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我流「クレーム応対&クレーマー撃退法」小売業編

接客業をしていれば、避けては通れないもの。

それが「クレーム」

もちろん、全てのクレームが悪いわけではありません。適切な「お客様の声」である場合は、きちんと受け止める方が良いでしょう。

ここで言う「クレーム」とは、お客様から店員に向けた「理不尽な言いがかり」や「八つ当たり」を示します。

今回は、バイト時代の「クレーム」や「クレーマー」、ついでに謎なお客様に関する体験談と、そのときの気付きを紹介します。


前提

雇用形態:アルバイト
業種:小売業
朝9時~深夜2時まで営業している雑貨&食品を取り扱うお店

実例1 「食ったらなくなったぞ!オジサン」

まず最初に紹介するのは、
空になったアイスのカップを差し出してブチギレてきたオジサン です。

もう字面でちょっと強いかもしれませんが、お聞きください。

その人がやってきたのは深夜1時。
店員は、私を含めてふたり。
閉店まで1時間を切り、サブレジのレジ締め作業が始まり、私だけが店内にいて相方はバックヤードにいる時間帯のことです。

普通に入店してきたオジサンが、
普通に「いらっしゃいませー」を告げる私に近付いてきます。

そして、空になったスーパーカップを差し出して怒鳴りつけてきました。

「食ったらなくなったぞ! どうしてくれるんだ!」

もう私の頭は「???」しかありません。
食べたらなくなった。
なぜか。
食べたからである。
誰が食べたのか。
このオジサンである(たぶん)。

食べたらなくなるのは当然である。食べたのだから。

プチパニックを起こしつつ、「食べたからでは……?」と言ってしまうバイト一ヶ月目。

「そんなのおかしいだろ!」と、もっとおかしくなってしまうオジサン。

地獄絵図です。誰も得しません。
10分ほどぐだぐだとぐちぐちと怒鳴っていたオジサンでしたが、聞いている側の私は少しずつ冷静になってきました。
それと同時に、全然バックヤードから出て来ない相方にムカつき、そろそろ閉店時間だというのに他の業務ができないことに腹を立て、とうとう言ってしまうのです。

「美味しかったですか?」

面食らうオジサン。
もう頭真っ白の私。

あの沈黙こそ地獄でした。怒鳴られている方がマシかなと思うくらいに重たい沈黙のあと、

「美味かったわ……」

オジサンは、そう言い残して去っていきました。
もう全く目的が不明で、怖さよりも意味不明さが勝った出来事です。

それと同時に、私にとっては初クレーマー戦かつ初勝利となりました。これはたぶん、想定外すぎることを言われたから引いたのではないかと思います。

教訓:
 アイスは食べたらなくなります
 意味不明な相手の主張は否定も肯定もしない
 ななめ上から応じるべし


続いての事例はこちら。

実例2 「開封失敗!自損事故オジサン」

これは「バイクカバーを買ってハサミを使って開封したら、中身が切れていた。どうしてくれるんだ!?」と電話をかけてきたオジサンです。

こんなに清々しいクレームがあるのでしょうか。

だってもう、これはセットで自白しているわけですよ。
中身が切れている理由は、あなたがハサミを使ったから、としか言いようがありません。

どうしてくれるも何もありません。
どうもできません。

ちらりと店長を見ても口パクで「クレームは嫌」と言われます。
私だって嫌なのに店長が仕事をしません。話を聞けば聞くほど、オジサンの主張はしっちゃかめっちゃかです。

「失礼いたしました。店長が謝罪に向かいますので、ご住所をお聞きしてもよろしいでしょうか」

隣でパソコンを弄っていた店長がめちゃくちゃびっくりした顔をしました。電話越しのオジサンが、ちょっとうろたえたのも面白かったです。

結局、オジサンの家まで店長が謝罪に行きましたが、出てきたのは奥さんだけで「大丈夫です、すみません」と逆に謝罪された上にお菓子まで渡された状態で帰ってきていました。何してんねん。

店に乗り込むのではなく、あくまで電話で怒鳴ってきている人に限るのかもしれませんが、黙って聞いて主張を肯定した上で『上司からの謝罪』というシュートをすると、割と引いてくれます。
実際に在宅のはずなのに出て来なかったことからも、実は気が小さいのではないかなと思いました

教訓:
 キレ始めて止まらない場合は、勢いに押されるのではなく
 むしろ強気に応じて話を進める方が良い

実例3 「ボウルで手を切った!!激おこオバサン」

さて、お次はこちら。
料理に使うボウルを購入したお客様ですが、
その買ったボウルで指を切ってしまった!と激しく怒って電話してきたのです。

そろそろクレーマー対応にも慣れてきたアルバイト半年目。
出勤したと同時に「助けて!」とパートのおばさまから回された一本の電話。

そう、それが既に激おこ状態のオバサンからの電話でした。

パートのおばさまいわく、購入されたボウルはプラスチック製で手が切れるような要素はないとのこと。「絶対におかしい」「こんなのクレームだ」とお怒りです。

出勤早々最悪だ……と思いつつ話を聞いてみると、電話越しのオバサンは大暴れ状態。

ここはクールダウンが必要だと思った私は、オバサンの主張をすべて聞いたあとで全肯定することにしました。

「おケガのお加減はいかがでしょうか」(ケガをしたという主張は否定しない)
「お手元の商品と交換させていただいてよろしいでしょうか」(ケガをしたのは商品のせいという主張は否定しない)
「先ほどは不適切な電話応対となり、大変失礼いたしました」(パートさんがケガを否定したことへの謝罪)

私はアルバイトであり社員ではないので、「治療費を払う」とか「返金する」とか、そういった対応はできません。決裁権がないのです。
しかし、不良品であれば商品を交換することはできます。なので、「私の権限で可能なこと」で勝負をかけました。

「上の者に聞かないと分からない」だと、ただでさえ一度パートさんに話をしたあとなので最初から上の者を出せ!となりますし、「治療費を払う」「返金する」など言ってしまったら、いざできないとなったときに嘘をついたことになりますし、決裁権のないことを勝手に回答したことにもなって二重三重にややこしいです。

私の全肯定技を喰らったオバサンは徐々にクールダウン。
少し落ち着いて話をした後、特に謝罪も交換も必要ないということで話が決着しました。

クレーム対応力をめちゃくちゃ褒められた出来事でした。
私もファインプレーだと思いますが、相手が悪意をもってガチで「金寄越せ」「賠償しろ」のタイプだと危ないので、そのあたりは見極めが必要だとは思います。

教訓:
 まずはお客様の主張を受け止めること
 (謝罪は肯定とも受け取られるため、必ずしも必要ない)
 お金の話(治療費、返金など)はこちらから出さないこと
 感情的になっている場合は、
 いったん落ち着いてもらうために傾聴すること

実例4 「男の店員を出して!接客は男だけにして!お姉さん」

もう既にやばそうな気配がムンムンなのではないでしょうか。
これはもう書いた通り、男性店員の接客しか受け付けないお客様です。

レジだけならまだしも、質問も陳列も、女性店員がやっているとブチギレ状態になります。クレーマーというより、もはやモンスターです。

ホストにでも行った方が早い気もしますが、男性がレジでない限りは永遠に店内を歩いており、下手すれば二時間は余裕で居座っていました。やっぱりモンスターですね。

うちの店は一時間でレジ当番を交代するシステムでしたが、当然そもそもアルバイトに女性しかいない時間帯もありました。そういう場合は店内に店長しか男性がいない状態になるのですが、店長ではお気に召さないようで

男性アルバイトが出勤するシフトまで待つという執念深さでした。

さて、こうなってきたら女の私にできることなどないと思いませんか。私は当初そう考え、どうにもならんから近付かずにおこうと思っていました。

ただあるとき、転機が訪れたのです。

そのお姉さんがいつものように店内徘徊ショッピングを楽しんでいたとき、急に店内が停電したのです。

ちょっとざわつくお客様たち。
やばいぞこれどうしようと思うアルバイトたち。
どうしてだか、サボって不在の店長。

確認してみると建物全体が停電してしまったようで、同じ建物内の他の店も同様に電気が使えないというのです。
ひとまず、その時点で店内にいるお客様だけでも対応しようと思いましたが、当然ながらレジは使えません。
商品をひとつずつメモを取ってから計算し、品名と値段を書いてレシート代わりに渡して対応するファインプレーを見せる私たち。
そして、一向に帰ってこない店長。

あらかたお客様が捌けたあと、女性店員しかいないせいでレジに近付いて来ないお姉さんが残りました。
あのまま、いつものように男性店員が来るまで待つつもりなのでしょう。

しかし、冷房も消えた店内は、なかなかの暑さです。どうしようかなと迷いましたが、仕方ありません。

「男性店員が来るのは〇時ですが、いつ電気が復旧するか分かりません。お品物は預かることも可能ですので、〇時まで涼しいところに行った方が良いかと思います」みたいなことをお姉さんに言いました。細かいことは忘れました。

すると、今まで頑なに男性店員しかダメだとキレ散らかすことで有名だったお姉さんは、「きちんと対応してくれた」と私がレジ応対することを承諾してくれました。

何が琴線に触れたのかは分かりませんが、ちょっとしたモンスターでも、案外話せば分かるというか、実は「女性店員への苦手意識」を持っていた人だったのかもしれません。

教訓:
 変な要求をしてくるお客様にも「普通に」接すると良い
 ※要求を無視するのではなく、あくまで普通に気遣いをすること

実例5 「これって美味しいの?使いやすい??質問攻めお兄さん」

お次はこちら。
別に質問するなという意味ではありませんが、店員だって聞かれても困る内容があります。

「これって美味しいの?」
「これって使いやすい?」
「誰に売れてんの?」
「俺の口に合いそう?」
「美味しく食べられそう?」

来店する度、商品についてこういった質問を繰り返してくるお兄さんがいました。
それくらい答えてやれよと思う人もいるでしょう。
しかし、これ、実はめっちゃ考えないといけない質問でした。

「美味しいですよ」→「(俺には)美味しくなかった!」

というように、別のクレームを誘発するお兄さんだったのです。下手なことは言えません。

これが「バイヤーイチオシ!」みたいな、店側で責任が取れるものや本社・本部が売りたい商品であれば、また別なのですが……!

答え方次第では、回答した個人の責任にされてしまう場合もあります。社員がきちんと働いており、バイトを庇ってくれるのであれば別かもしれません。

ある日、やんちゃそうなお友達を連れて来店した質問攻めお兄さん。ガリガリ君ナポリタン味を手に、いつも通り質問してきました。

「これって美味しいの?」

知らんけど、毎日買ってるサラリーマンが一人だけいるよ

「ああ、よく売れてますね」

私は悪魔の回答をしました。
このあと、無事にお買い上げしたお兄さんから後日「全然美味くない」と言われてしまいましたが、「買ってるヤツに文句言っといて」と私のせいではない流れとなり、事なきを得ました。

しかし、主題はここではありません。
このとき、ふとひらめいたのです。

質問に対して必ずしも答える必要はない、と。

美味しいのかどうかよりも、美味しいから売れてるみたいだ、という答え方で十分なのではないかと。

それまでは「聞かれたこと」に対して「どのように答えるか」を考えて疲れてしまっていたのですが、答えられない・答えにくい質問の場合はストレートな回答をする必要がないわけです。

ここで思いついた回答方法を別の機会、別のお客様にも試してみましたが、割とスムーズで好評でした。お試しあれ。

教訓:
 ストレートな回答が難しい場合は、
 関連しそうな別の答えに飛躍させるとかわしやすい
 (美味しいの?→売れてます)
 (使いやすいの?→人気です)など

ちなみに『ガリガリ君ナポリタン味』は、うちの店では本当に全く人気がなかったのですが、毎日夕方頃に来店するサラリーマンの人が必ずお酒と合わせてひとつ買っていくので、その人のためだけに仕入れていました。

今回は実例5件を紹介しました。
アルバイト時代、今や懐かしい思い出ですが、
こうして書き出してみると、なかなかパンチが効いている気もしてきました。

クレームではないけど変わったお客様、変な問い合わせなど、シリーズ的なやりたいなーという気持ちもあります。そのうち書き出すかもしれませんので、その際は是非お付き合いください。

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