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兎・箪笥を焼く・その他の単品

幡ヶ谷で羊を食べまくり、最後に頼んだ鹿のペニス酒が強烈すぎて目前で終電を逃した。
友人のシェアハウスのソファーで寝させてもらい無事に帰宅したが、二日酔いと肉体の疲労で昼寝でもしようかと思った。
そんな瞬間に電話がきた。

「ウサギを一匹買ったんです、一緒に料理しませんか?」
その家に行くのは少しだけ肉体が疲れる、そして遅くまで飲むし泊まるのは確定している、微妙に仕事もあるし家族の晩ご飯も作らないといけない。

ちょっと保留で、後ほど連絡します!と返し
とりあえずベッドで横になり考える。
けど分かっていた、ウサギを焼くのは楽しいってさ。

題名のオマージュ元を示すのは不本意だが、一応。

・羊と鹿と兎

急ピッチで晩ご飯をこさえる。
かぼちゃを炊き、イワシを焼き、ナムルをこさえ冷蔵庫に突っ込む。
米を七時にセット。

着替えといくつかの食材をバッグに詰めて向かう。
前日のモンゴル料理が効いたか、疲れはあまり感じない。

前夜は羊、今日は兎。いいじゃないか。

とにかくこのカレーの衝撃が凄かった。
タイカレーピキヌー以来の感覚。雷に打たれながら羽毛に包まれているような衝撃と優しさ。
また食べなくてはならない。必ず。

コレが終電を逃した訳、ジャガル酒こと鹿のペニス酒だ。
強烈な漢方酒っぽい、元気になるそう。

・兎

市場の肉屋で3000円くらいだったらしい。
イノシシ、鹿、羊、山羊、あたりは結構な頻度で食べるのだけど、ウサギってあんまし食べなかったが意外とお手頃なんですね。

太めのフランスパンみたいなサイズ感である。

カチコチに凍っていたので、流水で解凍。
内臓がついていてお得。
肝臓、膵臓、心臓、肺、、頭には舌も目もついてる。嬉しいね。

・味付けはシンプルに

解凍したら水分を拭いてから塩、胡椒、ニンニク、米油を混ぜてすり込む。
腹の中が寂しかったのでエリンギを詰めておいたが、もっと詰め物を考えればよかったと反省。

やっぱり吊してる画が見たいよね、と言うわけで吊し焼きにしてみる。
が、案の定火が全然はいらないので、横向きに変更。

・箪笥を焼く

というのは非日常だ。
物を仕舞うために空間を保持している家具、それが熱と火を放ち究極に小さくなっていく様は美しく儚い。

古いタンスは釘が多少使われていたが、接着剤などは使われてないらしく良い木の香りがする。
炭火焼きと違い炎が上がるのが薪焼きの良いところだ。
炙られる煙たさも場合によっては旨味である。

魚の串を刺す位置はしっかり把握しているが、哺乳類は未履修なので感覚で。
足を開いたのは正解だったと思う。

時折裏返したり場所を変えつつ2~3時間ほど焼き続けた。

家具を燃やしメシを得る。
いつかもっと思い入れや怨念の強い家具を焼いてみたい物だ。
僕の最期がきたら僕自身を燃料に料理してほしいほどである。

・焼きあがり

仕上げに松の青い葉をいれて強火で炙りつつ一気に煙を出して燻製にする。
松の香りはサッパリしたウサギと相性がいい気がする。

付け合わせは同時に横で焼いていたゴボウ。
じっくり薪で焼くことで表面は渇いてチップのように、中はジューシーに仕上がった。菊芋のようだ。

少し時間を置き肉汁が安定したら切り分ける。
頭を外し、前足と後ろ足を切り、あばらをぶつ切りにしていく。
丸鶏を切り分けるより骨が柔らかくて良い。火入れは上々。
貰い物のスダチを添える。

腹の中に仕込んだエリンギは肉汁を吸って艶やかに。ここにハーブをいれておけばと後悔。
もし次に焼くときが来たらしっかり縫える糸を持っていこう。
そして人参とじゃがいも、ローリエとローズマリーをいれて焼こう、きっと合うはずだ。

・美味しいだけじゃない

というわけで完成。ウサギのタンス焼き。

じっくり串焼きにしたおかげで脂や水分、表面の塩がほどよく落ちてサッパリ美味い。
ウサギの赤身と白身の間っぽい身質は、血の味と淡泊さが合わさり食べ飽きない。

また、薪焼きは炭焼きと燻製の側面を持つ焼き方であるので炭焼きっぽいパリパリジューシー感と、タンスの燻し香がする。
焦げのように見える黒い部分も強火の遠火で焼いた場合は旨味となるのだ。

シラーとグルナッシュとカリニャンの重たい赤ワインと合う、合いすぎる。
ゴボウの土っぽさと炭焼きの香ばしさ、赤ワインの渋味と豊潤な香り。最高だ。

もちろん頭骨もしゃぶる。
久し振りに哺乳類の脳味噌を食べた。
やはりこれは別格の食べ物だ、前世とかを思い出せそうな味がする。

個人的に1番美味かったのは目玉。
モチモチで旨味が強くって、こんなに良い味とは思わなかった。
焼き鳥みたいに目玉串があったらいいのに。


脳味噌を食べるなんてだとか、兎を食べるなんて、という人がいるのは知っている。
けれど僕はハッキリと食べると表明したい。
兎も豚も虫も鳥も魚もヘビもカエルも植物もキノコも一緒でしょう。

なんとなくで仕分けたくない。

そうそう、内臓類は串焼きにした。
それと冷凍庫で冷凍焼けしていた海鮮も串焼きだ。

上から、カニ爪、マグロ漬け、兎の腎臓と肺と心臓、兎の肝臓。

味付けは兎にすり込んだのと同じ塩胡椒とニンニク。
こちらは薪が安定した炭になってからじっくり焼いた。
炭焼きも良いもんだ。

・その他の単品

この日は基本的にあんまし食材を持っていかなかった。
赤ワインと冬瓜、スダチくらいだ。なのである物で良い感じにツマミをこさえた。

兎を焼きつつツマミをこさえて飲む。良い時間じゃないか。

冬瓜のカニ餡

冷凍庫で眠っていたカニのほぐじ身を餡掛けに。
塩と少しの醤油だけ、基本はカニの旨味でもっていく。
今回の冬瓜は綺麗な色が出て嬉しい。

仕上げに垂らしたスダチがいいアクセントだった。
冬らしい品だね。

豆腐とカズノコの玉子綴じ

これまた冷凍焼けしたカズノコをどうにかしたくてね。
あまりにも冷凍焼けしているので加熱。
絹豆腐としめじ、甘めに味をつけて玉子で綴じる。

仕上げにカラス山椒の醤油漬けを散らす。
これが素晴らしく相性よかったね。うん。美味しかった。
ある物でいかに美味く仕上げるかってのが好きだ。

デュカとライムリーフの焼きそば

〆は誘ってくれた友の最近の流行り料理。

これ凄かった。生のライムリーフの香りが満開で芳醇。デュカの歯応えと刺激も良い。
そして麺の仕上がりが綺麗にもちもち。

エスペラント語という特定の国を持たない言語を学んでいる彼は、エスペラント料理を作りたいと言う。
エスペラント料理とはなにか、特定の地がないと料理にならないのか、夜は長く話しは尽きない。

デュカとライムリーフの炒飯

美味すぎてすぐに無くなったのでおかわりのリクエスト。
麺はないので炒飯バージョン。
これまた美味すぎてビールと焼酎を買いにコンビニへ走った。
ライムリーフをテンパリングするのっていいなぁ~

茜霧島が気軽に買えるようになりましたね。

・三度寝、パンケーキ、チキンラーメントマトスープ

ふと目が覚めると三時過ぎ、周りには誰もいない。
毛布をかけて貰っていた、優しさ。

顔を洗い歯を磨き、ついでに皿や調理器具を洗う。
僕は皿を洗うのが好きだ。

そして二度寝、七時頃に朝早く用事のある1人が外出。
温かいお茶(ベッドタイムという茶)を飲み三度寝にはいる。うつらうつらと眠る。

9時に起きるつもりが10時、さて朝昼兼用でなにかつくろう。
夜に食べ尽くしたからか、めぼしい食材がない。
う~~ん、玉子と牛乳と目が合いホットケーキが食べたくなり焼くことにする。

図りがないので感覚で、卵白2個分に砂糖をどさっと入れて泡立て、卵黄2個と少しの米油、牛乳、みりんを混ぜる。
薄力粉とベーキングパウダーを合わせて良い感じの硬さにしていく。
どら焼きを焼くのが好きなので、硬さは感覚で分かるはず。


フライパンによ~く油を馴染ませ、きっちり拭き取って、濡れタオルで冷ましてから焼く。コレ大事。
自分でも驚くほど綺麗に焼けて嬉しい。

スープはトマトスープ。
タマネギと茄子をよく炒め、トマト缶。
よく煮詰めた所で良い感じの出汁と具を探す。

コレはどう?と冗談半分で出してくれたのがチキンラーメン。
まさか~!と思ったけど、よく考えたら美味そうだし、ボリューム的にもよさそう。

いくつかに崩して投入、想像以上に美味い。
トマトラーメンやスープパスタのようだ。茄子も良い味とトロミだ。

貰い物だというマロンクリームはラム酒が効いていて美味い。
また別の貰い物だというマロングラッセをのせて食べると口内にモンブランが現れる。

『秋の日曜朝、三度寝』

という名前で飾りたい時間だった。

庭を見ながら、太陽光の元で食事をするのはなんとすがすがしいのだろう。

・おわり、中国茶。

最期は中国茶をだしてくれた。
中国茶は何度も出すことで味の変化を楽しめるのが魅力のひとつだ。

陳皮白茶は爽やかでサッパリ。
陳皮梅という茶菓子を初めて食べた、気にいった。

最期は年代物のプーアル茶。
土っぽさが強く賛否は分かれそうだが、僕は好きだ。
昨日のウサギやゴボウとも合うだろうな~と思ったりした。


そして昼前に家をでて帰宅。
うん、良い時間だった。

文化とか、生活とか、概念とか、そういう物と向き合っている人と一緒にいるのが心地よい。
普段だと話しにくい話題を茶化さずにできたり、タブー視されがちな話題もできる。

なんというか、人間生活を深めている、そんな気がする。
今度こそゆっくり二泊とかしたいなぁ。

おわり。



谷村新司さんのショックが大きすぎて涙が溢れ、まだ泣いてしまう。
偉大な人だ、チンペイさんありがとうございました。


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イチオシのおいしい一品

いつもありがとうございます。 書くの大好きだけどやっぱ大変だから、サポートして貰えると持続性が増します。