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20年間の誤解が解けたよ


この前、両親と食事する機会があった。
その時に何かの話の流れで「ゆりちゃんは昔から強情だったもんね」と言われた。

私は「そうだったっけ?」と思って幼少期を顧みてみると、ある出来事が思い当たった。

3歳で父親に怒られた時の一連の出来事だ。

詳細は忘れてしまったが、悪いことをしたのに反省の色を見せない私を、父は書斎に閉じ込めた。
4畳ほどの狭い書斎に私と父の二人。父は私が書斎から外に出られないように、扉の前にあぐらをかいて座っていた。

3歳の小さな子にとって、10分以上何もせずにじっとしているのは耐え難い苦痛だ。
私は、自分が悪いと思っていなかったから謝罪したくはないが、書斎の外には早く出たかった。この部屋から出るためには、扉の前に鎮座する父親をどかさなくてはいけない。当然、力では勝てない。そこで作戦を立てた。

1つ目の作戦は、父の興味をひいて、書斎の内側におびきよせる作戦。

書斎には何かの箱が1つあってそこに窓から差し込んだ光が当たっていた。
箱には小さな穴があったので、私は穴から箱の中を覗きこんだ。中には大したものは見えなかったが、「わあ〜きれい!すっごいきれい!!」と大げさに言ってみせた。
そしたら父も気になってその箱を覗きたくなるはずだから、扉の前から箱の方に移動すると思ったのだ。

しかしそんなことに大人の父が反応するわけもなく、あえなく敗退。

父に力では勝てない、書斎の中のものを使って父をおびきよせることもできない。
それでも本当に書斎から出たかった3歳の私は、最終手段に出た。

扉の前であぐらをかく父の上にちょこんと座る。そしてそこで排尿。
(オムツは早々に卒業し、その時点ではすでにパンツ派)
そうすれば父は不快感でいったんはその場を去るのではないかと思ったので決行した。

じんわりとお尻にあたたかいものが広がる感覚ですぐに気づいた、「これパンツ脱いでやるべきだったわ」と。(その先は覚えていないけど、それでも父はどかなかった気がする)

覚えているのは、意識的に人の上でおしっこをしたことなんてないからまあまあな覚悟を要したこと。3歳の私としては、それはもう、非暴力不服従を貫いたガンジー並みの強い心構えだった。


この出来事を食卓でふと思い出したので、「覚えてる?」と両親に聞いてみた。
両親は20年前のこの出来事を覚えていたが、衝撃の認識違いがあった。

「ゆりちゃん強く怒られたから萎縮してトイレに行きたいともいえなくて…おしっこもらしちゃってかわいそうに><」と思っていたそうだ。

めちゃくちゃ誤解されてた。
私の豪胆で勇敢な抵抗は、恥さらしな失態にすり替えられていた。最悪すぎ。


そうそう、この出来事を筆頭に物心がついた3歳から18歳くらいまで、腹の中で思ってることは誰一人にも伝わったことがなかった。
話すのが下手で苦手意識があったからか、どうせ伝わらないと思っていたからか、話す人がいなかったからか、私が人に意味のある話をしなかったからなのだが。


言葉を発さなければ、意見や気持ちは存在しないことになる世の中。
そして感情や意見がないとみなした者に対しては、自らの脅威にならないように都合良く像を作り上げて解釈するのが人の常。
にこにこ黙っていれば、いい感じに舐められて、表面的な平和が訪れる。
他人の想像の箱にぎゅっと詰め込まれた私は、それなりに居心地良いと感じていたのかもしれない。


でも、「まだ小さいからどうせわからないだろう」と無神経に発せられた言葉の数々を、私は全て理解していたし一生忘れない。

わからないふりをしながら聞いていた古い言葉は、棘のように刺さって時間が経ってもなかなか抜けないのだ。

たぶん、こっそり恋人のスマホをみたらたまたま浮気を知ってしまった時には、似たような気持ちになるのかも。
スマホをみたなんて言えないから、恋人に直接いうこともできないし、他の人にも相談できない。みてしまったのが悪いのはわかっていても、やめられない。スマホの中に積み重なっていく恋人の裏切りに蝕まれていく、みたいなね。知らんけど。


そんなこんなで思うのは、顕在化していないものは “ないもの” としていいのか?都合よく決めつけていいのか?ってこと。
“ないもの” をイチイチあるかも、とか考えてたらキャパがもたないのもわかってる。
でもいつか、その態度が自分に返ってくるとも思ってる。からキャパの範囲で挑戦したい。


すごく抽象的でぼやっとしたことを飛躍しまくりで言ってしまった。

とりあえず今は、伝える元気も言葉も表現も持ち合わせているから、当面は人におしっこをかけずとも建設的な議論で前に進める。
この恵まれた状況を噛み締めると共に、そうじゃない人のために力を使えるといいなとも思う。

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