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#32 「雄々しさ」とか「勇気」


あー、はっぴーニューイヤーん、ばっかーん(笑)

すまん。
待たせたけど、さっきまで新年会で飲んでてさ。
雪少なくて、今年は助かるな。
去年はこの時期すごかったから。


もう新年じゃないかな。
でも、ま、この歌は思い出したい。

■ 降りつもる み雪に耐へて 色変へぬ 松ぞ雄々しき 人もかくあれ

1946年、1945年の終戦後、年を変えた新年に、昭和天皇が歌った和歌だ。

降り積もる雪にも、松の葉の緑は色を変えていない。
松というのは、なんと勇ましい(雄々しき)ことだろう。
我々人間もこのようにいたい、生きていこう。

・・1945年、昭和20年8月15日。
日本は終戦を迎えた。
広島、長崎はもちろん、日本各地が戦火で荒れ果て、貧困を極めた。
そんな中、昭和天皇はこの歌を作った。
そして、全国を回り、国民に声をかけ、姿を見せ続けた。
日本が戦後復興し、高度経済成長を達成するスタートにもなった歌だと思う。


「雄々しき」(勇ましい)という言葉は、明治天皇のこの歌から受け継いだ言葉と言われる。

■ 敷島の大和心の雄々しさは事ある時にぞ現われにけり

日露戦争の際に歌われたものだ。
明治天皇は、戦争をしたくなかった。
しかし、当時は、列強国が次々とアジアの国を植民地化していった情勢だった。
日本を守るためには「戦争」という手段をとらざるを得なかった。

戦争をしたくなかった、という明治天皇の思いが表れている歌がある。

■ 四方(よも)の海 みなはらからと 思う世に など波風の たちさわぐらん

「はらから」は、兄弟という意味。
世界の国々はみな兄弟なのに、なぜ波風が立つのか、戦争をし合っているのか、という嘆きだろうな。

だから、日露戦争で大番狂わせの勝利をしたときも、明治天皇は決して喜ばなかったということも証言として残されている。
「水師営の会見」というのも、明治天皇らしい出来事だった。

「戦争」という手段をとったら、最後、当事者がどのように領土や賠償金を持ち合うかを話し合わなければならない。
守る戦争だからと言って、領土や賠償金をもらわなければ、国内で大きく批判される。
勝った戦争であっても、人の命が落ち、たくさんの物資、お金が使われたからだ。

そういう会見・講和会議では、普通、負けた国は武器をもたず参加する。
勝った方が一方的に領土や賠償金の話をする。

しかし、明治天皇は、山縣有朋を通じ、乃木大将に対し、ロシアのステッセル将軍が祖国のため力を尽くしたことを讃え、武人としての名誉を確保するようにと指示する。
ステッセル将軍らロシア側に、帯剣を許可したんだ。

明治天皇は、「戦争」こそしたが、勝てばいいとは考えてなかったんだな。


時は、新しくなって、平成の時代に、東日本大震災が起きた。
当時の天皇だった上皇陛下は、ビデオメッセージで「雄々しい」を使うんだ。

■ この大震災を生き抜き、被災者としての自らを励ましつつ、これからの日々を生き抜こうとしている人々の雄々しさに深く胸と打たれています。

3月11日の震災の5日後、3月16日にこのメッセージを出された。


「雄々しい」を単に「勇ましい」という言葉で受け取ると、好戦的なイメージを持つかもしれないけど、明治天皇、昭和天皇、上皇陛下の使い方を見ると、やや違った意味合いで使っているようだな。

日露戦争も、歴史で見れば勝った戦争だが、始めた状況を考えれば、日本が植民地にされるかもしれないという「国難」だった。
昭和天皇の歌は、焼け野原となった国土から日本人が立ち上がらなければならない国難だった。
震災もそうだ。

国難という絶望的な状況にあっても、互いに協力して立ち向かおうという勇気と姿、これを「雄々しい」と言っているのかもしれない。


・・
白い雪の冷たさは、苦難かもしれないが、その苦難を受け入れ、緑の色を変えない松だから、もっと強くなるんだろう。

今年は幸いなことに、雪もそんなに多くない。
松の緑に雪が乗っている風景も今年はあまりないかな。
なくても、松の緑を見た時に、「松ぞ雄々しき 人もかくあれ」と思ってみるといいかもな。


・・
久しぶりにマッキー聴いてみるか。「北風~君に届きますように」

■ 今 君がこの雪に気づいてないなら
  誰より早く教えたい 心から思った

  北風がこの街に雪を降らす
  歩道の錆びついた自転車が凍えている
  明日もしこの雪が積もっているなら
  小さく好きだと言っても
  君に聞こえない

君が雪ではしゃいでいれば、いつも言えないでいる「好きだ」という言葉を言える、君に気づかれることなく言えるんだって歌詞か。
小さな勇気を出そうってことかな。

雪には、何か、「雄々しさ」とか「勇気」を思い出させるものがあるんだろうな。

冬にこんなことを思うのも日本人らしさか。日本酒でもやろうか。

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