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失敗を恐れるのは「たくさん褒められた子」

一般的には「褒め」はいいことだという認識があるように思います。褒めれば自己肯定感が上がる。褒めれば自己重要感が高まる。だからたくさん褒めてあげることが大事、というように。

しかし、私は前々からこの考えに疑問を持ってきました。褒めることをこんなにも賞賛していいもんかと。

コロンビア大学のミューラーとデュエックによる研究では、褒め方によって子どもたちのチャレンジ心や態度がどのように変化するかを調べました。

実験の概要以下の通りです。

10歳から12歳までの子どもたち約400人に知能テスト(パズルのようなもの)を受けてもらいます。実際の点数は明かすことなく、「あなたの成績は100点満点中80点だ」と全員に伝える。
その後、子どもたちを3つのグループに分けます。そして、子どもたちに以下のようなコメントを伝えました。

グループA「頭がいいね」

グループB「よく努力したね」

グループC コメントなし

さらにその後、子どもたちに誰でも解けるようなやさしい問題と、難しい問題のどちらかを選んでもらい、チャレンジしてもらいました。

「褒める=能力を伸ばす」と考えると、「本当に頭がいいんだね」と褒められたグループAの子どもたちが自分の能力に自信を深め、難しい問題にチャレンジしそうだと推測できます。

しかし、結果は予想を覆すものでした。

グループAの「頭がいいね」と褒められた子たちが難しい課題を選ばなかった割合は実に65%。グループBの「よく努力したね」と褒められた子に関しては10%、グループCのコメントなしは45%。

つまり、能力や才能を褒められた子たちの大半は難しい課題にチャレンジしなくなったのです。

脳科学者の中野信子氏はこの結果について以下のようにコメントしています。

「『本当に頭がいいんだね』と褒められたグループAの子どもたちは、何も言われなかったグループCの子どもたちよりも、難しい課題を回避した子どもの割合が高くなりました。褒めることが自尊心を高めると信じてきた人々にとっては、衝撃的な結果であると思います。
『頭がいいね』と褒めたことによって過半数の65%がやさしいほうの課題を選び、難しい課題を避けたのです。『頭がいいね』と褒めることが、子どもたちから難しい課題をやろうとする気力を奪い、より良い成績を大人たちに確実に見せられる、やさしい課題を選択させるという圧力として働いていたと考えることができます」

世間で”良い”と言われることが本当に良いことなのか、一人ひとりがしっかり考える必要があります。世の中は多数決では決められないことの方が多い。

子どもたちの可能性を潰す社会にならぬよう、私たち大人が客観的視点に立って物事を判断しなければなりません。

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