見出し画像

〔記憶物語〕~海の中③


魚が空を飛んで泳いでいた


群れをなした魚が、大群で大空の白い雲の上を夢中で飛んで泳いでいた



あんなに大群で空を飛んで泳いでも大丈夫なのかしら?


〈魚もクジラと一緒に空を泳ぎたいんだろうさ〉


そうねぇ。いつも海の中ばっかりにいると、しんだ魚のようになっちゃうこともあるかもしれないものね。外の景色を見ることは必要なんだよね


〈そうさ。海にだけいたら息がつまりそうになることもあるから、たまにはああやって空の海を泳ぐことも必要なのさ〉


なるほどね~。考えたわね、魚たちも


〈いや、最初からもう決まっていたことだから。重鎮からはじめの頃に魚たちは皆そう聴かされていたからね〉


重鎮はなにをどう言っていたの?



◦▫。¨*…◦▫。¨*…◦▫。¨*…

 

《おまえたち

水の中ばかりにいないで
たまには空を飛んで泳いでいきなさい

空にはたくさんの空気が満たされている

満たされた空気を感じながら、飛び回って泳いでくるのも気持ちがよいだろう


飛んで泳いでいるうちに
たくさんのいろんなことが目に入ってくることもある

その目に入ってきたものには、
確かなものや不確かなものがあるかもしれないが

ゆくゆくは自分たちがその中で修行していく場所になるのだから

その様子をじっくりと己の目に焼きつけながら海の中へと戻って参れ



何回でも飛んで泳ぎにいってもいいぞ

飛び疲れたら海に入って休めばよい

魚は海がないと死んでしまうからな


ゆっくり海で静養して呼吸が整い落ち着いたら、また空に飛び立って泳ぐ準備を始めればよい



ひとつ提案があるのだが、
戻ったら私に上の様子を伝えてくれはしないだろうか

ここにいると上の様子がなんにもみえなくなってしまうこともなくはないのだ


魚が急に地面を歩いていたら不審に思われることにもなるだろうから

全く別の姿にかたちを変えて動き回ってみてくるのもいいぞ

人間のかたちに姿顔を変えて歩き回ってみるのもいい



行ってみて、気がついたことがあれば報告してきなさい

なければそのまま、姿を変えて出たその人生を気の済むまで堪能してきなさい



やがて、魚は海へと還ってくる

還ってくる時が来たときには
こちらの方から連絡を入れるから

それまでたくさんの経験を積み重ねていけばよい



非常に多くのモノゴトに遭遇するかもしれないが、それは全部自分たちで設定していったものなのだから

何も悔やまずに、おそれることもしないで、自分たちの設定した人生を思い思いに描いて満喫していきなさい

たくさんのよろこびごとも待っているのだぞ



自分で計画を立てた人生に

思い残すことがないように生きよ》



◦▫。¨*…◦▫。¨*…◦▫。¨*…


重鎮がそんなことを言っていたなんて知らなかったわ~


〈そうだよ。重鎮は心優しく素晴らしい御方なのだよ。皆のことを心から愛し、大切にしてくださる御方なのだよ。

見た目には目には映らない姿なのだけれど、非常に愛に溢れたお優しい御方なのだよ〉


ふぅ~ん。そうなんだぁ~


〈君はもっと重鎮に甘えるといいのに。君はあまり自分から甘えようとはしないのだよ。どうしてそうなっているのかは自分自身では気がついてはいるのかい?〉


あまり、気がついてはいないのかもしれない、、


〈そうだろ~。どうしてそうなっているのだろうな?〉


多分、あのこと・・・







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?