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四行小説

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だいたい四行の小説。起承転結で四行だが、大幅に前後するから掌編小説ともいう。 季節についての覚え書きと日記もどきみたいなもの。
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#雪

プリムラの呼ぶ春 //220221四行小説

 今冬最後の雪が降る。頭上の雪雲が通り過ぎれば、春がやってくるのだという。うっすらと積もり辺りは白色に染まっているのだが、真冬とは違ってやはりどこか春に近付いていることを感じる。耐寒性のプリムラが紅色に縁取られた黄の花を咲かせていて、遠い空の向こうには確かに春があることを教えている。
 プリムラの花を撮ろうとスマートフォンを向けると、花の映った画面に雪が落ちて六花が咲いた。綺麗な結晶は画面の熱です

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新雪の音 //220121四行小説

 いつもより影が暗い。カーテンから漏れる光は仄かで、部屋までを明るくするには至らない。次に気付くのは異様な静けさで、窓の外を覗くと予想通り銀世界が広がっていた。木々も屋根も白に染まって、元の色を忘れてしまいそうだ。
 毎朝のはっきりした音があるわけでもないのに、どうして静かだと思うのだろう。耳に慣れすぎてあるのに聞こえない音さえも、雪の積もった日には無くなってしまうということなのだろうか。音は細か

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