしたらチップが欲しかったのかもしれない。

よく考えたら食堂車で食べたいからという理由を伝えればよかったのだけれども、昼間の詐欺師との戦いや「断れない日本人」という単語が頭の中をチラついて、カッとなっていた僕は相手が気弱そうなのをいいことに、

「明日の朝は食べなくても大丈夫だから、これは必要ない!」

と少し大きめの声をあげてメニューを返していた。

今思うと食堂車のメニューと、渡されたメニューは全く同じだったので、そんなに拒絶しなくても良かったのかもしれない。

悲しそうな顔をして去っていく青年を見て、僕は少し罪悪感に駆られるのだった。

風情だけがそこにはあった。

22時。定刻通りに列車は動き出した。

停止中も列車は前に言ったり後ろにいったりとそわそわと細かく動いていたのだけれども、やっぱり発進すると興奮する。

ところが…。

ズギャギャズギャギャギャギャギャ!!!!

車内では列車の老朽化から凄まじい音が響いていた。電車もガタンゴトンではなくガッタン!ゴットン!といった感じでかなり激しく揺れる。横になっているから余計に振動が伝わってくるのかもしれない。

はっきりいって乗り心地は最悪である。

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ただ風情だけがそこにはあった。

そんな感傷に浸る僕を乗せて列車はタイ第二の都市「チェンマイ」を進んでいく。

タイマップ7

14時間10分の長い旅が始まったのも、つかの間、旅に疲れた僕はいつしか夢の世界へと誘われていた。

最後に

すみません、文量が多くなってしまい毎日投稿ができていないです。

のんびり更新していきます。

>>前の話はこちら:【第72回】逃げるが勝ち(タイ王国旅行記Vol.2)

>>次の話はこちら:【第74回】私は幻覚剤乱用者です(タイ王国旅行記Vol.4)


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