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天井付けの照明器具を外す_太陽に合わせて暮らす(4/8)

Photo by Sixteen Miles Out on Unsplash

 建築や空間デザインに携わっていると、日本の家屋のあかりの使い方というか、照明空間の作り方というかについては、高度成長期にスタンダードとして広まったものが未だに有難がられて広まって定着していることへの驚きの方が強い。なぜ煌々と蛍光灯(いまではLED)を天井に付けるのだろう。ちょっとインテリアへの意識が高まると、間接照明や多灯照明、タスクライトなどの効果的な使い方を知ることができるはずなのに、なかなかそういう方向がメインどころとはならない。

 バーやカフェなどのお店に行くと、夜は照明をグッと落として、雰囲気のある空間をつくっている。みんなそこに行くと、ほの暗い空間の居心地の良さに気付くものの、自宅では煌々と明かりを付けるのはどうしてだろう?

 ただ、ここでは疑問は置いておいて、結論を言えば、うちには部屋の真ん中の天井に付けるペンダント照明やシーリング照明の類は付けていない。これにはひとつエピソードがあって、部屋を借りる前の下見の時に、和室と洋室に、それぞれ、ペンダント照明が付けてあったが、それらを撤去して、他の空き室で活用してもらうよう交渉した経緯がある。自分で使うなら自分でセレクトしたものを使いたかったというのもあるが、そもそも天井付けの照明器具は使わなくても済むことは分かっていたからだ。

 では、日没後の部屋の明かりをどうしているのか、というと、テーブルにセットしたアーム付きのデスクライトに40Wの白熱球を付けて、調光スイッチを噛ませて、5W程度から20W程度に落した光源を天井や壁面のコーナーに向けて間接照明として部屋全体をぼんやり照らすようにしている。

 2LDKのプランであるが、それぞれの部屋を仕切る引き戸は取り外してあり、結局は大きなワンルームとして使っているので、ぼんやりあかりが一つあれば、起きている間、ほとんどそれで賄えてしまう。

 確かに、暗さに慣れる必要はあると思う。そこは暮らす人の美意識というか、考え方に寄ると思うが、僕は夜には夜の時間があると考えている。明るい光が必要なことは昼のうちにやればいい。どうしても本が読みたければ、タスクライトで別のスタンドの下で読む。暗くなって料理をするときにはその時だけ、キッチンのライトを付ける。蝋燭もよく使う。もう15年以上前に買った、直径14センチ、高さ20センチほどの大きな蝋燭を灯す。揺れる炎は確かに癒し効果がある。寝る前の1時間ほど、蝋燭の明かりで時間を過ごすのは悪くない。

 つまり、ウチの夜はひっそりとしたバーのような明るさが常である。それで充分。
 

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