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動画投稿サイトでよく見かける無限和が負の値になるやつ

こんにちは。Mai.です。今回は動画投稿サイトでみかける

1+2+3+4+5+…=-1/12

とかいうやつをざっくり解説していこうと思います。

自然数を全部足したら-1/12になるっていうやつですね。えっ…、自然数足していけば無限に発散するでしょ普通…。ってなる人がほとんどだと思います。

ですが、背伸びした理系の人や数学科の学生ならこの式の意味まで知っているかもしれませんね。今回はこの等式について書いていきます。

そもそもこの式って正しいの?

まずはそもそもこの式が正しいのかどうかということを先に述べておきます。結論、この式は

正しいです

ただ、この式の「正しい」とはおそらく皆さんが思う「正しい」とはちょっと違うかもしれません。「この式は正しい」ということを正確に記述すると

「左辺の式(自然数の和)を右辺の値(-1/12)と等号記号で結ぶことは数学的には何も矛盾がない」

です。つまり、通常の意味ではなく、別の解釈によって数値を割り当てた。ということです。

数の概念を広げる

まだ皆さんの中には「???」がたくさんあると思います。ここで、中学一年生で学ぶ負の数について考えます。

小学生の算数の問題で次のようなものが出たら皆さんはどのように答えるでしょうか?

1-2=?

そう。答えられないですよね。1より大きい数である2を1から引くことなんてできないのです。そのように当時は教えられた人も少なくないと思います。ですが、これが中学一年生の数学になると

1-2=-1

と負の数という新しい数の概念を作り出し、答えを(無理に)書くことになるのです。

話はそれますが、この負の数の概念が全く理解できず、中学一年生の初回の数学のテストで、平均点85点に対して45点をとったのは私です。ほんとに数学が嫌いでした…。

さて、ここでお話ししたいことは、負の数という新しい数の概念を導入することにより、無意味に見える計算式に意味のある数を与えた。ということです。負の数の概念を勝手に作り出したかのように思えますが、小学生で学んだ通常の四則演算とも何も矛盾が生じません

このように、既存の概念を壊さないまま、数の概念を拡張するということを中学生以来無意識に行ってきているのです。

4÷2はできるけど1÷3はできないから1/3という分数を当てはめた。2乗して4になる数は2と-2だとわかるけど、2乗して2になる数は(自然数の範囲で)ないから、√2という新しい数に当てはめた。

どれも勝手に作り出したかのように思えますが、今までにあった数と何も矛盾しませんね。これを先程の無限和に対して考えます。

つまり、1+2+3+4+5+…という一見無意味な数式に、意味のある数を当てはめるのです

複素解析学をざっくり知ろう

この不思議な等式は、理系大学生2,3年生が学ぶ複素解析学という分野で知ることができます。

複素解析学とは、端的に言えば、複素数の世界で微分・積分を研究する分野です。高校生で学ぶ微分・積分は実数の範囲で行いますが、複素解析学では複素数にまで拡張します。

この複素数という数字も、新しい数の概念ですね。複素数の微分・積分をするということは、複素数の世界で極限を考えることに他なりません。複素数で極限を考えるとは、実数の世界で極限を考えるのとはわけが違うのです。

複素数の世界では、極限が定まるということがめちゃくちゃに厳しい条件なので、色々な良い関数の性質が導けます。

実数において微分・積分ができる関数は良い関数と呼べば、複素数において微分・積分ができる関数は超絶めっちゃ良い関数と呼べるでしょう。この超絶めっちゃ良い関数を使うことで冒頭にある不思議な等式が得られます。

解析接続をざっくり知ろう

さて、ここでは複素解析学で学ぶ解析接続と呼ばれるものについてざっくりお話をします。

解析接続を簡単に言いますと「関数が使える範囲を拡張しましょう。」ということになります。イメージは、関数のグラフを引き延ばすということになります。下の図を見てください。

この図の関数y=f(x)は本来黒色の部分までしか定義されていないとします。ですが、何らかの計算により赤や青のようなグラフにまで拡張できることがあります。これが、関数が使える範囲を拡張するということです。

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ただし、どのように拡張してもいいわけではありません。先ほど現れた、良い関数という状態を保ったまま拡張することが条件になります。つまり、微分が上手くできるまま拡張するということです。グラフがつながるところが微分可能(滑らか)でなければならないということですね。

上記の図は実数の関数のグラフであるため、拡張の仕方は(赤のグラフや青のグラフなど)無数に存在します。しかし、複素数の世界になるとこれが一変します。

複素数の微分ができるという状態を保ったまま、関数のグラフの拡張の仕方はあれば1通りしかないということが示されています(一致の定理と言います)。

実は、負の数や分数、複素数といった新しい数の概念を拡張するということがこの解析接続と似ています。例えば、1-2の答えは-1のただ1通りしかありませんね。

このように、みんなが計算してみんなが同じ答えにたどり着かなければそれは拡張できたとは言い難いのです。

この一致の定理を用いることで、冒頭の等式が証明できます。数の使える範囲を解析接続によって広げるのです。これにより、あの無限和に-1/12という値を割り振ることは何も矛盾がなく、数学の世界では誰が計算してもあの値になる。となります。

ただし、解析接続をしたからといって、無限和が収束することは意味していません。大事なことは、値が無限になるものに有限の値を割り振るとするならば、これしかないだろう。という考え方です。

重ね重ね言いますが、収束はしていません。なので等号記号で結ぶということも誤解を招かないように注意が必要なのです。

他にどんな等式が導かれるか?

この解析接続という複素解析学の概念を学ぶと、次のような等式を導くことができます。

1+1+1+1+1+…=-0.5

1+4+9+16+25+36+…=0

1+2+4+8+16+…=-1

もう一度述べておきますが、無限和が収束するとは言っていません。無限和の値を割り振るとすれば、このようになるという話です。

ちなみに、高校三年生の数学Ⅲで学ぶ無限等比級数では、公比の絶対値が1未満の場合のみで限定されていますが、解析接続という概念を与えれば公比の絶対値が1より大きい数でも公式を適用することが可能です。もちろん、収束するわけではないですよ。つまり、

1+r+r^2+r^3+r^4+…=1/(1-r)

という公式に、r=2を代入して

1+2+4+8+16+…=-1

という上記の現れた等式を作ることは複素解析学の立場から言えば何も矛盾していないのです(テストで書いてはだめですよ、間違いなく減点されます)。

さらに、物理学でこの解析接続による無限和の値が重要になり、実験結果として現れていることもあるらしいです。「カシミール効果」と呼ばれるものが有名らしいですが、私は物理の人ではないのでその解説は詳しい人にお願いしたいですね。

まとめ

今回は数学の神秘的な等式についてざっくりと解説していきました。ほとんどわからないことだらけではあると思います。それでも興味が湧いたら是非学んでみてください。「複素解析学」「複素関数論」などで検索するとたくさんの文献が出てくると思います。

また

「この等式を知っていたから何になるというのだ」

という質問に対しては

「何にもなりません」

と答えます。事実だけ知っていても何も意味を持ちません

しかし、すべての発散する和を無限とするのではなく、複素数という広い視野で物事を見ることで値を割り振ることができるということが大事なのです。つまり、一見解決ができなさそうなものに対して、俯瞰して眺めることで解決できる事例があるということを学ぶことが大事なのです。

数学を学ぶ意味というものがこの解析接続にはあると思います。嫌われがちな数学ですが、学ぶことで活用できる場面は他の分野と引けを取らないくらい多いんじゃないかなって個人的には思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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