音楽療法(MT)を体験してきた

アメリカには、米国認定音楽療法士という認定資格がある。(Board Certified Music Therapist = MT-BC)国家資格ではなく民間資格なのだけれど、知り合いがこの資格を取得するために渡米していたので、気になっていた。資格を取得するには、米国音楽療法学会の承認を受けた州立大学などで音楽療法専攻課程を学び、カリキュラムを修了する必要があるらしい。

今回音楽療法を体験してみようと思ったのは、正直なところ音楽介入による効果を期待したからではなかった。もちろん、音楽療法のセッションや計画内容には興味があったし、知的障害や発達障害で行動とコミュニケーションに問題を持つ子ども達にとって、不安への対処に役立つひとつの選択肢だろうと思う。ただ我が家にとっては、発達不安を抱える息子が安心して大好きな音楽と触れ合える場所を探していたことが行ってみる一番のきっかけになった。

長男は音楽が大好きだ。アナと雪の女王をかけるとうれしそうにスピーカーの方に向かって行き、どこから音が鳴っているんだろうと真剣に覗き込んだり耳をあてて聞いている。保育園でも上のクラスでピアノの音が鳴ると遊びをやめて背伸びして上のクラスの様子を見ているらしい。リトミックの時間が終わるとまだやりたいと泣いたり、歌の時間は終始うれしそうに身体を揺らしてニコニコしていると聞いて、何か習わせたいと思っていた。

ある時、近所のピアノ教室でリトミックをしているというので行ってみたことがあった。その際に、月齢に合わせた発達の目安の話になり、成長がのんびりな息子の様子を気にかけてくれているのが伝わってきたので、息子の事情を話してみることにした。でも、話をした後のレッスンは、先生の表情が少し硬くなっているのが分かった。それは、どう配慮したら良いだろうという戸惑いや気遣いの気持ちからくるものだと思う。事情を知ってもらった上でいつも通りのレッスンをしてもらいたいと思っていても、先生は、何か配慮できることはないか?どうするのが一番良いのか?とつい構えてしまうのだろう。気遣い自体はとてもうれしい。それでも、手探りしながら戸惑っている表情を見ると、ついこちらも気を遣ってしまう。先生に悪気はないし、気持ちはもちろんありがたくても、お互い気を遣い過ぎてしまうと習い事は続かない。何事も相性があるように、子どもの抱える不安に対する向き合い方の相性も大事だなと思うできごとだった。音楽療法なら、先生も慣れているだろうからこちらも最初から気を遣わずに済む。

到着すると、防音の音楽療法ルームに通された。音楽療法士2名(贅沢!)と息子で30分間のセッションだった。動画も撮影し、終了後に音楽療法士がアセスメントを行い、治療計画を提案してくれる。計画については次回教えてもらう予定だけれど、シンバル、ツリーチャイム、木琴鉄琴、マラカス、タンバリン、ピアノ、太鼓などを使い、時々床や壁を叩いたりしながら、息子も飽きることなくとても楽しそうにしていた。ひとりの先生がピアノを弾きながらカメラを動き回る息子に合わせて時々回し、もうひとりの先生が歌を歌いながら、楽器を一緒に弾くように促してくれていた。セッションは、個人に合わせて自由な形式で行われ、「典型的な」音楽療法は存在しない。マジックミラーの反対側から息子の様子を見守った。ピアノは、鍵盤を叩くと音が出る→鍵盤を叩いて音を鳴らすと先生も音を鳴らしてくれることに気づく→ただ叩いて音を鳴らすだけではなく相手が鳴らすかどうかを試しながら叩き、1人遊びから2人遊びを楽しむ→その楽しい体験をもうひとりの先生にも見て!と息子が合図して3人で楽しむーーそんな変化も見ることができた。

第三者にも楽しいことを共有したいという気持ちが自然と出てきて、音楽が他者とのコミュニケーションの助けになるのはいいなぁと思った。マジックミラーを介して息子が母子分離の環境でどう過ごしているのかを見ることができたのも良かったかな。

他の療育との組み合わせで、習い事に通うようなつもりで利用していこうと思う。そんな訳で、いよいよ電動自転車購入。前向きに動き出せそうな気がしてきたぞ!

2021/02/21追記)初回は楽しんでいた息子も先生が真顔で息子を観察する雰囲気を察知したようで(母親のわたしの目にも病院で音楽療法を受けているように写った)その後の数回は戸惑った表情で楽しめていない様子が続いた為、現在は講師を変えて、月に2回、オーストリアで音楽療法士資格を取得した方にセッションを受けています。心から音楽を楽しめる時間となり、この時間を通したコミュニケーションを親子で楽しんでいます。





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