ミニマリストとは

ミニマリストとは、ものを持たない人間のこと。

私がものを持つことの代償に気がついたのは、中欧をバックパッキングしたときのことだ。

大きなバックパック、その上にはテントや寝袋やシートがくくりつけられていた。

キャンプ場へ行き、焚き火を起こし、スマートフォンでジャズを流し、コーヒーを啜って。いざ、テントをはろうとしたときのこと。

その時まで私は知らなかったのだ。

というのも、その時が初めてのキャンプだったから。

テントを貼るには杭を打って固定する必要があるし、杭を打つにはハンマーが必要だ。

焚き火を起こすにはファイアースターターとナイフが必要で、これはすでに気づいていることだったが、調理をするにはナイフや鍋やフライパンが必要になる。

私は、中欧の森に住み着くフクロウの鳴き声を聞きながら、荷物を見つめた。

荷物の重さは40kgほど。

私には重たく、歩くのは無理だったので、ヨーロッパ横断はヒッチハイクという人の善意に頼ることとなった。

重たい荷物は体力を奪い、疲労をふくらませる。

大量の荷物は際限のない便利と快適さを与えてくれる。

少量の荷物は、身軽さと、スケートボードでのバックパッキングと、目的地に定めていた街以外へ訪れる気軽さを与えてくれる。

さながら等価交換だ。

朝になると、私は早速キャンプ場の事務所へ向かい、寝袋を除いたすべてのキャンプ用品を寄付した。

身軽な足取りで駐車場へ向かい、そこでヒッチハイクをする。

どこかの街と街との間にかかっている道路、その脇のバス停で下ろしてもらった。

時刻表を見ると、すでに最終便は出ていた。

時間は日暮れの3時間ほど前。

私は、スケートボードを転がして、20キロ先のガソリンスタンドへ向かった。

イートインスペースで食事を採り、スマートフォンを充電しながらWi-Fiを借りて調べものをすると、現在地から次の目的地まで、100km以上あった。

私はガソリンスタンドの店主と話をし、その近くの公園で寝袋にくるまらせていただいた。

白いきりのような吐息の向こうには、自然豊かな田舎地域の澄み切った空気の生み出す、満点の星空が広がっていた。

温もりに包まれた体。

顔に当たる冷たい空気。

筋肉痛に悩まされないという喜び。

経験から知識を得たことの誇らしさ。

何より、今の私には、夢だったスケートボードでのヨーロッパ横断ができる。

それらすべてが、私を満足させてくれた。

その日は、本当によく眠れた……。

そんなこんなで、今のミニマリストである今の私があるわけでございます。

関係ないけど、次の旅行は手ぶらでバックパッキングしてみようかな。

決してユーチューブ向けの企画の一貫というわけではなく……。

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