イノタケ先生の集大成とも言えるバスケ映画~THE FIRST SLAM DUNK の感想~

前置き
 
映画スラムダンクこと「THE FIRST SLAM DUNK」の感想です。本当は、私にとって1年で1番来てほしくない日(12月5日)に観に行ったのですが、あまりにも感情が溢れ出て整理できず、その感情を表出することが難しくて、今日(12月12日)までかかった次第です。で、もろネタバレありの記事です。また、完全なる個人の感想であり、あまり他の人への配慮は行っていないため、不快に思われたら申し訳ないです。

 一言で言うなら、「めっちゃ良かった」です。もう少し付け加えるなら、バスケ描写と人間ドラマ描写の配分が良かったです。スラダンと言えば、やはり迫力のあるバスケシーンだし、イノタケ先生と言ったら、濃厚な人間描写だし、両方味わえて凄く面白かったです。
 ここで終わればこのnoteも映画を観た当日に書けたのですが、自分の中の面倒くさいオタク心がそれを許しませんでした。

イノタケ先生の集大成
 今回の映画はイノタケ先生の代表作「スラムダンク」を土台にしつつ、その先もバスケ漫画を描き続けたイノタケ先生の集大成として描かれているようにも感じました。まず「BUZZER BETAER」、この作品で日本人バスケ選手の可能性を見出していました。また「リアル」では濃厚な人間性を描いていました。
 さて、この映画について語るとなると、どうしても気になってしまうのが、「ファンから見た評価」と「初見さんから見た評価」です。私個人としては、スラダンを知らなくても、凄いバスケの試合が見られたような面白さは味わえると思っています。また読んでいた方が、登場人物に感情移入しやすいし、これまでの流れも分かるし、今回描かれなかった山王戦の部分も楽しめるし、良い点は多いと思います。むしろ可能なら、前述の「BUZZER BETAER」と「リアル」も読んでもらいたいです。「スラムダンク」が今回の映画のような形になった歴史が分かる気がします。「BUZZER BETAER」は(多分)当時ではメジャーではないweb連載かつ、左から右に読むアメコミ形式、そして途中からサインペンで描かれるといった、珍しい技法が多い漫画でした。それを考えると、イラストを用いたアニメから、3DCGを用いたアニメになるのも、また新しい技法として、受け入れやすいかもしれません。そして「リアル」の方は、宮城のエピソードが好きな人なら、色々とはまると思います。正直「BUZZER BETAER」のアニメは、3D部分のバンクの多さもあってイマイチだった部分も多かったですが、今回の映画の3DCGに関しては「素晴らしい」の一言で、アニメーションの進化にも驚きました。
またラストのオチは「スラムダンク奨学金」で説明できるのが、まさにこの作品の強みだと思いました。
 「SLAM DUNK」という作品があったからこそ、この「THE FIEST SLAM DUNK」ではスポ少の選択肢としてミニバスが増えたことを示唆していますし、スラムダンク奨学金でバスケ留学できる若者がいることを提示しています。これは連載当時では出来なかったことで、まさに26年の時を経た今だからこそ、出来た表現なのかなと思いました。

まとめられなかった感想たち
 以下、溢れに溢れ出たもろもろの感想です。キモオタ節が入っているものもあるので、ご注意下さい。
・予告に関して。山王戦ということを押し出さなかったのは、妥当な判断だったと思います。原作のシーンでカットしている部分も多く、また宮城のエピソードも、山王戦をメインにとらえ、全て山王戦と期待してしまうと、ノイズになってしまう可能性があるように感じました。
・漫画的表現と、現実的表現の良い所が合わさった素晴らしい映像でした。手描きでこのクオリティを求めたら、アニメーターが過労死してしまうのではないかと思うくらいです。ただリアルな表現にするだけなら、NBAの試合を見ればいいと思われてしまいそうですが、そこはやはり漫画。様々な構図(ベンチ席等)から試合を捉え、映像だけでは分からない選手の考えもあり、ちゃんと「漫画」でもありました。
・漫画的表現に付随して、オープニングの鉛筆画から、色がついてさらに3DCG化は最高でした。これぞイノタケ先生のセンス!と思いました。
・音楽に関しても最高でした。ドリブル時の重みのある音、バッシュのこすれる音、体育館の雰囲気すら、表現できていました。音の強弱も優れ、本当に映画の強みを存分に生かしていました。
・エンディング曲の「第ゼロ感」、初めて聞いた時は「BUZZER BETAER」のヒデヨシのイメージでしたが、確かに今回の映画で、宮城とヒデヨシは似てるなあと思いました。ポジションはPGで、低身長で、リストバンドに思いが込められていて。「リアル」の野宮もPGで、海外進出?した日本人バスケ選手もPGが多いイメージなので、イノタケ先生はPGというポジションに思い入れが強いのかなと思ったり。
・何かの考察で、「FIRST」はポジション(1番、PG)のことも指していて、「second」以降もあるのではないかというのを見かけましたが、個人的にはぜひやって頂きたいです。山王戦なら、似たような描写を5回くらい見ても大丈夫な気がします。例えば、「fifth」なら赤木をメインにして、魚住との確執をがっつり描いて、その上で板前姿の魚住が現れて……。そうすれば「泥にまみれろよ」のインパクトも大きいと思います。PFの桜木も、特に今までの積み重ねを描くことで、ラストのジャンプシュートが映えると思います。実は、今回の映画だと、最後のシュートが桜木のジャンプシュートというインパクトが弱く感じてしまいました。やはり今までの努力があったからこそ、あのシュートは輝くのだと思いました。流川も、沢北や仙道とのやり取りをバリバリやってほしいし、それこそ宮城並に過去編が少ないキャラなので、色々と本編では語られなかったことを描いてほしいです。で、ミッチーに関しては、もうミニバス時代も中学生時代もぐれてた時もがっつり描いて頂きたいし、無事大学に受かった後の物語も見てみたいです。もはや、ミッチーが主役の映画というだけで、大絶賛してしまいそうです。今回の映画、宮城の「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!」のシーンが最高に良かったので、やはりそれぞれがメインの話にして、それぞれの印象的なシーンをより魅力的に描いてほしいです。
・キャスト変更に関しては、自分がそんなにアニメを見ていなかったのもあり、あまり違和感は感じませんでした。そんなにアニメは見てないと言いましたが、木暮に関しては、アニメと声優が変わったと思えないくらい、しっくりきていました。むしろ違和感を感じたのは、本編前のCMであった「要チェックや!」というセリフ。多分、彦一のセリフでしょうが、彦一のイラストもないし、アニメと違うタイプの声だし、何より彦一特有のうるささ感(「うるせえぞ彦一!」と怒られるシーンが何気に好き)がないので、「これは彦一の声……なのか?」と思ってしまいました。
・オリジナル展開では、沢北が廊下で、座り込んで泣くシーンも凄く良かった。少し抜けてる所ですら、どこか人並み外れている感のあった彼が、「負け」に対して悔しさを覚えるのに、物凄い人間味を感じました。
・宮城が母親宛ての手紙に「生きているのが俺ですみません」的なことを書いた時、「全力でやめろ!」と思いました。宮城がバイク事故を起こし、母親が病室から出た後、母親が手を合わせている描写がありましたが、あれは、「神様、リョータを救ってくれてありがとう」という意味だと思いました。宮城が生きていることが凄く嬉しい母親の心理を考えると、胸がギューっと締め付けられますが、このように感じるのは、自分が歳をとって、宮城の母親の視点が分かるようになったからかもしれません。
・木暮のTシャツや、桜木の奇妙な動きのように、ニヤリとさせられる部分もあって面白かったです。特にとあるシーンでの木暮さんのTシャツは、「三」井にびっ「くり」というギャグですよね?誰かほかに言及してくれる人はいませんか?
・映画の内容良し、ついでにグッズのセンス良し。悪いのは……プロモーションでした。映画が発表された段階、せめて前売り券発売前には、「キャストも変わり、映像も3DCGを用いた、新しいスラムダンクをお楽しみに!」と宣伝していれば、ここまで悪い印象は受けなかったのに。「今後のリメイク作品は、キャスト変更など大きな知らせは早めに告知すること」という教訓になったと思います。

まとめ?というより、大好きなキャラについて
 グダグダ感想を書きましたが、今回の映画のMVPは、中二ミッチーです。個人的にドストライクでした。「中二ミッチーの髪型はベリーショートで、面倒見がいい性格」と設定した人に、心からの感謝を。
 もう、ミッチーのカッコよさは、平成でも令和でも通用するカッコよさは、全てを破壊します。あと、安西先生大好きな所がかわいいです。徳男がめちゃめちゃミッチーを慕う理由が知りたいです。いや、何となく分かりますけど。徳男視点でのミッチーの魅力が知りたいです。別にミッチーは喧嘩が強いわけでもなく、「アニキカッケー!」となるタイプでもなく、そもそも徳男達に対しては塩対応ですし。いやでもミッチーは魅力的です。……人の心というのは、複雑ですね。


 そんなこんなで、「THE FIRST SLAM DUNK」は最高という感想でした。これを書き終わった後でも、また思いが出てきそうなので、その時は普通に追記します。

#映画感想文

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