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ユニコーンはなぜユニコーンなのか〜出生数減少から考える

ユニコーンの出生数が減少傾向にある。人口減少社会である日本のようにユニコーンの出生数が減少しているというのである。2020年まではユニコーンは四半期ごとに30社ずつ生み出されてきていました。それが2021年から1年半、まさにこの期間がバブルだと言われる期間ですが、120件を超える実に4倍以上のペースでユニコーンが生み出されていました。まさにスタートアップのベビーブームさながらである。

それが、2022年下期以降、実際は資金調達のラウンドクローズまでのタイムラグがあるので、実際は2022年初〜春先以降で急速に出生数が減少し、2020年までの水準を下回る20社ペースまで減衰してきていたが、ついに12件と近年の最低水準まで減少したということが報じられた。

出所)CBINSIGHTS、日本経済新聞 Select an Image

さて、このユニコーン出生数が大幅に減少したことで、これまでユニコーン数は増加するものという暗黙の期待値が少し変化してきそうだという考察が上記の記事でされている。人口減少社会に置き換えれば、出生数が減少するため、人口減少社会に突入するという話と相似形である。

あらためてユニコーンの定義を見てみよう。

1)評価額が10憶ドル以上
2)上場していない(=未上場)
3)設立10年以内(i.e.新興企業)
4)テクノロジー関連企業

出生数、すなわち新たなユニコーン数が減少するということは、未上場新興テクノロジー企業の評価額が10億ドル以上に引き上がることを指している。

次に、人口減少、すなわちユニコーン総数が減少するということは、基本的には以下の3つのパターンに大別される

1)評価額が10憶ドルを下回る
2)新規上場(IPO)、買収(M&A)され未上場独立企業ではなくなる
3)設立後10年超となる(=高齢化)

ユニコーンはある意味、子供・若者を前提としているため、高齢化したり、社会人化したりすると減少することになる。いつまでも有望株ではい続けられないということである。

これまでユニコーン数が増加していた背景は、世界の金余りとスタートアップブームにより、多くのスタートアップが起業され、そこに大量のお金が流れてきたことが背景にある。結果的に、評価額が引き上がり、また急いでIPOやM&A Exitする必要がなくなったため、10年間というタイムリミットを最大限生かした形で有望株、すなわちユニコーンが増加してきた。

この報道を受けて、「ユニコーンはなぜユニコーンなのか」。ユニコーンとはなんなのか改めて考えを整理しておきたいと思います。

ユニコーンはなぜユニコーンなのか

未上場スタートアップの評価額は、ごく少数のVC投資家により値付けすることができます。ごく少数の投資家クラブの値付けが間違っていれば(=過剰であれば)、ごく少数のクラブでユニコーンが「生み出され」ていたものの一部が、ふわっと幻だったかのように消えてしまうこともあるわけです。

この2年ほどを振り返ると、

1)新しいユニコーンが生まれにくい(バリュエーションが下がり短期的にユニコーン評価を受けるケースも少ない)

2)大型IPOが事実上closeしていたので、減る要因が少なかった(が来年以降本物のユニコーンがIPOすると減る要素が復活する)

3)有望スタートアップの評価額が低下し、一方買い手企業の財務力が回復してきたため、M&A や業界再編によりユニコーンが減少する(※買収額はダウンラウンドでユニコーン以下の評価額のこともままある)

4)既存投資家が現金化を急ぎ、ダウンラウンドでもセカンダリーに応じることでユニコーン数が減少する

という状態だったかと思います。ユニコーン数の増減理由を考えると、新規ユニコーン数が増えるような業界が生成AIなど限られた業界になっており、一時期牽引していたSaaSやFintechは成長まで一定の時間がかかるため(※平均7年程度)、数年のタイムラグが発生する。増減が均衡するには生成AIのような急成長ユニコーンが一定牽引することを考えても、あと2-3年はかかるとも考えられる。それまでにIPO市場やM&Aが活性化するとその期間は単純には減少するという予想はおかしいとは思えない。

出所)CBINSIGHTS Select an Image

この予想を覆すとすると、生成AI以外に急成長のテーマが複数出てくる場合だと思われます。予想しても仕方ありませんが、お金は引き続き過剰であり、お金の流れ先を投資家が見つければ、また新たなユニコーンが「生み出される」わけです。

ユニコーンの数が増減するのはいいのですが、実際に我々の社会生活が大きくアップデートされるような、実社会へのインパクトが容易に想起されるような「はかなく消えていくユニコーン」ではなく「本物の希少性のある価値を生み出すユニコーン」が増えていくかを、現実に目を向けてやり続けることが大事ではないでしょうか。

COP28でも化石燃料の話が出ていますが、現実社会では期待ほど社会変革が進んでいない領域は驚くほど多いのが実情です。そう考えれば、ユニコーンはやっぱり希少で簡単に出てくるものではないことを直視すべきなのだと思います。ユニコーンは過剰な資金で、生み出すことも可能であることも肝に銘じるべきでしょう。

エコシステム全体の価値を最大化するには、ユニコーンの「数」ではなく、ユニコーンの「大きさ」、そして提供する「社会価値」にもっと注目すべきように思います。

正直10億ドル程度では、社会を大きく変革するにはまだまだ不十分です。一時のトレンドで投資家や創業メンバーに富を還流する仕組みにとどまってしまいます。そうではなく、持続的かつ社会に大きな価値提供をもたらすには、少なくとも100億ドル、デカコーン級のスタートアップが生み出されるところが最低ラインで、ユニコーンはそこを目指すスタートラインに立った有望株という認識の方が正しいでしょう。

大谷選手の1,000億円契約が注目を集めましたが、大谷選手をユニコーンと呼ぶ声もありますが、私は全く違うと思います。大谷選手こそ、本物のユニコーンであり、社会価値を提供している存在だと思います。スタートアップにおけるユニコーンの存在は、社会価値提供のためのスタートラインに立った有望株にまだ過ぎないと思います。本当の進化が問われるのはその先であり、本当の評価は評価額(=時価総額)ではなく「いかに我々の社会をアップデートしたか」という点に尽きるのかと思います。

100年後、今のスタートアップを振り返った時、多くの会社が存在していないし、社会に対する影響も軽微でしょう。ただ、ごく少数のこの時代に生まれた会社が100年後の社会を大きく前進し、未来を生み出す存在になっていることもまた間違い無いと思います。

そう考えれば、ユニコーンの希少性に注目するのではなく、希少な有望株を正しく、大事に育てながら、本物の社会的価値に転換できるかが我々が着目すべき観点のように思います。

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