新雪の音 //220121四行小説

 いつもより影が暗い。カーテンから漏れる光は仄かで、部屋までを明るくするには至らない。次に気付くのは異様な静けさで、窓の外を覗くと予想通り銀世界が広がっていた。木々も屋根も白に染まって、元の色を忘れてしまいそうだ。
 毎朝のはっきりした音があるわけでもないのに、どうして静かだと思うのだろう。耳に慣れすぎてあるのに聞こえない音さえも、雪の積もった日には無くなってしまうということなのだろうか。音は細かな氷に溶けていく。
 新雪を蹂躙する贅沢に眠気は勝てず、平日にはあるまじき勢いで布団から抜け出す。積もった雪を前にすれば、いつも心は少年のままなのだ。

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