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人生100年時代に「脳」は耐えられるのか?

こんにちは。うつ病休職エンジニアの三十郎です。

物には耐用年数があります。当然、私たちの体も物ですので耐用年数があります。しかし今、医学の急速な進歩により、肉体の耐用年数が100年を超えようとしています。いわゆる「人生100年時代」です。

何故、ここまで寿命を大きく延ばせるのかというと、寿命の最大の難敵、ガンが撲滅される日が近づいているからです。そのほか血管の老朽化が死因ある心臓病や脳溢血も血管のメンテナンス医療の進歩で発症を遅らせる可能性が大きくなっています。

しかし、肉体の寿命が延びても、脳の寿命は延ばせません。いわゆる「ボケ」を医学的に解決できるのでしょうか?

1.人類史と寿命

我々、ホモサピエンスは、20万年前に地上に出現しました。そのときは、アフリカのサバンナで暮らす類人猿の一種で、ライオンなどの捕食者に怯えて暮らす、「被食者」に過ぎませんでした。

その後、一部がアフリカからアジア、ヨーロッパへと居住地を広げてゆきます。狩りの技術も進歩し、「捕食者」側に回ることができました。しかし、この時代においても、成人に達することができた者は、生まれた者の半数以下、成人後の寿命も30代だったと推測されます。命を落とす危険と背中合わせの生活でした。

その後の「農業革命」により、飢え死にの心配が減り、寿命は50才前後に延びます。「人間50年」時代の到来です。

近代になり、科学的な医学が普及し始めたことにより、寿命は飛躍的に伸びます。統計データとして、厚労省のHPに戦後の平均余命が載っていたので下記のグラフにしました。

平均寿命

戦後の急激な伸びは、敗戦から復興したのが原因だと思います。その後、医療の進歩もあり着実に伸びています。これを、そのままの傾斜で伸ばしてゆくと、人生100年時代は、本当に到来しそうです。

2.健康寿命を考える

一方で気がかりなのは、健康寿命が延びるのかです。健康寿命とは、他人の助けを必要とせず自立して生活できる寿命です。要支援者、要介護者になるまでの年齢と考えて下さい。この年齢以降は、家族や行政の支援が無いと生きられません。下のグラフ(厚労省発行)の青い線が平均寿命、赤い線が平均健康寿命です。死ぬまでに男性だと約9年、女性だと約12年、誰かの支援を必要とします。

健康寿命

「ピンピンコロリ」が目標と言う老人は多いですが、簡単にコロリと死なせてくれるほど、神様に慈悲はありません。健康寿命を如何に平均寿命まで近づけるか? 医学の大きな命題です。お年寄りになると、「誰にも迷惑をかけたくない」と健康志向の生活になりますが、それでも、これが実態なのです。要支援者、要介護者が増えた原因は、(1)認知症が増えた、(2)昔なら死亡していた病が治療可能となり半病人が増えた、(3)転倒などで骨折し寝たきりとなった、が多いです。

(2)は、原因となる病気の発症を遅らせること、肉体に負担が残らない手術法の進歩で減らせます。(3)は、3Dプリント技術の進歩と各個人にあった人工骨を移植することで減らせる可能性があります。しかし、(1)は増える一方なのが現実です。現にアメリカでは死因の2位がアルツハイマー型認知症です。(注:欧米ではガンを部位別の病気としてカウントするため、日本のように1位にはなりにくいです。肺炎と肝炎を内臓炎と一括りにしないのと同様の考えです。)

ちなみに認知症は、どのような最期を迎えるのかご存じですか? 答えは「餓死」が一番多いそうです。「食べる」行為さえ、分からなくなるためです。「死の恐怖」も分からないかもしれません。

3.認知症を減らすには?

認知症になりやすいタイプは、いわゆるボーッと生きている人が多いのですが、頭を使うような生活習慣に変えれば劇的に減るような簡単なものではありません。

脳細胞は、30代から少しずつ減り始め、65才くらいで明らかな萎縮が認められます。この現象は老化ですので、簡単に止められるものではありません。でも脳が萎縮するからと言って、全員が認知症になるわけでもありません。先天的な体質、これまでの生活習慣、周りとのコミュニケーションの減少(頭を使わない生活)など複合的要因が絡んでいます。

一番多いアルツハイマー型認知症ならば、アミロイドβが原因物質かも知れないとの研究が進んでいます。しかし、まだ結論が出ていないこと、原因であるとしてもアミロイドβを減らす薬の開発が進んでいないので、今のところ打つ手が無しです。

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4.人は生きてはいけない寿命まで到達したのか?

これは、そうかもしれません。ホモサピエンスの体は自然界では40才までで設計されています。しかし、ホモサピエンスは、その卓越した知性により、自然界の法則を乗り越え、長寿を手にしました。

老化現象を遅らせる知恵も身につけましたが、寿命の伸張には追いつかず、認知症という逃れることができない厄介ごとを背負うことになりました。

認知症は、アルツハイマー型だけではありません。突発性認知症もあるのです。アルツハイマーの父を介護していた母が発症しました。原因は不明。幸い、医療技師の妹が同居していたから最悪の事態は免れました。

一人暮らしで発症したら? 老老介護で発症したら?

認知症は、100人いれば100人とも振る舞いが異なる、マニュアルでは対応しきれない病気です。認知症の方にも人間としての尊厳が残っています。私たちは、どこへ向かえば良いのでしょう?

少子、超高齢化社会の答え探しは、始まったばかりです。


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