読書記録「さよならドビュッシー」

「贖罪のソナタ」の解説に、本書のことが書かれていた。
ピアノによる音楽療法について、この作品でも取り上げられているらしい。
中山七里先生の処女作でこのミス大賞受賞作。
それは読むっきゃない!

スポ根ピアノ小説×ミステリー!
物語の鮮やかな展開を楽しむためには、あらすじもなしで読んじゃった方がいいと思う。
けれどこの読書記録は自分の備忘録でもあるので、ネタバレにならない程度にあらすじを載せておく。

祖父と従姉妹と大火事に遭い全身大火事になった主人公は、全身大火傷になりながらなんとか生きながらえる。祖父の遺言からピアニストになることを決意し、コンクールの優勝を目指して猛レッスンに励む。主人公を貶めようとする出来事が起こる中、ついに殺人事件が発生する。

ピアノの小説って初めて読んだ。
音楽の小説って音楽が分からなければ楽しめないんじゃないの、って思っていたけど、繊細な記述でどんな曲なのか想像しながら読むことができる。
曲を流しながら小説を読むともっと没入できそう。

そのピアノが繊細なクラシックとしてだけでなく、スポ根要素として登場する。
全身大火傷を背負ったことにより、ピアニストへの道が閉ざされたものかと思われるが、祖父の遺言と音楽学校に推薦で通っているため、ピアニストを目指す以外の道がない。
主人公のピアノの先生である岬先生と協力して、コンクール優勝を目指す。
うまく動かない指、うまく演奏できるようになったら今度は指が動かなくなるなど、たくさんの壁を超えていく。

この主人公のピアノの先生が探偵役。
ピアノの先生が探偵役なんて出来るのって思ったけど、ちゃんと洞察力が高いことには理由があり、納得できる。
この先生の背景となるお父様が著者の別の作品(追憶の夜想曲)に登場して、嬉しくなる。何も知らずに読んでいたら岬先生の父が登場してびっくりした。

主人公がピアニストになることを決意させたのは祖父の遺言。
主人公がピアノを弾く中で、何度もその祖父との思い出が出てくる。
そのおじいちゃんがどれだけ好きだったかが分かる。
祖父が亡くなる大火事からこの物語が動き出すので、祖父は序盤で亡くなってしまうが、亡くなってからも、何度も何度も作中におじいちゃんの影がチラチラしている。
ピアノのコンクールの最中におじいちゃんの言葉を思い出す主人公のところなんて、泣いちゃいそうだった。

ミステリーとしても驚かされるし、スポ根小説としても主人公と先生との成長に心打たれる。
やっぱりミステリーってすごい!大賞は濃ゆい〜。
劇的な展開で一気読みしたくなる小説だった。
最近は同じ著者の悪辣弁護士・御子柴礼司シリーズを読んでいるが、こんな結末で次作が書かれるの、って思うし、その次作も濃厚で幸せな読書時間を過ごしている。
ありがとう中山七里先生〜!!! の気持ちです。


▼贖罪の奏鳴曲

▽読書記録

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