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『ば・く・ち・く』     2

『ば・く・ち・く』 肆   寺田屋 鴨

《砂かけおばば》が塾長室の重厚な扉を軽々と押し開く。あまりにも楽々開くので、タカシは自動ドアと勘違いしたくらいだ。「良く来たね」がっちりとした体を藍色の作務衣で包んだ塾長の梁川が、笑顔でタカシたち四人を迎えた。「君たちを呼んだのは他でもない」テレビドラマの《偉い人》はたいていの場合そうやって話を切り出す。ついこの間見た刑事ドラマの中でも、管理官役のしぶい役

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『ば・く・ち・く』     1

『ば・く・ち・く』 壱   寺田屋 鴨

《生まれてから一番悲しかったこと》作文用紙を前に小学生――幌村タカシは頭を抱えていた。道端に腰掛けている姿を切り取ってみると、フレームによっては家とタカシの方が傾いているような錯覚に陥る。函館山の坂道はどこもそれくらいきつい。今だって座り込んでいる小学生をチラチラと見ながら坂を登っていくカップルの足は震えていたし、息も絶え絶えだった。「う~ん、おっかねえ龍

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