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「発掘された日本列島2022」展レポ(縄文のみ)

現在、埼玉県立歴史と民俗の博物館で開催中の全国巡回展「発掘された日本列島」展。 毎年恒例のこの展示ですが、東京でいつも会場になっていた江戸東京博物館が休館のため関東での展示はここ埼玉で。早速みに行ってきましたのでその様子を紹介します。ただし縄文のみ!

ちなみに本展の日程は
2022年6月11日(土)〜7月18日(月)埼玉県立歴史と民俗の博物館
2022年7月30日(土)〜9月4日(日)だて歴史文化ミュージアム(北海道)
2022年9月17日(土)〜10月23日(日)石巻市博物館(宮城)
2022年11月5日(土)〜12月11日(日)宮崎県総合博物館
2023年1月7日(土)〜2月12日(日)なら歴史芸術文化村
行けるときに行ける場所に行ってみよう!



今回の列島展の顔はなんと長野県の井戸尻考古館の双眼五重深鉢。この強烈で圧倒的なデザインの土器が全国を巡回するのは井戸尻ファンにとっては痛快でしかない。関東の人は絶対に見に行ったほうが良い。
土器にとっての口縁部を何重にも積み重ねた類を見ないデザインはさながら土器の五重の塔。一段一段に刻まれた図像があなたを縄文の深い沼に引き摺り込む。

井戸尻考古館からは他にもヤバいメンバーがやってきている。このユニークな有孔鍔付もキャラバン隊の一員だ。ニックネームは「無限なんでやねん」(勝手にそう呼んでいる)。

このパネル文土器も全国の人たちに見てほしい。縦に5分割された文様帯はすべて違う形のパネル文。どの角度から見ても違う表情!

これもすごかった。上下で世界感がまったく変わる。九兵衛尾根遺跡の逸品。上段のフォーマルな佇まいに下段のヘンテコな生物。君は理解できるか? 僕はできない。 まるで土器の表皮を剥いだら怪しい生物が蠢いているかのような…土器は生きている。

井戸尻から列島展というキャラバンに参加している土器は全部必見のモノ。中部高地の空気をまとったままここにやってきている。欠き取られた人面把手とか、あまり見れるものでは無い。

新発見考古速報コーナー

ここからは新発見考古速報コーナー、旧石器から近代までの最新の発掘された成果が展示されています。 縄文からはまず千葉県の取掛西貝塚。ここは早期前葉という超早い段階での貝塚遺跡。 ちなみに毎年恒例の遺跡川柳はこんな感じ。毎年恒例であんまり上手くない。

取掛西貝塚の展示で目につくのはこのイノシシの頭骨。焼かれて、フォーメーションも組まれて、思わず「呪術!」と小さく叫んでしまった。縄文早期前葉の縄文人は頭骨に何を祈ったのか…。

この遺跡の土器は何気に注目だ。この井草式。早期の初め頃に花開いた関東撚糸文系の土器。どこまで復元なのか、見た目でも完形のものはすごく貴重だ。このなんでもない感じに縄文早期の「生活感」が可視化されて、ちょっと目頭が熱くなる。この頃はまだ土器に過剰な期待を込めていなかったのだろう。

この後、さらに進むと撚糸文も無くなってほぼ無文の土器になる。上の東山式はその直前。さらになんでもない。なんでもないことがこの土器の特徴でもある。

そしてごくごく一部の縄文好きから熱い視線を注がれているヤバい土器も展示されている。東山式と同じくらいの時代、その名も天矢場式。特徴は「土器の表面の擦過痕」が特徴と、完璧にヤバい特徴を持っている。名前も天ヤバ式。これがもしかしたら最初で最後の全国デビューかもしれない。

新発見考古速報の縄文遺跡はもう一つ、岩手県宿戸遺跡。縄文早期中葉ここは石斧作りのムラの遺跡でたくさんの石斧とその未製品、石斧を作るたたき石が見つかっています。石斧作りのムラってのもあったのかと縄文時代の分業体制についても思いを馳せる。

石斧のムラの資料で目をひいたのがこの尖頭器(槍先に付ける石器)。木葉形とはよく言ったもので、枯れ葉が何枚か落ちているかのような薄く繊細な石器たち。これ実用性あるのかなぁ。タヌキみたいな色合いのやつがめちゃかわいい。

セミみたいなおもろい装飾品や石に渦巻きを刻んだ良い感じのものも出てる。

本展の終わりに巡回地域の特別展示として埼玉の遺跡の資料も。最近発掘の真福寺貝塚のミミヅク土偶が見れる。これ生でみると思っているよりもデカい。今回土偶はこれくらい。別の会場では別の資料がみれるだろう。



当然だけど「発掘された日本列島」展は縄文だけではない。旧石器に弥生、古墳、中世と最近の発掘が見れる展示だ。 埼玉での展示は7/18まで、その後は北海道伊達市、宮城県石巻市、宮城、奈良と続く。お近くの会場にぜひ。井戸尻の土器を見るチャンスでもあるよ!

ミュージアムショップでは縄文ZINEの本、『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る』もおいてもらっている。こちらもぜひ!


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