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【画廊探訪 No.024】重なり合う二つの輪のデュエット ―――植野義水氏作品に寄せて―――

重なり合う二つの輪のデュエット
―――植野義水氏作品に寄せて―――
   襾漫 敏彦
 楽しい展示がやってきた。ギャラリーOPPOは、木彫りの動物達のおしゃべりで満ちている。

 植野義水氏は、大工の仕事のかたわら、出会った木材で動物達を彫り出す。聞いた話によれば、屋根の龍をはじめとして、家の中は勿論、いたる所に動物達が、所狭しと遊んでいるそうである。

 彼は、特殊な技法を弄せず、出会った木から、思ったままの動物を彫り起こす。まるで、余計な枠をあてはめずに、子供を慈しむようである。動物達には、もともとの木のもっていた年輪や手触りがそのまま残っている。木の密度による色の違いすら、ひとつの模様にしている。
 日々の営みのそばに、生活があり、仕事があり、木材があり、道具がある。その中で彼は、動物を産み出す。日常の生活から芸術が生まれ、芸術が日常を支える。宮沢賢治や柳宗悦やウイリアム・モリスが求めた原風景に通じるといっても過言ではあるまい。

 一本の木から彫られてダンスをするウサギがある。二匹の踊りの中心から、木の年輪がひろがっている。あたかも、それは、踊る二人を包みこむ音とダンスの波のようである。彼の作品は、木の力に支えられている。木の年輪と彼の経験は、それぞれが作者として、お互いが援けあいながら、日常をかざっている。


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植野義水さんは、盛岡の本当の大工さんです。震災後、作品を三陸鉄道復興の手助けになればと活動されていました。

色々心当たりのある方もいらっしゃるかもしれません。

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