見出し画像

今の私には、40平米2DKがよく似合う。

2ヶ月ぶりに実家に帰った。

家を出たこと自体が初めてだったので、「実家に帰る」というイベントは人生初!

実家の最寄駅に降り立つと、謎の緊張感があった。

私はこれから実家に帰るのか、実家とか言えちゃう立場なのか…と、何故かソワソワした。


私の実家は電車に10分乗れば都内に行けるような場所が最寄駅で、人が住むにはちょうどいい栄え具合。

東京駅など主要なデカい駅にも電車で30分くらいで行けるし、不便を感じたことも無いし、今住んでいる場所よりもよっぽど良い立地だと思う。


新しいお店出来てるかなとか、街変わったかなとか、そんなことを思いながら家までの10分を歩いたけれど、「そりゃ潰れますわな」と思えるくらいボロかった近所のアパートが跡形もなく無くなっていた位だった。

2ヶ月なんて、何も変わらない。そりゃあそんなもんだけど。


家に帰るとおばあちゃんがリビングのソファに1人どっしりと座っていた。おかえり〜と微笑んでくれる。

リビングにいつもおらず自分の部屋大好きな引きこもりニートばあちゃんが、「honoちゃんが家に帰ってきた時誰もいないと悲しいと思って」とリビングにいてくれたらしい。

おばあちゃんのそういうところが好きだったことを思い出した。


実家は木造の一軒家。天井の高いデカめのリビングと、他に部屋が4つもある。

それに比べて今の家は鉄骨のマンション。2DKでリビングは7.5畳の中にキッチンが込まれている。2人暮らし。広くも狭くもない。


実家はひいひいおじいちゃんの代から住んでいた場所だから、土地代を払わなくていいということで父親が10年以上前にリフォームした。

私が小学生の時なんかは、ひいおじいちゃんの代も含め1番多い時は7人で住んでいたけれど、人が増えたり減ったりして、私が出て行った今は4人しか住んでいない。

こんなに広いと4人ではスペースも余る。必要以上にデカいこの家に、2ヶ月前まで住んでいたことを既に不思議に思った。



リビングのテレビがものすごく大きい。「テレビ変えたの?」と聞いたら、変えてないよ、と返事が来て驚いた。

今の家では、パソコン用のモニターでテレビを見ている。小さいけれど、7.5畳のリビングには割とちょうど良くてなんの文句もない。

小さなテレビに慣れ過ぎて、実家のテレビは映画館かよと思ってしまった。素敵だけど、でかい、こんなにデカく無くても…とか思った。

父も母も妹も、何も変わらなかった。
ここに住んでいた時と同じテンションでおかえり、と言って、近況を話す。

今の家では、毎日彼と今日あったことを話す。お互い帰りが遅くても、30分くらいは時間を作ってなんでも話している。


洗面所が異常に広く感じた。私が出て行って荷物が減ったのもあるけれど、それにしてもこんなに広かったっけ?と思う。同じくお風呂も。

ほぼ手ぶらで来た私が悪いのだけれども、母が使う化粧水や乳液は私好みでは無くて、シャンプーも髪に合っていない気がした。やっぱりいつも使ってるやつが好きだ、そりゃあそう。

1番多くの時間を過ごしていた自分の部屋は、出て行った日よりも遥かに片づけられていて、物悲しく感じた。部屋とは到底思えない、スッキリ感にそわそわする。

彼とダブルベッドで寝るようになった今の私には、シングルベットはびっくりするほど小さく感じた。枕も今の家に持って行ってしまったから、当たり前に合わない。


ふと気付く。

ああ、私にとってこの家は、自分の生活をする場所ではなくなってしまったんだ。

この2ヶ月で、こんなに短い期間で、私にとってこの場所は本拠地では無くなってしまったのだ。


今の私には、7.5畳のリビングが落ち着く。

テレビと呼んでいる小さなモニターが落ち着く。

狭い洗面所には手の届く範囲に好きなスキンケアアイテム全てが揃っていて快適。

なんやかんや狭いお風呂にも愛着が湧いてきたし、シャンプーもクレンジングもお気に入りが良い。

掃除も料理も洗濯も、自分たちのタイミングでやるのに慣れてしまった。

ベッドはシングルも贅沢だけど、ダブルで彼と身を寄せ合って寝るのが最高に幸せ。


そう思うほどに、気づかないうちに私の生活リズムは彼との二人暮らしに染まっていた。

実家は実家で便利だけれど、今の私にとって1番落ち着く場所ではない。既に私は、2ヶ月前の私では無かったのだ。


今の私には、実家暮らしが似合わない。

40平米2DKの、マンション暮らしが似合う女になってしまったのだ。

それがなんだか、誇らしいような悲しいような。

20年以上の生活が、こんなに簡単に手放せるなんて。

そんな不思議な気持ちを抱えながら、今日はシングルベッドで寝るのだ。
どうせぐっすり眠れてしまうのが少し憎い。




#日記 #実家 #コラム #エッセイ

この記事が参加している募集

#ふるさとを語ろう

13,664件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?