読書記録「正欲」
読んでいる間、実生活に影響を及ぼしてきた小説。
毎晩悪夢を見ていた。
身に覚えのない事件の犯人にされて、
ひたすら逃げまくるという夢。
読み終わったら悪夢を見なくなりました。
たまたまか……?
それくらい、無意識に考え込んでしまうような内容の作品だと思う。
最近はよく聞くようになった
「多様性」という言葉について。
誰だって他人のことなんて理解できないはずなのに、
どうして理解したつもりになってしまうんだろう。
この小説を読んで改めて思う。
自分の外のことを無意識に枠決めしてしまっているなあ、と反省する。
本作にて、浅井リョウ先生の長編小説を初めて読んだ。
「桐島、部活やめるってよ。」と「何者」の映画は観たことがあり、青春小説が得意な作家というイメージだった。
あと、「発注いただきました!」の文庫は本屋で気になって購入、読了。
短編ごとに感想戦として、作者本人の言葉で当時の感想が書かれており、その感想からちょっとおちゃらけた感じの明るそうな作者だな〜と思っていた。
なので、救いがある物語を書く作家なのだと思っていた。
表紙はカモが落下していく不穏をバリバリ主張しているが……。
正欲を性欲にかけて、青春な感じだろうかと思ったら全然違うの。
初めからほんと不穏が強いの。
この小説は、とあるニュースから始まる。
最初に、事件の概要を読んだときは不快感MAXである。
読み進めると印象が変わっていく。
冒頭の事件における容疑者が登場する。
「あれ、この人は冒頭の事件の人だけど……良い人っぽいな」と思いながら。
事件への最初に抱いた感情が、
私が無意識にしている差別であると気付かされる。
帯には「問題作か、傑作か」と書かれていた。
読み進めながら、問題作か? って首を傾げた。
読み終えて思う。問題作だ。
こう、重たくて、
最近の大きな事柄を抑えた作品なので、
あの、ハッピーエンドが読みたかったよ〜〜〜ああ〜〜辛い〜〜ってなっちまいました。
最初の方は、小学生の不登校YouTuberの話などが出てくるので、現実とリンクしてくる。ふふってなる。
読み進めると、YouTubeのコメント欄ってそんな使われ方もあるのか、とビックリしていたら……寝首を書かれたような気持ち。
現実とリンクしてくるから余計に辛かった。
実写映画化するそうで、最も気になるのが諸星くんがどう描かれるかです。
どんな映画になるのか全く知らないんですが、この気持ちのまま映画を観に行ったら泣かなくていいはずのシーンで泣いてしまうと思う。
▽読書記録
(2024.04追記)
読み終えてから、ずっとモヤモヤしていて……
ふと気づいた。
自分が「性」的に欲求を感じているものに対して、
公共の場でそれを表現しようとしているのは、
やっぱり良くないんじゃないか。
ハッピーエンドになってくれと思っていたけど
公共の場でしているのは、問題アリだと思う。
それをしていい、と認識しているあたりが。
マイノリティだから、してもOKではないと思う。
そうモヤッとしてしまう。