メルカリで人のものを売るな
母がメルカリ出品にハマっている。20~30年も暮らしていると家には色々と要らないモノが溜まってくるものであり、それらを片づけるついでに小銭稼ぎが出来ることが楽しくて仕方ないようだ。メルカリを教えた私は、発送までの手順の面倒くささに早々にリタイアしてしまったが、その辺りも苦にならないのだろう。片づけることが苦手な人が多い家族の中で断捨離を請け負ってくれることはありがたいし、自分の要らない服やグッズを渡すと売って換金してくれるのも大変助かる。
だが、「売ってほしい」と頼んでいないモノまで売られてしまうという弊害も発生している。「しばらく着ていなさそうだったから」と、3000円で買ったTシャツを400円で売り飛ばされてしまった。また、友人からお土産で貰ったご当地フリスクを「珍しくて売れそうだったから」と売られてしまったこともある。何かを貰って帰って来ると、反射的に「おかえり」よりも「それ売って良い?」が母の口から零れ出てくる。『トイ・ストーリー3』で号泣した私としては、昔大好きだったおもちゃ達を簡単に売られてしまうのも解せない所だ。
これは悲しくも400円で売られてしまった私のTシャツ
また、母自身が貰ったプレゼントを「要らないから」とメルカリで即売却しようとしていたこともあった。流石に私を含む家族は反対したが、彼女は最後まで迷っていた。倫理感と数千円の合間に揺れる表情は、非常に醜くて恐怖を感じた。そのくせ、メルカリでの評価は異常に気にする。購入者から低評価を貰った時は、1日中塞ぎこんでいた。メルカリでの評価を気にする前に、プレゼントを売られた人の気持ちを考えた方が良いのではないか。
このままでは、いつか朝目覚めた時、部屋には玩具も家具も何もなくなっており、母親が真っ白い部屋の中で次に出品するものを探している日も近いだろう。
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こんなことを言っているが、私は母親がとても好きだ。私がどんな話をしてもまず否定せず向き合ってくれ、非常に尊敬している。
思うに、相手の顔が見えないインターネットが、彼女を「妖怪メルカリうりうりばばあ」に仕立ててしまうのだろう。おそらく彼女も直のフリマでは友人からのプレゼントを売らない。それは商品を購入する相手の瞳に、プレゼントを貰った自分の姿を映しとるからだ。こう考えると、インターネットが人の感傷的・倫理的な思考をどのように「濁らせるか」が、私には彼女を通じて理解される。特にそれは、非インターネットネイティブ世代には強い効果をもたらしてしまう。
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