『新世界より』
ドヴォルザーク作曲の交響曲の方も素晴らしいですが、今回紹介する『新世界より』は、貴志祐介作品の方です。
今まで読んだ本の中でトップクラスに面白かったものなので、是非紹介させていただきたいと思います。
私は以前、『黒い家』に始まり、貴志祐介作品にかなり熱中していた時期がありました。今回紹介する『新世界より』は、私にとってはかなり衝撃的な作品で、上・中・下巻の3冊を気付けば読み終わっていたというのは良い思い出です。
皆さんにも私と同じ衝撃を味わっていただきたいので、内容についての話は控えさせていただきます。
是非、先が気になって仕方がなくなり、本を読むのをやめられなくなる感覚を味わってください。
この本ですが、とにかく緻密に作り上げられています。上巻は特に、説明部分や、何を言いたいのかが分かりにくい部分が多くなりますし、一見すると平和な世界での少年少女の冒険活劇のように思われますが、(2回目以降は特に分かりやすいですが)所々に不穏さが散りばめられています。
仄暗い部分を内包しながら平和に進んでいく物語ですが、どんどんと加速していきます。これほど加速が止まらなかった本も珍しいです。
最初に出てくる丁寧な舞台説明もあり、私達が住むこの世界とはかけ離れた状況であるにも関わらず、自分がそこにいるのではないのかという程に入り込んでしまいます。仕方のないことだとは思いますが、舞台説明は少し多いなと感じてしまいます。それを越えれば、緊迫感あふれる怒涛の展開が待っていますので、じっくりと読みましょう。
上巻の後半からはもう止まりません。
無理です。止められません。
しかもそれでいて、中巻はさらに止められなくなり、
下巻はそれをさらに上回ります。
どうにか止めるなら上巻までです。
思わず体に力が入ってしまうような展開の数々に、読み終わったあとは満足感はもちろん、心地良い疲労感にも襲われます。
歪められた情報。
頑強なようで驚くほどに脆い足枷。
徐々に見え始める「新世界」の本当の姿。
貴志祐介ワールドの凄まじさを余すところなく感じられる作品となっています。かなり長いですが、一切の無駄もない名作です。
この状況を利用して、ぜひ読んでみましょう。
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