見出し画像

育休取得による周りへのしわ寄せ問題。「引き継ぎの5箇条」で負担と不満を減らそう。

これまで妊娠・出産・子育てにおけるキャリアの葛藤やトラブル解決法を、キャリアコンサルタント視点で自身の経験と共にマガジンにまとめてきました。それは、子育て側に立った視点で書いたものです。

あるとき、こんなメッセージを受け取りました。「育休を取る、復帰する人がいる一方で、その穴を埋めるために大変な思いをする人がいる。」

悲しいかな、でもそれも確かに事実です。

正直に話すと、わたし自身も子育てをする先輩や同僚と働いた経験があり、色々なタイミングで「しわ寄せ」なるものを感じ、仕事面でも感情面でもしんどい思いをしたことがあります。

今は自分が子育てをする側になり、周りのサポートなしには仕事を続けることが難しいと感謝する一方で、「迷惑をかけているかも」という不安や焦り、葛藤の日々を送っています。

ここでは「育休取得で起こりうる周りへのしわ寄せ」に焦点をあて、それを解決するひとつの手段として「引き継ぎの5箇条」をまとめました。

上司、引き継ぎをする人、引き継がれる人。この3者の立場でそれぞれにすべきこと、できることがあります。ご自分の立場を考えながら、確認してみてくださいね。

1.しわ寄せは組織の問題という認識

仕事の「しわ寄せ」で周りが苦しい。何であの人は育休を取るのか。わたしはこんなに大変なのに。と煮えきらない思いを抱える。育休を取る人は「迷惑をかけて居心地が悪い。いっそ退職した方が…」と悩む。

この状況は、双方のキャリアを阻害していると言えます。

こうした引き継ぎに関する不満、やり場のない思いは、なぜかお互いに向けられてしまいがちですが、これは個人間の問題ではなく、本来は組織の問題なのです。

このような状況に陥るのは、人事体制を整えられていない会社に問題があります。また、引き継ぎでうまれる不和は上司の責任と言えます。

本来であれば、会社に抗議すべきであり、あの人が育休を取らなければ…という個人を攻撃する発想になるべきではないのです。

とは言え、簡単に人事体制を変えられないのも事実です。ただ、その場合でも、次の「2.〜5.」は実践できますので、ご安心ください。

2.引き継ぎは効率化のチャンス

新しい仕事を引き継ぐにあたり、いちばん知っておくべきなのは、前任者の持つ仕事をそのまま引き継がないということです。

担当が変わるイコール、効率化のチャンスです。不要な業務を無くす、取り組み方法を簡易化するという選択肢を含めて考えます。

理想としては、まずは前任者が上司と仕事の取捨選択について話し合います。仕事の削減と効率化を行い、最新の業務リストが整ってから引き継ぎに入ることです。

これは後任者の立場でも同じことが言えます。後任者が今の仕事を誰かに引き継ぐ場合もそうですし、今担当している仕事にプラスして新しい仕事を引き継ぐのであれば、今の仕事をスリム化する必要があります。

取捨選択が難しい場合は、各業務に優先順位を付け、優先順位の低いものは、新しい業務に慣れるまで一定期間免除するという方法も有効です。

3.業務リストに必要な知識やスキルを

引き継ぐ時に重要になってくるのが、業務リストです。業種、職種にもよりますが、業務リストにはその業務を行うにあたって「必要な知識やスキル」を添えることをお勧めします。

業務を単なる「to do」として引き継ぐのではなく、スキルや知識を手に入れる「手段」として考えるためです。

後任者は仕事を引き継ぐ前にリストを見て「必要な知識やスキル」を確認して準備することができますし、仕事を引き継いだ後、自分が得られる「知識やスキル」つまりメリットを想像することができます。

また、必要な知識やスキルを業務リストに添えておくことは、後任者の的確な選定にも役立ち、この業務はこの人にお願いしよう、という振り分けも行いやすくなります。

4.評価の視点で引き継ぐ

4つ目のポイント、キーパーソンは上司です。部下の仕事の把握やコントロールは、人財育成の側面からも上司の大事な職務のひとつです。

いちばんNGな引き継ぎの例は、「〇〇さんが育休取るからあなたが仕事引き継ぎしてね」とだけ伝えること。これだと、不平不満が芽生える原因になります。

なぜあなたを後任に選んだのか理由を伝え、期待していること、そしてその後のキャリアやステップアップについてしっかり伝えることが大事です。

きっかけは誰かの育休取得かもしれないけれど、後任者のキャリアにとってステップアップとなる引き継ぎであることが大事です。

この時に利用して欲しいのが、「必要な知識やスキルを添えた業務リスト」です。

そのリストを使って、仕事を引き継ぐにあたって準備すべきことや、その仕事を担当することで手に入れられるモノ・コト、メリットを視覚的に説明しましょう。

また、育休取得者が復帰した時の後任者の立場についても、可能な限り話しておくとトラブルを避けられます。

一定期間のみの引き継ぎなのか、否か。後任者が自身のキャリアプランに不安を抱かないよう配慮する必要があります。

5.引き継ぎの軌道修正とフォロー

引き継ぎは、後任者の負担をなるべく減らすために、少し余裕を持って引き継ぎを行うことが理想です。

上司は引き継ぎの進捗を把握し、必要ならば期間を延ばす、仕事の振り分けを見直すなどのこまめな軌道修正を行います。

特に、後任者が今の仕事にプラスして新しい仕事を引き継ぐ場合は、仕事量と感情面、両方の意味でキャパシティオーバーにならないように注意します。

また、引き継ぎ後も後任者の様子をしっかり確認し、必要であれば、仕事量のコントロールやサポートを行います。

引き継ぎは新たなキャリアの始まり

仕事を引き継ぐことは、キャリアの転機であり、新しいステップアップの始まり。

そんな世の中になると良いな、そう願いを込めながら「引き継ぎの5箇条」をまとめました。

育休取得を支えてくれている全ての方へ感謝の気持ちを込めて。


この記事が参加している募集

熟成下書き

▼30-40代の仕事や働き方のモヤモヤ解消はこちらへ|お役立ちnoteまとめ https://note.com/1starmoon/n/n42e1784dd26e?from=notice