花の君 //220211四行小説

 花を見たときに思い出す人がいる。
 花屋の前にはプリムラが並んでいて、僕より前に来た人が買っていったのかいくつか空間が空いていた。プリムラは八重咲きやフリンジ咲きなどがあり、色もたくさんの種類があるからパッと見ただけでは同じ花が見付からない。
 どれだろう。君が好きなプリムラは。
 花が好きな君は、コンビニに行くまでの短い道中でも花が咲いているのを見付けると足を留める。道路の真ん中でも足を留めてしまうことがあるから、慌てて僕が引っ張って安全なところへ避難させる。どうやっていつも一人で事故らずに歩いてるんだ、とぼやくと「あなたを信用してるからね」と嘯き僕を満更ではない気分にしてこの話は続かない。
 そんなに花が好きな君だから、正直なところどれを買っていっても喜んでくれるとは思う。けれど僕は君がここにいたなら何を選ぶのかを考えて当ててみたい。君が毎日足を留めて愛でてくれる花を選びたい。

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