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【千文字評】 アーミー・オブ・ザ・デッド - 原点回帰、再出発の凡ゾンビ映画。

ザック・スナイダーにとって原点回帰の一作だ。
彼にとっての原点回帰とは、即ちゾンビ映画への回帰を意味する。

『ドーン・オブ・ザ・デッド』で「走る」ゾンビをアリにしたザック・スナイダーの新作ゾンビ映画は、良く言えば「ベタ・王道」、言葉を選ばなければ「凡庸・ありきたり」な作品だった。

アイディアとしては「ゾンビ × オーシャンズ11」のジャンル・ミックス。ゾンビがウヨウヨしてるカジノ・ホテルで放置された大金を精鋭チームが盗みに行く、そんな話だ。
だが実際はミックスになれていない。ゾンビ要素とチーム強奪要素は分離し交互にそれぞれが展開されていき、ゾンビ要素に比べオーシャンズ要素は格段に薄い。結果として、今時珍しいほど紋切り型なゾンビ映画になってしまっている。

加えて、上映時間はスナイダー尺。隔離されたラスベガスに入るまでたっぷり50分も時間をかける。それが尾を引き、総2時間30分というゾンビ映画としては致命的に長い作品になってしまった。

最大の武器であるビジュアルの強さも今回は不発気味だ。脚本の粗を補うほどのは強度がない。ただしオープニングは最高だった。TVドラマ5シーズン分にはなりそうな話を『Viva Las Vegas』をBGMに一気にダイジェストしてみせる。この素晴らしいオープニングのせいで、以降が見劣りしたのは否めない。

ザック・スナイダーは「走る」ゾンビに次ぐ一手を探していたのだろうか。今回のゾンビは知能があり、コミュニティを形成している。
だが、これってどうだ?たしかに「新しいゾンビ」なのかもしれないが、ただ「凡庸なクリーチャー」に近づいただけじゃないか。この進化は、ゾンビ本来の旨味を減じた退化としか言いようがない。

だが、『ドーン・オブ・ザ・デッド』でも描かれていたスナイダー・ゾンビの興味深い共通点としてゾンビが生殖によって子孫を残そうとすると展開が挙げられる。ザック・スナイダーは感染でなく、生殖で増えるゾンビに思い入れがあるらしい。

またこの作品からはザック・スナイダー自ら撮影も担っている。
そして意外にも彼自身が撮る映像は、これまでのコントラスト強めで仰々しい映像とは全く別物になっていた。スナイダー自ら撮った映像は手持ちほぼショット、でフォーカスが浅い。これが初心者だから扱いやすい手持ちを選択しただけなのか、ザック・スナイダー本来の素質はこういう映像なのか、興味深く見ていた。(←JUST1000字)


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