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蜃気楼のように浮かぶ、中東の街

2015年2月。
カタールは、ドーハ空港。

ヨーロッパへの乗り換えで、初めて降り立った中東の地。直行便より料金が安く、ドーハを経由するカタール航空の便になったのだ。

乗り換えまで数時間あった。これからヨーロッパでの旅が待っているというのに、乗継便までの間にあわよくば中東の街もささっと周れたりして、という考えが頭に浮かぶ。

だがこれも一瞬のこと。実際には空港の外に出て帰ってくる程の時間もなく、飛行機での疲れもあったので、その時間は空港で過ごすことにした。

空港の待ち合いベンチからは、中東の街が遠くに見えた。今まで中東に足を踏み入れたこともなく、もちろん自分の目で見たこともない。今までテレビなどでしか見たことがなかった映像が、今や自分の十数キロ先に現れているのだ。

何だか蜃気楼を見ているような気分だった。遠くに中東の街が浮かび上がるが、砂漠からの砂の影響か靄がかかって見え、実在していないかの様にも見える。

空港内はカタールの豊かさを表す様に、豪華な内装だった。屋内にスポーツカーが展示され、天井が高く高級感のある内装。トーブ(頭を覆い、首から足まである白の民族衣装)姿の男性が行き交い、連れ立って歩く家族やそこにいる人々はみんなお金持ちに見え、待合室でパソコンをいじっているビジネスマンも何だかとてもエリートに見えた。

空港はその国のにおいがすると言われることもあるが、空港はその国を表す鏡のようなものだ、とこの時すっと実感した。洗練されていたり、ごちゃごちゃしていたり、整然としていたり、陽気な雰囲気だったり。まさにその国の姿を映し出しているのだ。

乗り換えまでの間はファーストフード店で軽食を食べたり仮眠したりと、これといった事はなかったのだが、空港が表すカタールの豊かさや、特にベンチから見た蜃気楼のように浮かぶ中東の街並みが脳裏に強く残っている。

人生のどこかで、一度は空港から出てこの街を訪れてみたい。

乗り継ぎの地という名目ではなく、自分の足で、あの蜃気楼に入ってみたいのだ。

数時間滞在しただけのドーハ空港、ベンチ越しに見えたカタールという中東の国。自分の想像では追いつかない国に居ると、テレポートしているような感覚になり、急に映画の中にでも入り込んだかの様で、面白かった。

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