鳥取大山登山旅行記~妖怪もちょっとだけ~その4
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2019年8月9日
早起きしたので近所を散歩してみたら、少し坂道を登るだけで息が切れる。こんな状態で山登りなんて出来るのかしらと不安になった。
朝食の時にホテルの人が登山弁当を持ってきてくれた。保冷剤付き。ありがたいサービスだ。
10:00頃、フロントに登山届けを提出し、出発。大山寺の門前町を5分ほど歩いて、登山口に着いた。
登山客は他にも大勢いる。丸太で作られた階段を登り続けなければならず、一段一段がけっこう急だ。「山歩き」ではなく「登山」なのだと思い知る。
案の定すぐ息が苦しくなった。
「山頂まで行くのは難しそうだね」
とDちゃんに言われた。
「行者谷別れで行者コースに進んでも良い?」
「良いよ」
「ごめんね」
山頂の手前で下山し始めるルートである。それでも行者谷別れのある5合目の先までは登り切らなければいけない。故障を起こしたのにどうしても棄権出来ないマラソン選手のような速度で、一歩一歩上がっていった。日頃の運動不足に加え、湿度が恐ろしく高く、汗が全く蒸発しない。体に熱が籠もり、全身びしょ濡れの状態で動くのはものすごく辛かった。山の神よ、ひ弱な私を、どうか無事に……
「ギャーッ!」
大きなアブがズボンのひざあたりにくっついている。ハチとハエのあいの子みたいな見た目の、ハチやハエよりデカい昆虫だ。
刺されたら大変なので、攻撃していると思われないよう、そっとズボンの布を振るってみる。一応飛び立つものの、ブーン、ブーンと私の周りを回ってまた戻ってくる。何度やってもその繰り返し。全然離れてくれない。
「ふぇぇぇん、嫌だよう~」
独り言のつもりだったのに、山じゅうに響く大声だったらしく、先に進んでいたDちゃんが下りて来てくれた。
「パーカーを着た方が良いんじゃない?」
あまりの暑さに脱いで仕舞っていたパーカーを取り出そうと、リュックを背中から下ろす。
「うわぁぁ、こっちにはいも虫がぁぁ!」
黄みどり色の可愛いやつがリュックの上を元気よく歩いている。どこかから落ちてきたのだろう。リュックを木の葉に近付けてみるが、なかなかそちらに移ってくれない。いも虫は歩き続け、アブは私の周りをブーンブーンと回り続け、いやなんで君たちそんなに私から離れようとしないの……
別の木の葉にリュックを近付けたところ、好みの葉だったのかようやくいも虫は移動してくれた。しかしアブは場所を変えてもずーっと私だけを狙い続けている。なんで! 他の登山者たちがどんどん私を追い抜かしてゆくのに、どうしてそちらには行かないの……
「ふぇぇぇん、怖いよう、嫌だよう! ふぇぇぇん」
半泣きの私を見かねてDちゃんがアブを地図ではたき、アブの注意を自分の方に向けさせ、だだだっと山を登っていった。どうやらアブはDちゃんについていったようで、私の周りからはいなくなった。
ゆっくりゆっくり登ってゆき、しばらく経った後にDちゃんと合流した。アブに刺されなかったと分かりホッとした。
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