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忘れなきゃ

・・・。
私は彼から逃げ出した。逃げ出す直前まで彼をまだ好きだって思っていた。

人を愛することに不器用だったのかもしれない。

執拗なDV、モラハラには私の神経が参ってしまった。

長い間一緒に暮らしていたのにわかりあえず、話し合いをしたいと懇願した私の希望は叶わず私はマンションを飛び出した。

なぜ?なぜなんだろう。

毎晩彼は夢に現れる。

おまえは俺といてくれる   忘れたいはずのあの人の声。
ギロリと涙に濡れた眼で私を見ている。

忘れなきゃ、忘れなきゃと毎晩思う。

満たされている今が嘘のようで、だけど「あの人、泣いたのかもしれない」
「私を帰ってくるだろうと待っていたのか」
などと思う。

苦しい。

私はマンションの玄関を可愛いスウィートホームにしたかった。

だけど、「おまえの自己満足だ」と断言された。

私は彼の元には二度と帰らないと決めているのに毎日、泣く。

忘れなきゃ、忘れなきゃ。

あの人を思って書いた歌があった。

走り去る  テールレンズの赤い灯に
無事でいてねと 祈る毎日

バカみたい、たった2年ももたなかった結婚。

希望を捨てたのは私なのに。

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