発露

カメラ触ってたら、撮ったこと忘れてた写真が出てきて、こういうの見つけた瞬間のためにわざわざカメラを引っ張り出して写真に残しているのかもしれないなと思った。iPhoneのカメラロールなんて手軽に振り返れちゃってダメね。忘れてたものを思い出すっていうのがいいのに。私はそういうの好きだよな。思い出させてもらうこととか、気づかせてもらうことって、とても尊い。忘れてしまった大事なことを思い出させてくれる人を友達と呼んでいる。人はどうしたって忘れる。忘れられる。何だって覚えているくせに、都合よく使い分ける上書き保存。はたまた、単なる容量不足。すべて目に焼きつけたくたって結局全部は覚えておけない。けれどひとつふたつ手放したって何も変わらない。降りられない。同じ線上をぐるぐる回って、同じところに辿り着くことだってある。それにすら気づかないことだって。人は忘れたり思い出したり繰り返しながら歳を重ねている。27歳の私によれば、私達にできることというのは思っているよりずっと少なくて、記憶を重ねること、気がつくこと、名前を呼ぶこと。せいぜいそのくらい。書いた時の心持ちなんてちっとも思い出せなくても、今になってやたらと響く。記憶を重ねること。気がつくこと。昔のこと、何であんな奴なんかって少しも思わない。下手くそなりの精一杯を私は抱きしめてあげられる。あんたはそれでいい。結局人ってできることしかできないし、必要な時に必要な人に出会うようにできている。縁ってそういうもの。その時呼ぶべき名前を呼び、そして、呼ぶのをやめた。

人生の重要なタイミングで同じ本を読んでいたこと、大人になってからピアス開けた理由が同じこと、身体の大きさ全然違うのに手の大きさが同じこと。共通点に喜んでいるうちはまだまだほんの入り口で、恋に恋してる状態なんだと思っていたけど、私の持論は彼の前では悉く覆される。この喜びは持続するのだろう。 私達にできるのは、記憶を重ねること、気がつくこと、名前を呼ぶこと。私の愛情表現は行動だと思っていたのに。してもらったことに対して愛情を感じるのはいいとしても、してあげたことを私の愛だと言い張るのは違う気がしている。それってどこか独りよがり、自己満足、自分のことしか見てない。その人のためにいくらでも時間費やせること、自分を犠牲にできることを愛と思っていたら、それ以外の愛に気がつけずに、いつまでも満たされないんだろうな。私のそばにいる人たちは、私が何をしてもしなくても変わらない。私の行動によって愛情が増えるわけでも、目減りするわけでもない。変わっても一緒にいられる人とは、変わらなくたって一緒にいられる。愛は行動じゃない。きっと気づき応えること。私が今もらっているものも、あげたいものも。それが分かって、視界がまた少し明るくなった。欲していたものは前からずっと、たくさんもらっていたんだな。