COVID -2119③

連続ブログ小説 COVID-2119
第三話アップです
#小説 #SF #ショートショート #連載
なんと最新の宇宙ニュースで
地球に似た惑星が300光年ほど離れた
目と鼻の先に存在するかも!ですと
さらに刺激を受け
毎晩掲載の3回目
(全5回の予定)

コロナと闘う全ての人にエールを込めて

人類が火星に移住して間もなく70年が経つ
地球でのCOVID-19パンデミックから100年になる
新たな文化や価値観が生まれ人々は火星での充実した生活をおくっていた。その一方で、依然としてCOVID-19の謎は解けずにいた。しかしついに…

第三話「転」

10年前、地球歴2110年火星歴60年に地表と地中100mまでの調査が終了し詳細な火星地図が作られた。するとウルティムム谷の周辺に、ある特徴が浮かび上がった。最初に発見したのはブラックタウンの研究チームだ。彼らは地理的な調査研究を得意としている。
その特徴は、例えるなら地球上で人類の起源がアフリカにあったとされるアフリカ単一起源説のようなものだ。実は火星にかつて生命体が存在していたというエビデンスが数多く発見されている。中にはDNAをもった生物の化石も見つかっている。さらに数億年の時間をかけて地殻変動も経験していることがわかった。まさに火星は地球と同じように歩んできた。いや、火星の歴史を地球が後から辿っていると言った方が正解か。
するとこの赤土の乾いた世界は地球の未来の姿なのか。

とにかく、ブラックタウンによる地殻変動の分析に加えて各地で見つかった生物の欠片から拾った医学的DNA解析をブルータウンが行うなど、それぞれの得意分野を生かし英知を結集した。その結果、ウルティムム谷周辺がいわばアフリカのボツワナにあたる場所、つまりこの火星に生息していた生物の起源の場所であると推測されたのだ。
イエロータウンが開発した特別な掘削機械が投入され本格的な調査が始まった。手掛かりになるような物質が発見されるとグリーンタウンのスーパーAIによってデータが取り出される。そのデータはブルータウンによって詳細に分析研究され、最終的にはレッドタウンの総合研究チームによって評価される。

ウルティムム谷の調査が始まって数年は目立った成果は見られなかった。それでも、ここがかつて湖であったことや、水中生物の特徴を持つ化石などの発見があった。ただそれ以上の有力な情報、つまりウイルスの謎解明の手掛かりは得られずにいた。先の見えない調査研究の日々が何年か続いた。2020年の地球もこんな空気に包まれていたのだろうか。
シールド外の無防備な環境下での過酷な作業にも限界がきていた頃。イエロータウンが新たにつくったセンサードリルの先に、これまでとは明らかに違う反応があった。それは火星ではじめて発見された黒曜石だった。地球歴2119年 火星歴69年12月のことだった。

つづく

サポートしていただいた分は、私が今応援しているアジアの子ども達に小学校をつくるボランティア活動に役立たせていただきます。