インタビューシリーズ 第4回〜奄美大島の抱える問題〜

うがみんしょうらん~🌺
今週は、インタビューシリーズ第4回〜奄美大島の抱える問題〜をお送りします。早いもので、4回にわたってお伝えしてきた、インタビューも今回が最終回になります。まだ第1・2・3回を読んでないよというかたがいましたら、まずはこちらをどうぞ!

海洋問題

奄美大島はサンゴ礁の海に囲まれています。下の写真の海を見た時に、黒っぽい部分と青い部分に分かれているのが分かるでしょうか?黒い部分は、元々は生きたサンゴに覆われていた部分です。

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國宗さんが奄美大島に来られたばかりの頃は、どこに潜っても綺麗なサンゴが見られていたそうですが、現在では5割以上のサンゴが死んでしまっているそうです。
こうなってしまった発端は1998年ごろからの気象変化にあるそうです。
その年の夏は、台風がほとんど発生しなかったそうで、発生しても奄美大島には近づかない進路だったようです。台風がこない夏なんて聞くと、ここ数年の甚大な被害を目の当たりにしてるので、良いことじゃないの?なんて思ってしまいますが、自然環境にとってはあまり良い状況ではなかったようです。
台風がないことで、海は穏やかなままで掻き回されない状態になります。そうすると、サンゴのある浅い海は、35度を超えるようなお風呂のような状態になってしまいます。サンゴは、褐虫藻と呼ばれる藻類を体内に共生させ、その光合成生産物によって生きています。サンゴの白化は、ストレスによって褐虫藻の光合成系が損傷し、サンゴが褐虫藻を放出することにより起きると考えられています。この年の海水温の上昇は、サンゴ礁にとってはストレスになってしまったため、大規模な白化現象が奄美大島の周辺海域で発生しました。ストレスとなる環境が改善すれば、サンゴは一度白化しても、元の健康な状態に戻れるようですが、長期間環境が改善しなければ、そのまま死んでしまうようです。この年は、なんとか回復したサンゴですが次なる試練が待ち受けていました。2002年頃からオニヒトデというサンゴを齧って食べてしまう天敵が大量発生してしまい、わずかに生き残っていたサンゴまでをも食い尽くしてしまいました。
その後は、この時のような大規模な被害は無いそうですが、現在も台風の少ない年は、島の周りのあちこちで、白化現象が見られるそうです。夏の大潮のあとに、サンゴは一斉に放卵・放精を行います。その際には、波打ち際が真っ赤に染まり、独特の生臭い臭いがするそうなのですが、近年はサンゴが減少傾向にあるため、そのような光景が見られることもなくなってしまったそうです。
実際に海に潜ってサンゴを見たことがない方でも、枝サンゴ(枝の形をしたサンゴ)の中に小魚たちが隠れているような映像を観たことがある方は多いはずです。サンゴは、海の生き物にとっては、家や餌場のような役割をになっています。しかし、サンゴが減少している奄美大島の海では、サンゴの減少に比例して小魚も減少しています。その結果、小魚を餌とする渡り鳥や海鳥たちも見られなくなっています。
一見すると、美しくて生物多様性の豊かなように思える奄美大島の海は、だんだんと姿を変えていっていることが分かります。もちろん、少しずつ回復している場所もあるそうですが、かつてのような大きなテーブルサンゴのある奄美大島の海に戻るには、まだまだ時間がかかることは間違いなさそうです。(テーブルサンゴは、大きさにもよりますが4畳半くらいで大体100年ほどかけて育つそうです。)

漂流ゴミ・漂着ゴミ問題

ニュースなどで、ゴミを食べて餓死してしまった海の生き物や、漁網が脚に絡まってしまった海鳥を見たことがある方も多いのでは?これらの出来事、海外の話で日本は関係ないのかななんて思われるかもしれませんが、奄美大島も同じ状況です。
奄美大島の海岸線でも、たくさんのゴミが漂着しています。発泡スチロールや漁の道具・ペットボトルなど様々です。歩いて行けるような浜であれば、ゴミ拾いをすることができますが、奄美大島の長い海岸線のほとんどは手付かずの場所が多く、そのような場所はゴミがたまり放題になっているのが現状です。

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写真:奄美大島の海岸沿い ゴミが落ちているのが分かる


絶滅危惧種Ⅱ類に指定されているイソマツは、綺麗な薄ピンク色の花をつける植物で、海の波飛沫がかかってしまうような過酷な環境に自生している植物です。波がかかるのは問題がないイソマツですが、最近は波に混じってゴミが当たってしまう事が原因で、少しずつ減少しているそうです。
また、砂浜の生き物といえば、貝に入って暮らしているヤドカリが思い浮かべますが、最近では洗剤のプラスチックキャップなどを家にしているヤドカリなどをよく見かけるそうです。ゴミが多くなったことが原因なのはもちろんですが、もう1つ海の中に元々ヤドカリが入っていた貝がなくなってしまっているという原因もあります。

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写真:浜辺での住民清掃の様子

住民意識

共有地の悲劇という言葉をご存知ですか?
共有地の悲劇とは、誰もが利用できる資源が乱獲されることによって資源の枯渇を招いてしまうという経済学における理論です。
簡単に解説をすると、農民たちが自由に放牧ができる牧草地があるとします。自分の所有地であれば、農民たちは牛が牧草を食べ尽くさないようにコントロールしますが、共有地であれば、自分の牛を増やさなければ、他の農民が牛を増やしてしまい取り分が少なくなってしまいます。農民たちは自分の利益が大きい方が良いので、できるだけ沢山の牛を放牧しようとします。みんなが自分の利益を優先して牛を増やし続けると、最終的に、牧草はなくなってしまい全員が被害を受けることとなります。これが共有地の悲劇といわれるものです。

國宗さんは、自宅前の海岸で潮干狩りを楽しむ方々を見かけたそうです。海に入って、もずくや貝・浅瀬で取れる魚などを根こそぎ取られてしまったそうです。彼らが帰ったあとの海には何もなかったと言います。

奄美群島国立公園が指定された際、コンセプトに「環境文化型国立公園」というものが決められたそうです。自然の恵みを受け営んできた人の暮らしも合わせて、貴重な財産であるという思いが込めらているそうです。ただ、先に紹介した共有地の悲劇のように、誰もが自然の恵みを取り合うように頂くと、どうなるかは想像できますよね… 
車や冷蔵庫などが当たり前にない昔は、自然の恵みを頂くというと、歩いて行ける範囲でその日食べる家族の分だけをとるというものだったそうです。だからこそ、自然をうまく残しながら持続可能な形で自然資源を利用する事ができていた。しかし、今行われているのは、遠方から車で海にやって来て、大きなクーラーボックス満杯にして家に帰り、食べきれない分は冷凍保存したり、クール便を使って遠方の親戚や子供に送るというものです。こんな状況では、悲しいですが、自然の恵みがなくなってしまうのも明白ですよね…。
また、砂浜に四駆やバイクではいってきて遊ぶような方もいらっしゃるようで、海辺の環境は色々な原因で変わってきているようです。

今年の3月21日から22日の一晩でクロウサギがよく見られる道路のところで、49台の車が一晩でカウントされたそうです。コロナの影響でレンタカーも少なく、ガイドたちも自粛している状況だったので、ほぼ自家用車だと考えられます。住民たちが奄美大島の自然環境に興味を抱いてくれるのは良いことですが、走り方を知らないので、自分たちだけで山の中に入り、ウサギを見たいがために他の生き物を殺してしまうという問題が各地で起こっているそうです。観光客だと、見知らぬ土地ということもあってガイドをちゃんと利用してくださる方が多いそうですが、住民にはまだまだこのような問題が浸透していないのが現状だといいます。

行政は自然遺産の登録に向けて、旗を振っています。そこについていく住民は、どんどん意識が高くなって行きますが、大半の人は元の場所で足踏みをしているか悪い方に足を踏み込んでいっている、時間もエネルギーもかかるけれども、全員が同じ方向を向けるようにしていかなければと、國宗さんが言われていたのが印象的でした。
4回にわたってお届けしてきたインタビューはいかがだったでしょうか?奄美大島といえば美しい自然に豊かな生態系の広がるまさに楽園のようなイメージを私たちは抱きますが、実際は、様々な課題に直面する島だということを少しでも理解していただけると今回のインタビューシリーズを連載した甲斐があったのかななんて思います。
今回は、奄美大島を舞台に様々な現状をお伝えしてきましたが、みなさんが暮らしている場所でも、当てはまる部分は多少なりとあるのではないかと思います。私たちの周りにある自然環境は生活が豊かになるにつれて大きく変化しています。全く無くなってしまった自然を取り戻す事は不可能に近い事ですが、今残っている自然を少しずつ回復させていく事で、私たちの代では無理でも、100年200年後の世代には、豊かな自然環境を残す事が可能です。そして、それが可能なのはもしかすると私たちの世代が最後かもしれません。

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写真:奄美大島の海辺

ということで、来週からは、残された自然を上手く保全・管理するための方法として注目されているSATOYAMAイニシアティブについて特集します!
最後まで読んでいただきありがっさまりょうた✨(ありがとうございました)

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