2-3: 体液をすべて搾り取られた男
起訴もされていない、容疑者ですらない立場でありながら、私たちは強制的に3日間、拘束されることになった。
だが、私は一貫して疑惑を否定し続けた。おそらくは警備員2人もそうだったろう。
実行犯の疑いがかけられた私は彼らよりも厳重な身体検査にかけられた。
警視庁の科捜研職員の立会いの元、専門病院で丸半日かけ、唾液・尿・精液・胃液・髄液と、体中の水分すべてを抜き取られるのではないかというような徹底解剖にかけられた。
すべては私の体内に解毒剤の痕跡が残っているかどうかを調べるためだった。あれほどの毒ガスをばらまいて生還できたのは事前に解毒剤を飲んでいたからに他ならない。
科捜研はそう考えたようだが、あいにく事件後に受けた精密検査と同じく私の体はクリア・クリーンだった。
無事に解放されたのは拘束から4日目のこと。おそらく最後の決め手は、公安による水面下での身辺調査だったのではと思う。
その間、徹底的に私や警備員の過去を調べ尽くし、互いに接点がないことや前科がないこと、また何らかの犯罪組織にも関わりがないことなどが明らかになったのではないだろうか。
文春テロは最終的に文春社員27名
看護に当たった医療従事者17名、
計44名の犠牲者を出して幕を閉じることとなった。
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