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南イタリアの風に吹かれながら

イタリア、アルベロベッロという街に行ってきた。両親がハネムーンで行ったという、人口わずか1万人程度の小さな街だ。

北イタリアから電車を乗り継いでいくと窓から見える景色が街から草原へと変わっていく。からっとした土の色と深い緑色の地平線。そこから昇ってこようとしている朝日が燃えるルビーのように美しい。
アルベロベッロの小さな村の静謐さを想いながら外を眺めているうちに電車がとまった。

街につくととんがり屋根の面白い形をした家が目に飛び混んでくる。トゥルッリと言われるこの街独自のとんがり屋根。17世紀この街の領主であったナポリ王国の貴族、コンヴェルサーノ伯は家屋に応じて税を課していた。一つの家につき麦何キロ、という風に。しかしあるずる賢い農民が徴税を逃れるため、屋根を石灰で作り、徴税の際に屋根を破壊し、そこは家屋ではないと言い張る事件がおきた。それを真似し皆、屋根を石灰で作り徴税の時期になると家屋を解体し始めた、というのがトゥルッリの成り立ちだという。
なんともイタリア人らしいエピソード。徴税の時期に家族揃って屋根を破壊している姿を想像したら滑稽で笑ってしまった。

南イタリアの優しい風に吹かれる。国境を越えて、確実に匂いが変わったと思う。国ごと空気や雰囲気、雲のかたちまで変わる気がする。

それにしても灰色のとんがり屋根と白い家、蒼い空が綺麗に映えている。17世紀の貴族には申し訳ないけど美しい街にしてくれたイタリア人には感謝したい。

2022, 7月

アルベロベッロの街並み



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