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小学館文庫編集部編『超短編!大どんでん返し』
久しぶりに読書感想文を書きます。
しばらく読書感想文を書けなかった理由は、本を読まなかったからです。
まあこの手元の四角い端末で数千字の文字で構成された物語は頻繁に、読んでいるのですが、私にとってやっぱり本とは紙で印刷された手のひらにおさまるようでおさまらないアレです。
久しぶりに紙の本を読んだので、読書感想文を書きます。(本を読んだきっかけの1日)
『超短編!大どんでん返し』
全ての話に触れてもいいのですが、それだと義務感が出てしまうので気に入ったいくつかの話をピックアップします。ネタバレ注意。
「なんて素敵な握手会」乾くるみ
この話が1番始めに来ていなかったら、私はこの本を買っていなかっただろう。それくらい、まさに「世界が反転」した話。とても好き。
この話を立ち読みして、思わず初めから読み直して、レジに持って行った。
このあとあげる幾つかの話でも使われている仕掛けである。多分私はこの仕掛けがすごく好き。
1番初めに来ていたから、好きになったのかもしれない。たとえそれぞれどくりつ短編集であっても、物語の順序って大事。「白木の箱」米澤穂信
これは、本当に、わくわくした。ぞわっとした。笑っちゃった。思わず初めから読み直した。3回くらい読んで初めて落ち着けた。怖いのが苦手なくせに乙一を読んでいたころを思い出した。そのとき同じ棚の下の段にあった米澤穂信さんの作品には手を出していなかったのに…。いや、1作友人に勧められて読んだ気がしなくもない。作者ハマりしたら沼が深そうだとはずっと思っている。「或るおとぎばなし」井上真偽
これは選ぶか悩んだんだけど、こういうわかりやすく種明かししてくれる系もいいなぁと思った。前にあげた2つは、読み直さないとうまく消化できない感じがあるので。
おとぎばなしを読んでいる感覚です。まあ人が死にそうですが。「花火の夜に」呉勝浩
これも例のやつ。とか言っちゃうとネタバレになりそうだなぁ。しっかり読み返しました。人間ってなんでこうも勝手に脳内で情報を補ってしまうのだろうかと疑問に思えてくる。当たり前のように騙されるのが心地いいのだけれども。「首の皮一枚」白井智之
これは挙げるか悩んだんだけど、すごく山白朝子感を感じて、思わず著者を確認した。あとにあげる乙一よりも乙一だった気がする。彼の本を読んでいたのはもう10年も前なので定かではないが。読後のじりっと感。苦虫を踏み潰したような。じりっとなるのに、読んでしまう感。癖になる、イヤな感じ。「トワイライト」恩田陸
読んでいる途中は、割と読み飛ばそうかなと思ってしまうくらい上手く飲み込めなかったんだけど、最後の1文を読んだ瞬間、すっと内容が入ってくるからおもしろい。すいすい読めてしまう2回目が惜しい。記憶を飛ばしてもう1回読みたい。もう1回世界を反転させたい。「激しい雨」北村薫
この話だけは、この本の中でとても異色で、正直まだ理解しきれていない気がする。緻密に作られて、仕込まれて、読者をいかに騙すかを考えたような話がたくさん詰め込まれた中で、この話だけは、清く透き通ってみえた。というか、未だに自分がどう転がされたかも理解できていない。(最後の一文が、そういうこと、なのか?)でもなんだか読後にホッとするような、そんな話だった。「電話が逃げていく」乙一
私は彼の話が好きだ。だからこの話が好きだ。彼じゃなかったら許せなかった話かもしれない。でもこんな話を書くから彼のことが好きだとも思えてくる。夢の中って、警察呼ぼうと思っても番号が押せなかったりそういうときに限ってロックが解除できなかったりするよ、わかるよわかるよ、と、主人公に同情してしまった。馬鹿だった。「尋問」曽根圭介
この話も挙げるか悩んだんだけど、好きな仕掛けの話だったので。まぁでもこの小説の中の全ての話がこの好きな仕掛けでかかれていたら、私はきっと飽きて嫌いになってしまうし、いい塩梅でまぜられているから、おもしろいのだろう。ちなみに、この「仕掛け」っていう言葉、しっくりきてないんだけど、伝わってる?他にしっくりくる言葉がありそう。
おわり。
とりあえず本屋でこの本を手に取ったら、騙されたと思って、最初の「なんて素敵な握手会」を読んでみてほしい。
ちなみにこういう物語を読むときのコツは、初めの1回目は心地よく騙されることだと思う。疑って読んで、先にトリックに気付いたとしても、騙される快感はトリックを知る前にしか味わえないから。
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