読書記録「medium 霊媒探偵城塚翡翠」

新書版を書店で見かけたときからずっと気になっていた。
たくさんの「大賞受賞!」の文字に惹かれていたが、「霊媒探偵」の文字に手を出せなかった。
フィクション要素を絡めたミステリ、いわゆる特殊ミステリに苦手意識がある。
普段読まないので、自分が受け付けられるかどうかが不安だった。
そんなことをつべこべ言わず、あのとき手に取っていれば良かった。
そんな後悔をするくらい刺さるミステリー小説だった。

一昨年の年始あたりに書店で「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の文庫版を見かけた。
ずっと気になっていたし、ミステリランキング5冠を読みたい。けど、自分の好きなタイプの物語なのか不安。
そこで、隣にいた恋人に提案した。
お互いに本を購入して、読み終わったら交換しよう。
私は伊坂幸太郎の「フーガとユーガ」を、恋人は「medium 霊媒探偵城塚翡翠」を購入し、読み終わったら交換しようと約束した。

「フーガとユーガ」を読み終わり、早く交換したかったけど仕事で忙しい恋人を急かすわけにもいかない。
忙しい、を理由に恋人はなかなか本を読まなかった。
貸してもらえるのはマダカナーと思っている間に、私と恋人は同棲を始めた。
部屋にお互いの本棚を並べて、それぞれが大切にしている本を並べる。
恋人の「読みたい本は読んでいいからね」の言葉に頷いて、ようやく手に取り読み始めることができた。
そう思うと、文庫一冊を手に取るまで、読み始めるまでにも物語って発生するんだな。


死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。
心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。
証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。
だがその魔手は彼女へと迫り――。
http://kodanshabunko.com/medium/

まじで、ぐうの音も出ませんわ。
読んだ後は、圧倒的満足感。
打ちひしがれて、ぱっと感想が出なかった。
緻密に凝られた展開にまんまと騙されて悔しくなった。
逆に、よくネタバレを踏まずに私はここまで生きてこれたな。

「ミステリ大賞5冠」とキャッチコピー「すべてが、伏線。」であがるハードルをやすやすと超えていく。
読後にすっきりと、満足しつつ、でも悔しくなるような作品を読んだのは久々だった。

犯人当て・館ミステリ・連続殺人のさまざまな種類の短編から、証拠を出さない連続殺人犯につながっていくミステリー小説。
さまざまな種類のミステリーで圧倒してくれるので、より満足&悔しいの感情になってしまう。
短編で解説されなかった違和感もラストまで読めば、伏線だったのかと納得する。

たぶん、この小説をマッチングアプリで会ったことのない異性に勧められて読んでいたら、惚れてしまっていたと思う。
そんな異性が私にいなくて良かったわ。
ミステリ小説が好きなんですよ~、という人の方がこの小説は刺さると思う。
ミステリ小説好きで未読の方は、惚れないうちに読んでおいたほうがいい。

あと、リアル・支配の悪魔だと思った。
相手の行動どころか感情の動きまで支配する。
支配の悪魔については「チェーンソーマン」の漫画を読んでください。
そして何より、作者が支配の悪魔。
読者は作者の手のひらの上だ。
物語の流れから、読者がこのシーンを読んでどのように推論立てるかまで見通したうえで物語を書いているだろうと感じる。

本当に、ひさびさに悔しいと思った。
展開・キャラクター・伏線…などなど全部が見事で。
いろんなミステリタイプの短編を踏まえてあの回収。
小説家を目指していた頃は、名作と呼ばれる小説や映画を読んでは悔しくなっていたけれど、今はもう、ほとんど面白いものをただ面白いと楽しむだけになっていた。
ブルーピリオドという漫画に「悔しいと思えるならまだ戦えるね」という言葉がある。
私はまだ、戦えるのかも。


勢いでテレビドラマ版も鑑賞した。
勢いってこわい。
普段ドラマを観ないのに、一日かけてmedium編の5話を一気見した。
ドラマだとまだぐうぐらいは音が出ます。
時間上、解説されない部分もあったので。

そして、ドラマの城塚翡翠ちゃんのファッション・メイク・ヘアスタイルがとんでもなくかわいい。
清原果耶さんってめちゃくちゃかわいいことは知っていたけど、あざとさ加わると降参である。

ファッションもかわいいので調べてワンピースを買おうとしたら、3万円とかしたのでそっとブラウザを閉じた。
似合うとか似合わないじゃなくて、初めてこうなりたい!って思っちゃった。

美容院で、なりたいイメージ像として「城塚翡翠」をしている清原果耶さんの写真を見せた。
顔の可愛さとか違うところが多すぎて、ほど遠いけれど、かわいくなりたい……城塚翡翠になりてえ……
カットしたばっかりのときは、巻いてもらったこともありちょっと城塚翡翠になった。
次の日に私になってしまったが。
城塚翡翠になりたい欲はまだ収まっていません。
強く生きます。

ちなみに恋人は、まだ小説を読んでいません。
(私の貸したkindleでひたすら東京リベンジャーズばっかり読んどるわ)

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