高齢化社会到来 サービスを維持するには、おもてなしの断捨離が必要

労働力に比して過剰なサービス

一流の店では500円の物を買っても10000円の物を買っても対応は変わらない。500円の物でも包んで下さいといえば包んでくれるし、返品やクレームにも応じてくれるし、お店の外まで送ってくれることもある。

「膝の裏がはれている、虫刺されかもしれないけれど。」そういった訴えでもお医者さんは丁寧に見て、看護婦に指示し、薬を処方することになる。

その裏では少子化や子育て世代の核家族化が進み、就業時間が減っている。

必須ではないサービス、あるいは優先度の低いサービスを誰もが断れない中で、より少ない人数で現場のルーティーンを切り盛りする従業員に負担がかかり、イノベーティブな活動にかける時間などなくなっていく。

日本の労働生産性(労働時間1時間あたりのGDP)は平均に比べても低い

サービスを切り下げるのは難しい

とはいっても

①サービスを切り下げると、おもてなしを期待している顧客からサービスが悪くなったとクレームが出ることになる。

②サービスの質だけ切り下げると、おもてなしを教育されてきた従業員のストレスになってしまう。

働く人が減る中で、今のままのサービス水準をそのままにすれば、現場が疲労し、育児や介護と両立できなくなった従業員が辞め、少子化で次の採用はできず、残された従業員の負担が増し、何かが起これば事業の中断という最悪の事態に陥る。そのときに慌てて手を打とうとしても後の祭りだ。

10年後の日本では、今より労働時間が少ないことは明らかだ。少子化に加え、公の介護サービスが切り下げられていく中で、現役世代の大半が両親の介護に時間を割かなければならなくなるためだ(終わりのない、そして場所を選べない介護は時に子育てよりも大変である)。

減る一方の労働力で事業を維持するには、残された労働時間を何に優先的にあてるべきかマネジメント側で見極める必要がある。サービスやカスタマイズを断捨離して絞り(もちろんビジネスの形態にもよるだろう)、負担の大きい顧客対応の一部を従業員からシステムに任せたりしていくなどである。

期待していた従業員が無期限の時短になったときでも、新卒採用がとれなくなったときでも、事業の根幹に欠かせないサービスがまわるようにするにはどうすべきか。先手を打って過剰なサービスを外し、顧客のおもてなしへの期待値も少しずつ下げておく。

おもてなしの断捨離と消費者・顧客側の覚悟

土日の配達の中止、予約の自動音声対応、セルフレジ、営業時間の短縮。今をピークに私達の生活はこれからどんどん不便になる。これは、高齢化社会で、就業時間の総和が減ってもサービスが維持されるために通らざるを得ない道だ。従業員の限界を超えて社会に必要なサービスが突然止まるような急激な変化は顧客にとっても不利益になる。少し前から緩やかな変化を。消費者側でも、おもてなしがなくなったと批判するのではなく、受け止め方を変えていかなければならないだろう。