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コンサルという地上最後の楽園

タイトルは私が最初に転職エージェントの方からコンサル企業を紹介された際に抱いた第一印象である。勿論、今ではそのように思っていない。
*この記事ではコンサルティング業界が良い悪いというものではなく、あくまで私個人のキャリアから考える業界としての位置付けの話でしかない。

何年前からだろうか、メーカーに勤める人たちが次々にコンサルへ転職し始めた。

”コンサルに吸い込まれていく”いう印象を持った。

私は今となってはコンサルに転職するには諸々の理由から厳しいが、これまでに転職エージェントから紹介された案件としてはコンサル業界が最多かもしれない。

紹介された案件はBig4と呼ばれるPwC、EY、KPMG、デロイトトーマツであったり、アクセンチュア、アビームなどが中心であって、間違ってもマッキンゼー、ボスコン、ベインアンドカンパニーなどの外資系の戦略コンサルではない。

現職の社格(転職活動で初めて聞いた言葉)からしても、私の知人の殆どは非外資系戦略コンサルに転職していった。
一部、とびきり凄い人は外資系戦略コンサルに転職をしたが非常に稀であった。

周囲の動きや自身への案件紹介の多さから見ても、メーカーからコンサルに転職するのは既に一つのキャリア・ルートとして確立されているのだろう。

メーカーはコンサルにとって一つの顧客群であり、
「元々所属していたメーカー及び同業界の企業に対してコンサルしてみませんか」という触れ込みが多かった。
近年でもアクセンチュアが業務拡大に伴い大量採用をしていることから、メーカー勤務者のネクストキャリアになり易いのかもしれない。

転職エージェントがコンサルを紹介する際に、以下の口説き文句をよく聞いた。

①やりたいことがないならまずコンサルに入って数年間修行する間にやりたいことを考えましょう!

②コンサルを経由してベンチャー企業にCxOポジションで参画しましょう!

③コンサルで一度年収を上げてから高いポジションと給料でメーカーに戻りましょう!

①に関しては、実は一番響いたかもしれない。
明確にやりたいことがある訳ではなく、現職への不満や将来への漠然とした不安から転職してみようかなと考えていた20代の私には耳障りがよい文句であった。

例えばコンサルで3年間働くとして、流石にその間にやりたいことは見つかっているだろうという超希望的観測に逃げ道を見出しそうになった。
また、コンサルした企業や業界に魅力を感じて、そちらのキャリアを歩みたいと思うかもしれないとも考えた。

今になって答え合わせをすると、そんな都合よくTime will tellとはならなかったであろう。
現にあの時から3年以上の時が経っても本当にやりたいことは未だ見つけられていない。
コンサルした経験による気付きは得られていないのでなんとも言えないが、やはり希望的観測は逃げであったなと振り返る。

②は初めて聞いた時から非常に懐疑的であった。
確かに立派なコンサル会社からベンチャー企業のCxOポジションに転職される方は実際にいらっしゃる。
ただ、それは外資系戦略コンサルの方が歩むキャリアというイメージがあり、非外資系戦略コンサルから実現するイメージが湧かなかった。
各コンサル企業の性質を無視してコンサル経験後のキャリア・ルートを華々しく語るのは少々乱暴であると感じた。

③は実例があれば教えてほしいと今でも思う。
JTCは基本的に年功序列であり、どんなに有能であっても年齢を飛び越えて昇格したり昇給することは非常に難しい。

少し毛色は違うが、自費社費問わずにMBAを取得したとしても同じ企業に所属する以上は年功序列の壁を越えることはできない。
MBAでもそのような扱いである中で、コンサル企業で勤務していたという資格や学位にはならないステータスでそのような優遇されることがあるのだろうか。

現実的なケースでは、例えばメーカー→コンサル→メーカーと元いたメーカーに出戻りした際には、当初の同期と大して変わらない給料や役職に落ち着くのではないだろうか。
特に出戻りの場合は、生え抜きでずっとその会社で働いていた者からすると、出戻り組が自分よりも待遇がいいと知ったら大きなモチベーションダウンに繋がるだろう。
成果主義・実力主義ではなく年功序列が強く残る企業では、
”コンサルで働いている期間だけ収入を上げることができた”ということになるかと思う。

上記と異なり、今となっては非常に納得する文句もあった。

④コンサルを挟んでキャリアをピポッドしましょう!

例えば、日系メーカーの営業職からコンサルにいき、その後は外資系メーカーの経営企画に、またはメーカーではなくIT企業になどといったキャリアだ。

”業界や業種を変える転職は難しい”

これに関しては、20代の頃は全然ピンときていなかった。あの頃は無謀にも無限の可能性を信じていた。
今となっては、業種を変えずに例えば”海外営業”としても業界を変えることの難しさを痛感している。
商材が違っても難しい。「無形商材の営業経験がないなら厳しいです」と言われたことがあるが、メーカーにどっぷり使っていた私は”無形商材”という言葉を初めて認識したくらいであった。

今となっては、コンサル経験を活かして狙っている業界や職種に転職するというのはキャリアの可能性を広げられるのだろうと非常に納得している。

他にも、論理的な思考力が身に付く、資料作成能力が上がる、そのようなメリットも非常に魅力的だと思う。メリットと書いているが勿論タダで身につくわけはなく、多大な努力が背景にあることは理解している。

何よりも、20代後半の時点であれば現職のJTCよりもコンサルのほうが給料は高く魅力的に映った

私の場合は、ちょうどその時期が海外駐在と重なったため、
結果的には”コンサルへの転職よりもJTCでの海外駐在を選んだ”ことになる。

新しく物事を学ぶ、激務に耐えるという意味でも、20代後半はコンサルに転職する最後のチャンスであったと思う。
”海外駐在を終えてからコンサルに転職”というのは色々な面で間に合わなかった。

後悔をしている訳ではないが、自ら選んだ正当化するために色々と考えてみた。

・④のように広い範囲でのキャリアピポッドはできないものの、
”JTCの良さの一つとして社内の異動によって業界や業種を変えることはできる”

・コンサルの仕事に憧れを抱きつつも、そもそも入社できなかったかもしれないし、入社できても通用しなかったかもしれない。正直なところ全然自信はない。

・私は”事業会社で自身でビジネスを実行していく”ことにやり甲斐を感じるのでJTCのほうが合っている。

何かと比較することで価値を再認識するのも良し。自身が選んだ道を正解に導いていくのも良し。

余談ではあるが、今回の転職活動の際に、転職エージェントの方に雑談で昨今のコンサル業界の事情を伺った。

私がコンサルに興味を持っていた頃と比べて、
”働き方改革もあり労働環境はかなり改善されている”とのことであった。
当時は果てしない残業、連日の徹夜のイメージがあったが、コロナ禍での在宅勤務も合間って働き易い印象に少し変わった。
コンサル勤務の友人の話を聞いても上記は傾向として正しいとの意見をいただいた。

もっとも、彼の場合はマネージャーの職位であるため、自分のスタッフを残業させないために業務を巻き取るばかりで大変そうではあったが。
沢山のメーカーからコンサルに吸い込まれていった方々が今後どのようなキャリアを歩んでいかれるのか大変興味深い。

終わり

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