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イタリアから帰れなくてアラブに行った話(アラブ編①)

アラブ首長国連邦に行く予定などなかったのに、たどり着いてしまった。アブダビに。

自分の人生で中東に降り立つことなんてないと思っていたし、トランジットとは言えアラブにいることがまだ信じられない。

アブダビの時間で朝の6時に到着。飛行機が出発するのは22時なので、結構長いトランジットである。

まず空港に着いた瞬間に驚いたのは一瞬でWi-Fiが繋がったことだ。ローマの空港のWi-Fiは言っちゃ悪いが本当にポンコツWi-Fiで、使えると言うなというほど繋がらなかった。それに対し、アブダビの空港はあっという間に繋がったのだ。お金持ちの国。感動。

せっかくだから空港を出て少し外を見たいと思った。まず入国審査に並ぶのだが、びっっっっっくりするくらいの長蛇の列だった。しかも全然進まない。

この時期(2016年3月)はテロが様々な所で起きていて、私たちがイタリアにいた時にもブリュッセルでテロが起きた。
そんな時期だからこそどの国も緊張感が走っていたし、入国審査や荷物検査が特に厳しかった。

ようやく私の順番が来た。審査官の男は険しい顔で私の顔と飛行機のチケットを見ながら「乗り継ぎのくせになんで外に出るの?」と聞いてきた。「観光したいから」と答えて何度かやりとりをした後、まさかの「No」と言われてしまったのだ。

Nも同じように出国を許されなかった。
「なんで?」「意味がわからない」と日本語で文句を言いながらさっき通った道を戻ろうとすると、美しいアラブ人の女性スタッフが「どうしたの?」と声をかけてくれた。
「出国したかったのにさせてもらえなかったの」と答えると、逆に「どうして?」と聞かれたので「知らん。」と答えた。こっちが聞きたいわ。

するとアラブ美女はヒールの音をカツンカツン言わせながら私を担当した入国審査官の男の方に向かい、アラビア語で勢いよくまくし立て始めた。今審査中だった人も割り込まれてビックリだろう。

さっき私に険しい顔を向けてきたあの男は遠くから見てもわかるくらいタジタジしているし、
入国審査官って立場的にそんな感じなの?と思ったがとりあえず遠くから見ていると、話を終えたアラブ美女が「入国していいよ」と言った。
良いんだ?!

入国審査官の判断ではない気がするが、とにかく入国できた。
ありがとうアラブ美女さん。大好きです。

とりあえず何も調べていなかった私たちは持っていたユーロ札を全てディルハムに替えて、一息つくためにカフェに入って朝食を食べた。

普通に美味い。
そもそもアブダビに行くことが昨日決まったようなものだから、ほぼ下調べをしていない状況だ。まずは調べよう。
物価、情勢、観光地、自慢じゃないがなんにも知らない。

観光地を調べると、シェイク・ザイード・モスクというものが空港からタクシーで行ける距離であるらしい。私はその時初めてモスクというものを知ったし、写真で見るからに綺麗そう。ここに行こうと決めた。

アラブでのタクシー事情を入念に調べる。乗り継ぎを失敗した私たちは冗談抜きでお金がないし、ここでミスをしたら空港に戻ることも出来なくなるかもしれない。

するとここで「タクシーに乗ったら伝えた目的地を無視され、砂漠の真ん中まで連れて行かれてお金をぶん取られた後そのまま置き去りにされた人がいるらしい」という何とも恐ろしい記事を見てしまった。

怯えた。

今となって色々知ればとても安全な国なのだが、当時中東というのはどうしても怖いイメージがあったし、タクシーなんていくらでもどうにでも出来る。ぼったくられたり、地の果てまで連れて行かれたり、色んな可能性を考えると恐ろしくなった。

そして私たちは作戦を考えた。

「最初からこれしかお金を持っていない程でタクシーに乗ろう」

お金が無いと最初から知っていればそもそもお金にまつわる事件は起きない(はず)。とにかく、ネットで調べたモスクまで行けるであろう最低限のディルハム札だけを見せて、「これで行かせてくれないなら乗らない」と言い張ろう、という作戦だ。

こうして私たちはモスクに向かおうとタクシー乗り場に向かった。

今思えばそれが私たちとモスクの出会いで、以降、モスクの魅力に取り憑かれることになる。

次に続く。

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