千心

ちひろ 絵と文

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のっぺらぼう

幼い頃に見た怖い夢を今でも覚えている 妹や家族の顔がフライパンになっている夢だ 明るい声の化け物が恐ろしくて恐ろしくて、家族のように振舞われているのに全くそう思えなくて、同時にこれは夢に違いないと(確信するというより)縋るように信じた ギュッときつく目を閉じてパッと開いたら現実に帰れればいいのに、なかなか目が覚めてくれなかったので何度も繰り返すことになる 大人になった今、1歳11ヶ月の甥と絵を描いている 私からすれば一緒に描いているというより、単独作業が並んでいるだけだ 夢

    • 夏なので…… 小学生の頃、夏休みのプール開きが好きだった プールが好きだった 陸に上げられた魚みたいに身体をビチビチさせる人魚泳ぎにハマっていた 他でも流行ってました?変わった泳ぎ方 はたから見れば低空飛行のバタフライだったかもしれない 好きな友達がいた 友達の妹も私の妹と仲が良くて、後年妹の結婚式に出席していた ちなみに私は妹の友達が大抵苦手だ 私たち4人でプールで鬼ごっこをしていた 私は鬼になったのにわざとみんなを探さないで、人の足の間を泳ぎ続けていた そうしたら友達

      • バックグラウンドサウンド

        ある日、少女は校庭でタンバリンを拾う 地面の書き置きには枝が一本 「打てば鳴る二面の楽器」 【家】 対話する女:もしもし もしもし……(カチャン) 道でも川でもなんでもいいわ 山だったかもしれない どこにどんなガラクタが落ちていても宝物に見えて放っておけない 無差別的な収集癖の人っているんじゃない それがあの子 絶え間なく快活な日のもとで、居心地の悪そうな帽子の影の子 拾ってきたのは 鈍色のペンダントのパーツ 鱗がはがれた金魚 やぼったい緑色の原石 そう見えるってだけのもの

        • ひと と とり

          働かなくなって1ヶ月経つと夜に眠れなくなった 4時になり、人よりもはやく鳥が起きた 気の長い夜に焦れて、ドリルで穴を開けるように不躾で遠慮のない、真っ直ぐな鳴き声だった 呼ばれているわけじゃないけど、もう起きてるよ(というかずっと起きてたよ)って伝えることもできない 明かりのない町 鳥にとっては1匹 私にとっては1人と1匹 ねえ、例えば、どちらのほうが…… 何度も穴を開けるドリルが屋根にのっぺりとした鳥の影を象る 起きている人が私には私しか見えなかったから、だんだん私のために

        のっぺらぼう

          望郷

          罪 美しい人が美しくあろうとしないこと      × 罪 決して明日には帰れぬこと 一.交換法則による電気信号 赤い布に敷かれた雛人形 女の子への祝福 特別に手間のかかる 完璧に美しい調度品 ふと、お姫様の髷のほつれに気づく 完璧に美しい調度品を直せない女の子はどうする? 関心がないなら見ないふり だれかに甘えて知らんぷり だれにも言えず、許せない女の子はどうする? チョッキン 切っちゃった 気づかれないくらい短く クスクス…… ふうっと一本で済めば秘密はお終い ただ、お

          メロディ

          1.流星 生きること 死ぬこと 生きている人を上手に愛せないこと 私の身体は女だ 心も女だ 卑しい女だ 男が寄ると男という性別を嫌でも意識する 人ではなく記号を見る 性的に警戒をする 生理的な嫌悪感を向ける 時に身体が酔っぱらう 女が寄ると女という性別に安堵する 人ではなく記号を見る 身代わりを作る 特別のつもりでいる あなたは母であり姉であり叔母である 恋と友情の綱渡りが始まる 父って父であり男だ 母って母であり女だ 夢を見る 私は父に猛烈なセックスアピールをする 間違え

          メロディ

          奇跡的に予定になかった連休が取れた!!!!しぬ!!!!→そして関西へ行ってきた

          道のない城跡で「起」をタイトルに任せたまま置き去りにしてしまった 矢印が見えるなら旅のエッセイに帰れ そして再び砂原を訪れて、土産に好きなタイトルの話でもしてほしい 私は私で全国を巡る動機が必要だ 今回の動機はこういったところ→天守閣を描いたから、百聞は一見に如かずになるか試しましょう 物を買うのが苦手だった だから一人暮らしを始めてみたら全然家具が揃わなかった 炊飯器は床に直置き、テーブルは段ボール、寝床はお情けでいただいたマットレス 骨のような部屋である 本は迷わず買え

          奇跡的に予定になかった連休が取れた!!!!しぬ!!!!→そして関西へ行ってきた

          冬 しゃびすぎです、あい

          ここに12月26日0時すぎに産まれた娘がいる 手前はクリスマス 女の子にプレゼントを渡すという古今東西頭を抱える謎の解から逃れるため、父が「同じようなものだし誕生日を25日にしてくれない?」と八百屋の大根ぐらいのつもりで聞いたところ、立派なお医者さまは私の代わりにきちんと断ったらしい わが親ながら誕生日を値切るやついるんかい (カチリ) そう、そんな間抜けな冬から始まる旅 季節が人に手心を加えられるわけもなく、冬耐性のない日々が続く 末端冷え性の指先が常温に戻ることはない 

          冬 しゃびすぎです、あい