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プロシップ/固定資産管理システムのニッチトップ企業

先日、飲食業のIFRSリースに関する記事を書きました。
IFRSリースに関しては日本基準リースと全く異なる思想で会計処理を求められ、その結果の財務諸表も全く異なるものとなる、という内容でした。

業務プロセスに方に目を移しても、多くの日本企業は固定資産はちゃんと管理していますが、リース契約に関しては管理していない現実が多いと思います(請求書が届いた賃料を払って終わり)。日本の会計基準がIFRSと同じくリース契約のオンバランスを求められるようになった場合、人力・エクセルワークでは管理しきれないといった会社もたくさん出てくるのではないでしょうか。

本日はそんなお悩みを解決する企業、プロシップについてご紹介します。実は超高収益かつキャッシュリッチ企業であり、日本の会計基準でリース会計基準導入という高確率で発生するカタリストを有する企業と思っています。

プロシップ社の概要

プロシップは主に固定資産管理システムProPlusを提供している会社です。固定資産管理が複雑になり、システム化が求められるのは一定規模以上の会社を想定しており、導入実績約4800社のうちの多くは上場会社です。特に、東証の33業種での各業種10社に絞れば約50%のシェアを持っているそうです。

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システム構築と保守が同社の業務の内容になりますが、下表にまとめたとおり業績は右肩あがりです(Source:決算短信、有価証券報告書)。
パッケージは各社の業務に合わせたカスタマイズも含みイニシャルの収入で、保守がランニングの収入になります。営業利益の内訳はないものの、常識的に考えて保守の利益率がめちゃくちゃいいはずです(イニシャルも黒字ですね)。イニシャルでの導入件数を増やして、保守契約での利益を積み上げていく。得た利益は利益率30%を目途として残りを新製品開発に回し緩やかに成長してくように見えます。
ちなみに、BS情報は省略しますが資産の9割が現金と有価証券(社債)で超キャッシュリッチです。

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プロシップ社の経営戦略

前でも書きましたが、メインターゲットは資産管理点数の多い大手の上場企業です。そして企業の会計システムの中でも固定資産に特化しているのも特徴です。

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私の知る限り固定資産管理に特化した会計システムを扱う会社はありません(あるのかもしれませんが、固定資産管理と言えばProPlusというくらい浸透しています)。固定資産管理というニッチ領域に集中することで、トップ企業としてシェアを握り、競争は緩やかと思います(ポーターの集中戦略)。

専門性が問われる領域(度重なる税制改正・IFRS対応など)でここに特化するというのも強みで、また会計システムはスイッチングコストが高い。このあたりが他社に対しての参入障壁となっていると思います。高収益を実現している理由でもあります。こういう会社、好きです。

あと最近会計システム回りのトレンドとして、ERPのような1つのシステムの中で全部やるのではなく、いろいろな企業の専門特化したサービスをつなぎ合わせて(連携させて)使うということが主流になりつつあるように感じます。例えば経費精算ならラクスとかコンカーとか、今回の固定資産管理システムProPlusuもその1つです。それらを自社の会計システムに連携させる。All in OneなERPではできないような、短サイクルでの改善や機能拡充が部分部分でどんどん行われます。
プロシップもそのような時代の流れにちょうど乗っているのかなととも思いましたね。

唯一気になる点としては、以下のグラフのように、新しくIFRSを適用する企業にProPlus導入が進んでいない点です。ここ数年は超大手企業のIFRS適用が進みましたが、それくらいの会社になるとスクラッチでシステムを組むか、SAPやオラクルのERPで固定資産モジュールを使っているということもあるかもしれませんが、それは想像です。

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日本におけるリース新基準の開発状況

話は変わり、以下の画面はASBJ(企業会計基準委員会)のHPからの抜粋です。(https://www.asb.or.jp/jp/project/plan.html
現在、リースに関する新しい会計基準の開発が進んでいるところです。

プロシップはリース契約管理システムも扱いますが、リース新基準の強制適用が同社にとってのカタリストになればいいなーと勝手に想像しています。なお、会計基準変更の影響が大きいので、基準の公表から適用までは数年の準備期間が設けられるはずです。どの期間は同社にとっての特需になるかもしれません。

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おわりに

ウォーレンバフェットは自分が理解できるビジネスの会社にしか投資しないそうです。
私は経理職なので、会計システム回りのこの辺の事情には他の人よりは明るく、土地勘のある領域の企業にはやっぱり投資したくなりますね。テック系の会社や半導体関連の銘柄などは正直あまり理解できない部分が多いですから。

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