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四行小説

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だいたい四行の小説。起承転結で四行だが、大幅に前後するから掌編小説ともいう。 季節についての覚え書きと日記もどきみたいなもの。
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#プリムラ

プリムラの呼ぶ春 //220221四行小説

 今冬最後の雪が降る。頭上の雪雲が通り過ぎれば、春がやってくるのだという。うっすらと積もり辺りは白色に染まっているのだが、真冬とは違ってやはりどこか春に近付いていることを感じる。耐寒性のプリムラが紅色に縁取られた黄の花を咲かせていて、遠い空の向こうには確かに春があることを教えている。
 プリムラの花を撮ろうとスマートフォンを向けると、花の映った画面に雪が落ちて六花が咲いた。綺麗な結晶は画面の熱です

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花の君 //220211四行小説

 花を見たときに思い出す人がいる。
 花屋の前にはプリムラが並んでいて、僕より前に来た人が買っていったのかいくつか空間が空いていた。プリムラは八重咲きやフリンジ咲きなどがあり、色もたくさんの種類があるからパッと見ただけでは同じ花が見付からない。
 どれだろう。君が好きなプリムラは。
 花が好きな君は、コンビニに行くまでの短い道中でも花が咲いているのを見付けると足を留める。道路の真ん中でも足を留めて

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